ハチの巣攻防戦

 家の周りをアシナガバチが飛びはじめた。今年もそろそろ、ハチの巣をめぐって攻防戦を繰り広げなければならない季節がやってきた。
 春になると、玄関の軒先や、庭のトタン屋根の下にアシナガバチが巣を作る。アシナガバチは大所帯だ。以前、軒先に空き家になった直径10センチほどの巣があったのを、もう使っていないからとたかをくくって放っておいたところ、知らない間にハチが住み着いて、巣も増設され、気づいたときには巣の表面に十数匹ものハチがはりついていた。あまり人が近づかない場所だったので、その年はそっとしておいたけれど、冬になってハチがいなくなったときに、次の年のことを考えて、取り除いておいた。
 そんなこともあって、ハチが軒端に巣を作り始めると、大きくなってしまう前にすぐ取るようにしている。どうやって取るかというと、ハチが留守のあいだに、巣に虫除けスプレーを噴霧するのである。戻ってきたハチは、巣に嫌なにおいが染み着いているので、その巣は見棄ててしまう。そのあと、巣を取ってしまうのである。
 そのままどこかへ行ってくれればいいのだけれど、また近くに新しい巣を作る。私はハチの留守を見計らって、また虫除けスプレーをかける。そういういたちごっこが、ハチの巣作りの季節が終わるまでのあいだ、しばらく続く。
 つねに軒先やトタン屋根の下に目を光らせて置かないと、ハチはすぐに巣の幾部屋かをこしらえて、卵を産み付けてしまう。ハチの子が生まれてしまった巣を親バチに放棄させるのは気の毒だから、できれば卵を産み付ける前、土台を作っているあたりで発見するのが目標だ。
 去年は5個か6個ほどの巣を作られたり取ったりした。そのうち、手が届かずに取れなかった3個ほどが、今も軒端にぶらさがっている。取った巣をみると、六角形を組み合わせた、きれいな幾何学模様になっている。
 留守だと思ってスプレーしたら、巣の裏側に止まっていたハチが飛び出してきたこともある。巣を取ったあとに、どこからか飛んできたハチがこちらに向かってくるかのように見え、さては私が取ったことがばれて仕返しに来たかと、あわてて家の中に逃げ込んだこともあった。アシナガバチはスズメバチのようには攻撃的でないけれど、やはり少し怖いので、できればあまりやりたくない。どうぞ家の周りには巣を作ってくれるなと、ハチにお願いするばかりである。
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