愛知学院大学青木ゼミのブログ

愛知学院大学商学部青木ゼミの活動を報告するためのブログです。

残念なこと

2019年12月10日 | 名古屋マーケティング・インカレ
11月30日土曜日に,名古屋マーケティング・インカレの本大会が開催されました。うちのゼミからは3年生2チームが参加し,発表しました。2つともボロボロの発表だったことについて,本人たちは自覚しています。

先週反省会を開催しました。つぎの2月の学内研究発表会に向けて改善してほしいからです。自分たちの取り組みでよくなかったこととして,彼らはつぎのような指摘をつぎつぎ口にしました。

 研究発表の方法をそもそも知らなかった。
 マーケティングの基本的知識がなかった。
 チーム内のコミュニケーションが悪かった。
 テーマを具体的にできなかった。

正直いって,私と上級生たちはあきれてしまいました。研究発表の方法は2年次からレクチャーしています。さらに,指定教科書である白井利明・高橋一郎『よくわかる卒論の書き方』〔第2版〕に,テーマ設定から,調査方法,議論の進め方など分かりやすく丁寧に記述されています。それをよく読むように何度も諭してきました。マーケティングの基礎知識については,コトラーの教科書の記述を図書館で調べてから,発表内容を組み立てるように春学期中に私は指示していました。上級生も,理解すべき専門用語や基礎概念について毎週指摘していました。

結局彼らは,この8か月間何も学ばなかったのかとため息をついたわけです。

また,コミュニケーションが悪かった例として,あるチームは,Lineで集合して議論する旨の連絡をしているにもかかわらず,メンバーの中には既読すらなかった者がいた。そのこともあって,集まって何かすることはうまくいかなかったと嘆いていました。Lineのメッセージでうまく連絡できないなら,電話するか,別途メッセージを送る方法を考えればいいのに。ただLineメッセージに既読がつかなかったというだけで先に作業を進めず,やり過ごしたことに驚きました。集まって何か作業ができないならば,各自が分担を決めて個人でどんどん進めてしまえばよかったのではないかとも思います。コミュニケーションの取り方や作業の分担など,チームワークが機能していななかったということです。結局そのチームは夏休みにはほとんど発表準備が進むことはありませんでした。貴重な2か月を無為に過ごしてしまったわけです。

この反省をきっかけに,あと2か月間できる限り改善してくれれば,少しの成長は見込めると思います。ただ,彼らはもう就職活動に目が行っているかな。そうなると研究発表に対して,モチベーションを高めることはない。大学教育における知的成長の絶好のチャンスを逃してしまう・・・

もちろん,ここでこのように厳しく書いているのは,彼らに知的成長してほしいからです。

 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

単純に

2018年10月18日 | 名古屋マーケティング・インカレ
10月13日に今年度名古屋マーケティングインカレ第2回中間発表会が開催されました。計29の発表が展開されました。各発表チームに15分の口頭発表と10分の質疑応答の持ち時間が与えられました。

今回,意外なことに口頭発表で15分フルに使わないチームがいくつも出ました。この半年間,あれこれ調査してきて話すべきことがたくさんあるはずなのに,なぜか短く終わってしまったのです。また,質疑応答が低調なケースを多く見ることになりました。論理の矛盾を突くような質問は少なく,ピントのずれたアドバイスをするか,データの不備のような重箱の隅をつつくような質問が多く出ました。第1回よりも発表内容や思考力が深化してていいはずなのに,今回はそうはならず,かえってダメになってしまった印象です。

発表が終わった後,学生たちが大学の垣根を越えて教員にアドバイスを求めにやってきました。私のところにも何人もやってきました。その時に,あれこれこちらが調査の状況を質問してみると,発表内容には盛り込まなかったものの,色々と知識を得ていることが分かりました。皆文献をいくつも読んでいることが分かりましたし,フィールド調査もしていることが分かりました。しかし,それらを発表には盛り込まなかったのでした。

