私が出ていたレースは主にスプリントレースと言われるもので、
陸上で言えば100メートル走がゼロヨンだとすると、
車のスプリントは短距離のマラソンみたいなものだ。
一周が大体4キロ位のサーキットを
大体8~10週位で時間にすれば30分弱で終わってしまう。
だから走行中に何かトラブルがあっても、
一回止まってしまうともう追いつくことは難しい状況になるから、
多少のことは我慢して走り続ける必要がある。
水温が予想以上に上がったり、
半分くらい走ったことろでタイヤが滑り出してしまったりなんて事はいつものことで、
そんなのは我慢のうちにも入らない。
さすがにタイヤが一個飛んでいったり、走行中にボンネットが開いてしまったら止まるでしょうけど、
でもね、やっぱりあるんですよ、
ピットに帰りたくても帰れないような中途半端なミスがね・・・
なんかスタート直後からドアからガタガタ音がするなぁ~
と思っていると半ドアだったり、
体が落ち着かないなぁ~と思ったら
4点式シートベルトの肩が一本ロックされてなかったり、
まー自分が悪いんだけどそれでも我慢して走るんです。
でもね、
更にレースっていうのはミス意外にも思いもよらぬ事が起こってしまうもんで、
その日はスタートして一週目に、途方もない未熟者の私はスピンをして、
更に赤白のゼブラに横から乗り上げてコースアウト。
そのままバウンドして腹をすりながら砂利で止まり、
幸いにも砂利からは脱出できたのでまたコースに復帰。
私の場合はここまではもう日常茶飯事で
ウォールにぶつからなかっただけもうけもんって感じ。
でもここからがいつもと違っていた。
コース復帰してから最初のヘアピンでフルブレーキした時になにやら運転席の後ろの車内のフロアで
「ガンッ」
というすごい音。
一瞬何がなんだか分からずにすごい不安になったけど、
それでも止まるわけにいかないもんで、
走りながら暇な時(ストレートで)に確認しようとするけれど、
フルバケに4点で固定されてヘルメット被っていると、後ろを見ても屋根しか見えないし、
バックミラーでも下は見えない。
その後もあっちのコーナーで「ガン」こっちでも「ガン」
コースアウトしたときに何かあったのは確かだけど、でも何かがわかんない。
そしてそれから3週ほど走ったヘアピンでその正体が現れた。
ヘアピン手前でフルブレーキと共にでかくて真っ赤な物体が
「ドンッガラガラガン」
とかいうすごい音と共に一気にダッシュボードの下へ転がり込んだ。
その正体は「消火器」
本来は助手席のある部分のフロアに、
ホルダーとバンドで二重に固定されている筈の
デッカイ消火器がフロアで暴れている。
多分コースアウトして車がバウンドした時に外れちゃったんだと思う。
それに後ろにあるうちはまだよかったものの、
今度は前だから大変。
ブレーキを踏むたびにダッシュボードの下へ、
そしてその後左コーナーで左にステアリング切ると消火器は滑るように右へ・・・
つまり、左コーナーの度にクラッチの下にもぐりこもうとする消火器。
そして左足を盾に防御して蹴り返す私。
止まりたくても止まれない車。
落ちていくタイム。
まーなんとかゴールはしましたし、
ある意味忘れられないレースにもなりました。
でもよくよく考えてみると、
あれだけ足で蹴りまくったのに、
本当に最期まで噴射しなくてよかったよなぁ~って思う。
ねっ、レース中は時にはありえないと思える出来事が起こってるんだよ。
きっとみんなも。