猫的視線

 誰も特技だなんて認めないかもしれないし、そういうのを特技というのかどうかもわからないけれど、私がひそかに誇っている「特技」は、猫的視線だ。
 猫は、よくそんなものを見つけたね、というような小さな昆虫や小動物を、草の陰や木の葉の裏にいとも簡単に見つけ、追いかけ、捕まえて遊ぶ。さすがに猫までとはいわないけれど、私はそういう昆虫や小動物の類を見つけるのが得意なのだ。道を歩いていると、頭の上に、小さなイモムシがぶら下がっている。建物の横の低い塀の上には、カナヘビが日向ぼっこをしている。公園の砂場の縁石の際には、アリが巣作りの真っ最中で、皆で協力し、せっせと小石を運び出しては捨てている。周りの通行人や、公園で遊ぶ親子の中に、そういった小さきものたちに気づいている様子はない。私がそれらを教えると、連れは、よくそんなの見つけるね、猫みたい、と言う。猫は私にとって崇拝する動物であるから、猫みたい、は最高の褒め言葉である。
 そういう、こまごました生き物を眺めることが好きであるから、この特技はありがたい。もっとも、猫的視線は私だけのものではなくて、ほかの人たちは、気づいていてもただ興味がないだけだという可能性も否定はできないけれど。
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