なぜ盛り込まなかったかといえば,私の推察ですが,学生たちはそれら知識をうまく処理できなかったからでしょう。学生たちは,1回目は獲得した知識がまだ少なかったため,それらを処理して,大胆かつ単純に発表内容をまとめることができた。しかし,その後,あれこれ勉強し,調査を重ね,知識が蓄積されると,知識間で矛盾や衝突が生じることや,知識と知識を結びつける根拠が希薄であることなどが分かり,混乱が生じたということなのでしょう。

その結果,不十分な発表をしてしまったチームが続出したのでしょう。聴衆として発表を聞いていた学生たちは,質疑応答場面で,きちんと論理のおかしさを問いただすべきだったのですが,自分たちも混乱していて自信がないため,質問ができなかったのかもしれません。

この先調査を重ねれば,もっともっと混乱することでしょう。そうなったとき,大胆に,得た多くの知識を切り捨てる勇気を持って欲しいと思います。100のうちせいぜい10か20を使って論理を構築するように割り切って欲しいのです。多くを捨てることによって,論理が浮き上がり,主張が明確になります。結果として,混乱は解消される方向に向かいます。残り80を捨てることは惜しい,それを得るために費やした時間・努力が無駄になってしまうと思うかもしれません。しかし,捨ててしまう知識を得たからこそ,知識間の矛盾やそれによって生じる混乱を身をもって知ることができ,単純な論理や明快な主張の重要性を理解することができるのです。そして,自信をもって,主張を展開することができるのです。

発表会のある教室で,私はコメントを求められたとき,「論理は単純にすべき。複雑な発表が素晴らしいということはない。せっかく勉強したのだからと,あの概念この理論といろいろと発表内容に盛り込むと,主張に対する根拠を提示したり,その論理を検証したりすることが難しくなる。単純なほうが主張は明確になり,検証も容易になる」と述べました。同じことをもう一度ここで述べます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2年ぶりに開催

2018年07月09日 | 名古屋マーケティング・インカレ
7月7日土曜日に,本学名城公園キャンパスにおいて,うちのゼミ生たち主導で,2年ぶりに名古屋マーケティング・インカレ第1回中間発表会を開催しました。学生,教員,ゲスト合わせて総勢160名の参加者がありました。今年度,学生の参加チーム数は30と過去最高になりました。

午後1時から5会場に分かれて発表会を開催し,その後夕刻から懇親会を開催しました。全ての発表を見ることはできませんでしたが,一部の発表を見た限り,ほぼ例年通りでした。なかなか研究テーマが決まらず,四苦八苦している様子でした。ただし,いつもより改善している点がありました。すなわち,多くのチームが所定時間をフルに使って,発表し,質疑応答を行っていたのでした。今回,プレンゼンテーション時間は15分,質疑応答時間は10分,計25分各チームに割り当てられました。過去,15分のプレンゼンテーション時間のうち,半分も使い切らず,その後の質疑応答では,まともな受け答えにならずに,あっという間に終了してしまう例をいくつも見ました。今回,私が見た限り,そういうものは皆無でした。

各チームが,所定時間きちんとプレンゼンテーションと質疑応答をこなすことができたのは,予備調査(探索的な調査と思考)をしっかりと積んできたからです。まだほとんどのチームは研究テーマが確定していません。手探り状態です。だからと言って,何の調査もしないで,机の前でうんうんうなっていても何も進みません。手探り状態だからこそ,時間を使って予備調査をして,複数の方向性を探る必要があります。

また,質問する側が,プレンゼンテーション内容を理解して,論理の矛盾点や調査方法のおかしさ等をついていたからこそ,活発な質疑応答になったといえます。参加学生は発表者としてきちんと予備調査を積んできたからこそ,質問する側に回った時に,発表内容をきちんと理解することできたといえるでしょう。

今回ゲストとして,荒武さんをはじめ日経BPマーケティングから3名の方々にご参加いただきました。これも発表の改善につながったかもしれないと推察しています。1回目の中間発表会において,3名ものゲストに来ていただくことはまれなケースです。後援者として,ずっと学生の発表を見ていただき,学生にアドバイスまで与えていただきました。おかげて,緊張感がいつもの中間発表会より増したと思います。この場を借りて感謝いたします。

