週末にかけて関西まで行ってきた。第一の目的は、大阪クラシック2020の鑑賞だった。この催しは、かつて大阪フィルの音楽監督だった大植英次氏をプロデューサーとして、ここのところ毎年開催されている、大阪人のための、大阪人演奏家による音楽の祭典とでも言ったところだろうか。とにかく大阪人の熱量は独特の凄いものがある。根っからの関東人であるアントンKには、閉口する場面もあったが、それにしても、この暑苦しさこそ関西であり、このエネルギーを少しでも蓄えようと足を運んだ。
本来なら、オープニングの大阪フィルの「新世界より」から参加したかったが、チケットはすでに完売で撃沈。一番聴きたかったコンマス崔氏によるベートーヴェンのチケットは、何とか確保できたのだった。そして会場は、いつものフェスティバルホールではなく、中央公会堂の大集会室という、アントンKには初めての会場となり、その外観の趣とも相まって期待が高まった。アントンKは、崔氏のベートーヴェンが大好きだ。かつて鑑賞したコンチェルトを筆頭に、音楽から醸し出される人間の感情、喜怒哀楽が音楽の背後に顔を出し、それがいつもアントンKの心に響き感動を呼ぶ。クラシック音楽、特に精神性の深い音楽は、ベートーヴェン、そしてブルックナーであると昔から考えているアントンKだからかもしれないが、崔氏の奏でる音色で時に励まされ、勇気をもらい、ここまで生きてきた訳だ。それがオケのコンマスであっても、またはソロであっても、今回のような室内楽であっても、同じように伝わるのだから、とにかく演奏現場へと出向きたくなるのである。
今回の演奏は、ピアノ三重奏「大公」だったが、どの楽章もアグレッシヴに響き、奏者個々の主張がそれぞれ溶け合い美しい演奏だった。アントンKは、特に第3楽章の深い響きが印象的に感じられた。 出のピアノソロから、目一杯気持ちが込められ、続くVn、Vcがそれに答えるように対話を重ねていた。ここの数分間を鑑賞しただけでも、心が熱くなり来た甲斐があったと思えたのである。
地下鉄御堂筋線に乗り帰路に就いたが、途中大きな淀川を渡る時、キラキラ輝く川面を見ながら、遠くなった昭和時代、あの堤防から列車撮影をしてから随分と時間が経ってしまった事に改めて気づかされていた。ちょうどBGMに先ほどのアンダンテが鳴っていて、無性に目頭が熱くなってしまった。掲載写真は、その大昔の淀川で撮影した初めて見た特急「つるぎ」。長い編成が綺麗に鉄橋に載り、朝日に輝いていた美しさは今でも忘れられない。
1975-07-28 4006ㇾ つるぎ 東海道本線:新大阪-大阪
大阪クラシック2020 第3公演
ベートーヴェン ピアノ三重奏曲第7番 変ロ長調 OP97 「大公」
トリオ エドアルテ
ヴァイオリン(主幹) 崔 文洙
チェロ 花崎 薫
ピアノ 野田 清隆
2020年9月13日 大阪市中央公会堂 大集会室