草刈りのあと、しばらくして夢を見た。
昔の友人とその兄が出てくる夢。
友人の一人は、すでに亡くなっているのに、生まれながら栗色の髪と眼をもつ色の白い人形のような風貌とは不釣り合いな程しっかりとした骨格を持っていた彼女であったが、夢の中であっても変わらず、すぐ近くにいるのに薄められた空気の中で息をしているみたいに少しだけ目の前から遠のいていくような、ピンぼけしたカメラを覗いているような気になるのだった。
彼女はとある銀行に務めていたというが、体を壊して亡くなったのだろうか。
あまりにも早い死であったが、夢の中では、生きていた頃のままであった。
ある建物の中には入らず、外で退屈を紛らわすように砂を蹴ったり、石を見つけたりしながら何かを待っているふうであった。
彼女は、私には気づいていないのかも知れなかった。
気づかれていないことにどこかほっとしている自分であった。
関わりが薄いのは昔からであった。
建物の中に入って、ガラス窓の外にいる手持ち無沙汰の彼女から遠のきながら、建物の中に入り込んでいくと、メガネをかけた初老の男が、何かを話し始めた。
ここで人を集めて、話を聞かせているのであった。
男の真ん前の、前から三番目に座ると、左横に別の幼馴染の友人が、その兄と一緒に座っていた。
彼女とは、顔を見合わせて意外な顔合わせに驚きながらも、久しぶりの嬉しさも噛み締めながら、少し微笑みながら、
あとで。
というふうな素振りを見せて、前を向いた。
初老の男は文化についてか、文明についてかは定かではなかったが、そういった類の話をしていたが、曖昧なところがあり、具体性はあまり考えていないふうであった。
つまるところ、
文化は死を纏い、文明は生を生贄にする。
等といった話ではなかったか。
と反芻してみながら、ふと振り返ると、背後に黒縁メガネをかけた漫画家風の人が腕組みをしながら立ってその話を熱心に聞いていて、こちらに目を向けてちゃんと聞いたかというふうな目で頷いているのであった。