全ての参加学生は,本大会に向けて,今回の反省点を早急に浮かび上がらせて,改善に取り組んで欲しいと思います。

うちのゼミにチームにおいては,全チームの平均レベルには達したが,上回ることはなかったという印象です。他大学生と比べて,予備調査のうち,ヒヤリング等の一次データ収集においてやや積極性に欠けている印象です。そうなっているのは,チーム内のコミュニケーションがまだまだ盛んでないことと,悩んだらとりあえず事実に直面してみるという割り切りがないからです。夏休み中に調査を停滞させず,地道に取り組んで欲しいと思います。

会の運営にあたって,不備な点が色々ありました。トラブルも少しありました。ともかく何とか無事に終了しました。発表者であるうちのゼミ3年生だけでなく,発表者でない4年生が運営を手伝ってくれたことで何とか終わらせることができたと思います。さらに,各大学の参加学生および指導の先生方が協力してくれたことも,円滑な運営に貢献したと思います。感謝いたします。

追伸
会場内が暗かったせいで,発表の様子について良い写真がとれませんでした。したがって,フォト・チャネルをアップすることができません。残念です。安物のスマホでとったのがいけなかったか。せっかく買った一眼レフのデジカメは重いので,今回持ち込むことを躊躇してしまったのですが,宝の持ち腐れになってしまいました。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

恒例

2017年12月03日 | 名古屋マーケティング・インカレ
恒例の名古屋マーケティング・インカレ本大会が終わりました。今月2日名城大学で開催されましたが,大崎先生はじめ名城大学の学生・関係者には大変お世話になりました。

私は校務に忙しく,今年度は本大会しか出席できなかったため,全般的な感想を述べる立場にないのですが,例年通り,参加学生たちはよく頑張っていました。自分に身近な出来事からテーマを探す,コラボした企業に関する戦略提案をするというものが多かったのですが,いずれにしてもよく調査をしていました。プレゼンテーションについてもよく工夫し,練習を積み重ねてきた跡が見えました。とくに決勝に残ったチームは,調査にかけた努力の水準は非常に高く,プレゼンテーションは巧みでした。

自分のゼミ生については,例年通り,底辺にいるという印象です。文献の読み込みは中途半端だし,調査は不徹底。何よりプレゼンテーションは問題だらけでした。私が聞いても何を話しているのかよく分からない内容であったといえます。

なぜこうなったかというと,テーマに関する知識がないのに,「ああでもないこうでもない」と机上の議論を繰り返していたからです。知識のない者同士の議論は空論で終わります。そんなことで数か月も費やしてしまいました。夏休みから秋にかけて何も進みませんでした。例年決勝に残ったチームは,早い段階(夏休み前後)で企業や専門家に対するヒヤリング,探索的な消費者アンケート調査,実態観察などを行って,試行錯誤を深めた上でテーマを絞り込んでいきます。しかし,うちのゼミ生は,その間,空論で時間を費やしていました。PBの選択行動や,商品の再購買行動など消費者の行動を俎上にのせていたので,早い段階から消費者に対する調査(アンケートに限らない)を行って,テーマを深める糸口を得るべきでした。結局,時間切れ直前で慌てて思い付きのアンケート調査を中途半端に行って,得られたデータに強引な解釈を施して,発表につなげることしかできませんでした。プレゼンテーションの改善を考える間はなく,やっつけ仕事の発表をしてしまいました。

昨年度もそのような調査には消極的で,机上の空論に時間を費やしていましたが,今年度同じになってしまったのは,私の指導が悪かったと反省しています。もともと私の指導力が低い上に,近年は公務に忙しく,以前と比べて大会へのコミットメントが弱いことが,ゼミ生の消極的態度に拍車をかけていると感じています。今年度私は中間発表会には出席できませんでした。本大会に丸一日出席するのは5年ぶりです。

ゼミ生の研究発表が他大学学生と比べて低調なのは,ゼミ生本人と私に問題があるのは間違いないのですが,大学の施設も影響を与えているかもしれません。うちのキャンパスにおいて,学生は,平日コンピュータルームは午後6時半,図書館は午後7時半(開館は8時まで)しか利用できません。土曜日は昼までしかキャンパス内にとどまることができません。日曜祝日は立ち入り禁止。授業が終わった後,キャンパス内で勉強や課外活動をする機会がほぼないのです。この前祝日に,研究発表の準備のため,私が学生を伴ってキャンパス建物内に入ろうとすると,警備スタッフに「学生を建物内に入れないでください」と注意されて,唖然としました。もちろんキャンパスが使えなければ,あえて外に出てしまえばいいので,ゼミ生にとって言い訳にはならないかもしれませんが。

