僅かな頭痛と発熱で総合病院に行った時の話。
その日は苦しいながらも自分で車を運転して病院に行き、
今はタッチパネルで自動受付なので、ごく普通にパネルを操作して誰とも会話することなく受付を済ませ、
指定の番号の書かれた待合室で名前が呼ばれるのを待っていた。
そして名前を呼ばれ、まず熱を計り、大体の症状を看護師さんに聞かれ、
もうしばらく待ってから再び名前を呼ばれ、誘導されるままに診察室へと入り、
医師の前に置かれた椅子に座ると、いつものようにカルテを見ながら、
「熱があって、頭が痛いほかに何か苦しいところはありますか?」
「あっ、えっと、ん~~~~」
はっきりしない私に対し、今度は
「前に髄膜炎で入院していますよね?」
「ええ・・・はい。えっとぉ~~」
「吐き気はありますか?」
「いいえ」
なーんてつたない会話にもなっていない会話をしてから、
風邪薬と解熱、鎮痛剤の処方箋だけ貰い、
また運転して家に帰った。
そしたら母親が、「どーだった?」と聞くので、
病院の概要を話そうとすると
「風邪で・・・・・・・・・・・・・・・・・・・えっと、痛み止め・・・・・・・・・・・・・・・」
頭に言葉があまり思い浮かばない。
きっと熱のせいだと勝手に思い、
そのまま布団にしばらく横になり数時間後、
心配した両親にまた病院にいくかと聞かれ、答えようとするが今度は
「う・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
言葉がほとんど出てこない。
何かを言おうとはするが、単語が思い浮かばないのである。
明らかに異常な私を見て、
今度は父親の運転する車で病院へと向かい、
今度は急患として診察室へ入ると、先程の医師がまだそこにいて、
話せない私に代わり、両親が症状を説明すると、医師は
「名前はなんですか」
と私に聞いた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そしてこの時私は始めて気が付いた。、自分の名前さえ言えないことに。
「住所は?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「痛いところはありますか?」
「いいえ」
「○○さん」(名前を呼ばれた)
「はい」
「はい」や「いいえ」で答えることは可能だから、記憶がなくなった訳ではないし、
そのまま運転して家に帰れと言われれば、帰ることだって出来る。
その結果失語症と診断され、専門科のある病院を紹介され、
そのまま父の運転で紹介された病院へ向かい、
わずかな距離の道中で今度は吐き始め、
病院へ付くと何とか名前くらいは言えるくらいまで回復。
そしてそのままいろいろと検査を受け、結果また髄膜炎の診断が下った。
紹介された病院へは、既に症状の連絡が入っていたようで、
失語症だということで脳炎を疑いでそれなりの準備はしていてくれたらしいが、
幸いにも髄膜炎であった。
この時が、「あー髄膜炎でよかった」と思った始めての経験。
記憶はあっても話せないというのは、なんだか妙な感覚で、
話せないというよりもうまく考えることが出来ないといった方が近い気がした。
多分私は頭の中に言葉を思い浮かべて考えているから、
言葉が思い浮かばなくなったことで、考えることも半分くらいは失ってしまったのだと思う。
だから図形的な地図や、車の操作や標識は理解できるから家に帰ってくることは普通に可能だっただろう。
それにしても、トイレに行きたいってことを伝えられないのが困るんだよね。
だって看護師さんの前で、小便したいっていうポーズは流石にしたくはないから。
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