平和ボケみゆちゃん

 夫はよく、自分の膝に体をもたせかけソファの横でぐっすり眠っているみゆちゃんの背中をなでながら、「よその人が来たら逃げるのに、俺たちのことはこんなに無防備に、信頼しきっているんだなぁ」としみじみ優越感に浸っている。私はそれを聞いて、何をいまさら、と思うのだけれど、確かに、偶然知り合った猫が一緒に家に住むようになり、異種族である人間に対して警戒心をすっかり解いて、こんなになついてくれるということは、なんだか不思議なような気がする。
 これが犬の場合であったら、もともとが群れで生活する動物であるから、家族を群れの構成員だと考えてその規律にしたがっているのだと考えられるし、実際、昔飼っていた犬は、たとえば、母、父、私、犬、弟、というように、家族の中で順位をつけていたようであった。
 ところが、猫は群れを作る動物ではない。それゆえ、同じ家に暮らす人間のことをどう思っているのか、私は不思議なのである。母猫だと思っているのだとか、子猫だと思っているのだとかいう意見もあるけれど、日ごろ猫の行いを見ていると、そのどちらともはっきり決められない。
 ソファの上のいつもの場所で丸くなって、熟睡していたみゆちゃんの背中を、息子がつついてちょっかいを出した。がばっと頭を上げたみゆちゃんだけれど、なんと、眠すぎて目が開かない。中学や高校の授業中、眠くて眠くてしょうがなく、目を開けようとするのだけれど、眉毛のあたりの筋肉ばかりが持ち上がって、まぶたはちっとも上らない、そんな顔をしているのである。
 ここまでリラックスしているというのは、みゆちゃんの保護者として冥利につきるけれど、猫としてはそれでいいのかい、みゆちゃん。
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