来年は参加大学・チームが大幅に増加する見込みです。そうなると,うちのような枯れ木も山の賑わいにしかなっていない(本当に)ゼミが参加するのは,大会運営の負担になるし,他大学学生との交流上浮いた存在(実際には沈んだ存在)になるので,受け入れてもらえず不参加の可能性があります。もしそうなれば,残念なことですが,やむをえません。今後ゼミの活動方針を見直したいと思います。

追伸。本大会懇親会で悔し涙を流している学生が何人もいました。ある学生は,自分の力を発揮できず,決勝に残れなかったことを悔やんでいました。私は慰める言葉を思いつかなかったのですが,研究発表の評価は一元的ではなく,様々な評価軸があるので,今回たまたま1つの評価が出たに過ぎないことを話しました。そして,能力不足を自省できるのは,実際には能力が高まって,要求水準が高くなっている証拠だとも話しました。いつうちのゼミ生は悔し涙を流せることになるのか。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中間発表会

2016年10月02日 | 名古屋マーケティング・インカレ
10月1日土曜日午後12時半から午後6時にかけて,愛知学院大学名城公園キャンパスにおいて名古屋マーケティングインカレ第2回中間発表会を開催しました。うちのゼミが発表会運営担当でした。ゼミの3年生は3名しかいないので,4年生にも手伝ってもらい,当日朝何とか会場を設営しました。実際に発表会が始まれば,参加している学生たちが自主的に運営協力してくれたので,無事に終えることができました。

発表の様子はいつもどおりでした。どのチームも懸命に勉強してきた跡はうかがえました。熱気のこもった質疑応答が展開されました。中間発表会としては上出来でした。

しかし,どのチームも結論を導くためのテーマの絞り込みがうまくいかず,四苦八苦していました。自分たちなりの主張がない,あるいは今後主張を展開できる見通しがたっていないのです。暫定的に自分たちなりの主張を展開しているチームが少しありましたが,ありきたりか根拠薄弱なものでした。

簡単に結論が出るのならば,1年近く時間をかけて研究発表に打ち込んでもらう意味はありません。簡単に結論が出ないからこそ手掛ける意味があり,面白さを味わえるのです。参加しているすべての学生には,12月3日の本大会まであと2か月間寝る間を惜しんで調査と思索の努力をして欲しいと思います。この2か月の経験は良い財産になります。

さて,私はいつもは発表会の質疑応答時間では発言しないように心がけています。教員が発言してしまうと,学生たちが委縮して質疑応答が不活発になってしまう可能性があるからです。しかし,今回,ある発表に対して,質疑応答場面でコメントをしました。企業の担当者にヒヤリングして,その内容に基づいて今後の戦略提案を導き出そうとしていたことに対して,ヒヤリングの内容をそのまま受け入れて安易に戦略に結びつけてはいけないと発言しました。企業人はポジショントークをする可能性があるし,思いつきで話す可能性もある。彼らにとって都合の良いことのみ話していると疑ってヒヤリング内容を利用すべきであるということです。このことは企業人だけでなく,政治家,官僚,ひょっとすると学者にも当てはまります。

これは他の学生にも留意して欲しいので,あえてその場で話をしました。学生たちはがんばって企業人に対するヒヤリングを何度も実施します。そして,それを真に受けて発表内容にそのまま織り込みます。結論を支える重要根拠として扱う場合もあります。しかし,本当にそれでいいのかと踏みとどまり,別の情報源から傍証を探したり,反証を試みるたりすべきなのです。

実はこれは,ある学会において,ケーススタディー型研究発表を聴講していた時に接したコメンテーターの発言を,私なりに受け止めた内容です。私たち教員も常に留意しなければならない事柄です。

