恐・怖・体・験(後編)

ある晩、青虫はあいかわらずケースの壁に張り付いたままだった。夕食の頃、青虫を見たが特に変わったことはなかった。
それから小一時間も経っただろうか。ふと、青虫の飼育ケースの横を通ったとき、視野の隅でとらえたケースの中の様子に、胸騒ぎがした。何か変だ。近寄る。形がおかしい。蛹?ちがう、いびつすぎる、え、動いている?うわあ!
青虫の体全体から、びっしりと二十匹近くの同じ緑色をした小虫が頭を突き出して蠢いていた。寄生虫だ。青虫の体を食い破って、いっせいに出てきたのだ。
鳥肌が立った。すでに寄生虫の卵を体内に産みつけられていたのだ。
青虫が生存している見込みはない。出来るだけ見ないようにしながら、ケースごと二重のごみ袋に入れて口を固くしばった。袋を持つ手が震える。
私はそれを、外のごみバケツの一番底に封印した。出てきませんように、出てきませんように。
 この寄生虫事件以来、野菜に虫がついてきても、速やかに外へ出て行ってもらうようにしている。

(あとで調べたところ、この寄生虫はアオムシコマユバチというハチの幼虫であった。)



ブログランキング・にほんブログ村へ ←ブログランキングに参加しています。よろしければ、クリックをお願いします。
コメント ( 10 ) | Trackback ( 0 )