長年続けてきた鉄道撮影も、アントンKの場合は大部分が走行写真と言われる、動いている列車にカメラを向け撮影するケースがほとんど。列車の記録撮影の場合、条件にもよるが一番被写体が鮮明に写せて確実な手段だ。もちろん駆け出しの時代に、撮影術を享受した諸先輩の方々の影響が色濃く残っているのだが、今となっては、これはこれで良かったと思える。写真としては詰まらないものも多いが、正確なデータとともに残された画像は、その当時の車両をそのまま伝えている。後悔すれば切りが無いのだが、少なくとも現在よりも気持ちを注いでシャッターを切っていたことは確かだから、少しは自分自身を誇れるかもしれない。しかしそう思うと、今の体たらく振りはどうしたものか?初心を忘れるべからずと言いながら情けない限り。今一度身も心も引き締めようと思う。
走行写真以外の撮影は、今回掲載したような夜間のバルブ撮影が残されている。現在では中々バルブ撮影することなど無くなってしまったが、夜を映し出すバルブ撮影も独特の雰囲気があり好きな撮影方法だ。
上越線水上駅でのバルブ撮影。終電が闇に消えると、いよいよ夜行列車たちのゴールデンタイムが始まる。これから険しい国境を越えてそれぞれ終着を目指す長距離列車たちが、次々と姿を現すのだ。あらかじめ三脚にカメラを付けて列車の到着を待ち、EF58が停車したところで撮影が始まる。もたもたしていると、ここから峠の守護神EF16が補機として連結されてしまうから、それまでが勝負となるわけだ。もちろんEF16が先頭に立ってからもシャッターを出来る限り切り続けていた。とはいっても、露光時間がそれなりに長いため、何枚も撮影できる訳ではない。夜通し無心に撮影して、心地よい疲れとともに夜明けを迎える。こんな撮影は何があっても、もう出来ないだろう。
この時は、急行「能登」が何かのトラブルで出発が遅れ、後発の急行「天の川」が入線してきてしまい、中線に停車中の貨物列車とともに三つ巴となった。露光が不足しており、現像も失敗しているため、かなり見苦しい写真になってしまった。しかしこんな画像でも、何も考えない無鉄砲な若き時代の宝物として、アントンKの中では今でも忘れられないシーンなのだ。
1978-11-03
3605ㇾ 急行「能登」 EF1628+EF58104
3773ㇾ EF15150
803ㇾ 急行「天の川」 EF58106 上越線:水上駅にて