続・脱走猫みゆちゃん

 みゆちゃんが、また脱走した。
 先日、ふと窓の外を見ると、庭にいるはずのみゆちゃんの姿が見えず、呼んでも返事がない。狭い庭には隠れるところもないので、また脱走したかと思い、庭の周りを囲む塀にはしごを掛け、向こう側をのぞくと、案の定、隣家の屋根の上をうろうろしている。脱走経路はわからないが、おそらく、木の幹に取り付けた脱走防止用バリアを突破して木に登り、そこから塀に跳び移ったと思われる。
 塀越しに「みゆちゃん」と呼ぶと、返事だけはにゃあとする。が、戻ってくることはおろか、振り向きもせず、外の探検に一生懸命である。大好きな鰹節とまたたび、それからおもちゃを取ってきて、塀のこちらから振って見せるが、効果はない。
 しばらくは目の届く範囲でうろうろしていたが、そのうちひょいと姿が見えなくなった。名前を呼んでもなしのつぶて。こうなるともう仕方がない。帰ってくるのを待つしかない。お腹が減ったら帰ってくるとは思うけれど、心配である。高いところから飛び降りて登れなくなったらどうしようとか、よその猫に追いかけられたらとか、大通りに出てしまったらとか、よからぬ想像ばかり尽きない。時々はしごに登って呼んでみるけれど、やっぱり返事はない。
 猫を外飼いにしている人からすれば、脱走だなんだと騒ぐのは甚だおかしいかもしれないが、室内飼いにしている者にとっては、これ一大事なのである。先日読んだ松村友視氏の「アブサン物語」にも、家猫のアブサンが脱走し慌てて探しに行ったというエピソードが書かれていた。
 結局、脱走してから四時間近く経った頃、ふたたび塀の上に姿を現したみゆちゃんの首根っこをむんずと捕まえ、やっと連れ戻した。
 外の世界へ遊びに行きたい気持ちはわかる。家に閉じ込めておくのは可哀相だとは思うが、事故や伝染病が心配なのである。その親心を、なんとかわかってほしい。



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