発表会後,懇親会が学内の猿カフェで行われました。その際,何人もの他大学の学生から研究発表に対するコメントを求められました。皆非常に熱心に聞いてメモを取っています。例年のことながら感心します。研究発表会を厄介事だと感じるのではなく,自分を成長させる素晴らしいチャンスだと考えているのでしょう。ただ,うちの3年生ゼミ長が,「うちの学生で他大学の先生や学生に研究発表の相談を持ちかけているのは僕ぐらいでした。他の学生たちは誰もそういうそぶりは見せなかった。なんかうちの学生は今一つですね」と私に話してくれました。例年私も感じることですが,うちの学生は内輪で集まるばかりで,他大学生・教員との交流に消極的です。なお,積極的に交流を図る学生たちは,本大会でよい評価を得る傾向にあります。実際うちのゼミでも,過去本大会で良い評価を得たゼミ生は,他大学の先生にしつこく相談し,教えを乞うていました。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

テーマを絞り込む過程

2016年07月10日 | 名古屋マーケティング・インカレ
ゼミの3年生と4年生は研究テーマを一旦決定しました。3名しかいない3年生は,1チームで研究発表を行うことになり,当然1つのテーマを決定しました。彼らは昨年度からテーマパークを調査していたので,それに関連したテーマを探しました。その結果,導出したテーマは,「どうすれば海外テーマパークが日本に受け入れられるのか?」というものです。つまり,海外テーマパークが日本市場で成功するための原則ないしは指針を自分たちなりに打ち立てようというのです。

正直言って大きすぎるテーマです。学生の手には負えません。もっと絞り込んで,狭い,小さいテーマに修正しなければ,まともな発表はできないでしょう。

彼らは,理論的検討として,国際マーケティング論の標準化・適応化論を取り上げるとしています。標準化・適応化論は,国際市場参入を検討する際には避けて通ることができない議論です。したがって,国際マーケティング論の中心的議論で,数多くの既存研究が存在しています。国際マーケティングの教科書では必ず詳細に解説されます。まずは,これらのうち主要なものをきちんとレビューして,自分たちなりに議論を整理しなければなりません。ただし,それら主要既存研究の大半は製造業を対象にしていますので,サービス業とりわけテーマパークに応用可能なのかどうかも検討しなければなりません。また,サービス業の隣接産業である小売業を対象とした研究は,集客という点で,テーマパーク経営に参考になる可能性があるので,その国際展開に関する研究は詳細に検討する必要があります。

この標準化・適応化論を取り上げる際に,市場参入成功のカギとして,適応化を暗黙に想定するケースが多いようです。しかしながら,企業が製品・サービスのマーケティングについて標準化・適応化することと,それが市場に受け入れられることとは次元が違います。製品・サービスが標準化していても市場参入がかない,そこの消費者に受け入れられた例はいくつもあります。したがって,市場に受け入れられるとはどういうことなのか,日本市場を対象にするならば,そこで受け入れられることはどういうことなのか,子細に検討する必要があります。そのためには,テーマパークに関する日本市場の調査・分析をきちんと行わなくてはなりません。

これらのことをきちんと行いながら,個別企業の事例研究に入ってほしいと思います。学生の発表では,理論的検討を無視して,いきなり個別企業の事例研究を行うことが多い。うちのゼミの3年生たちもそうです。しかし,思考の枠組みや分析の視点がないまま,やみくもに事例を記述しても,まともな分析はできません。表面的な感想しか出てきません。学生は理論的検討を嫌いますが,それがなければ,一貫した論理を根底に持つ,分析ができないのです。理論的検討は大学ならではの学びです。そして,それをきちんと行えば,思考の枠組みができてくるので,大きなテーマを狭く絞り込むことが可能になります。今は枠組みがないから,ぼんやり大きなテーマを掲げてしまっているのです。

ゼミ生には,テーマを絞り込む過程に理論的検討が含まれることを理解してほしいと思います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

本を読め

2015年10月05日 | 名古屋マーケティング・インカレ
先日,名古屋マーケティング・インカレ第2回中間発表会に参加しました。そこで,学生の研究発表をいくつか聴きました。その際,インカレに関わっている数人の先生と,今までの指導状況や今回の印象などについて意見交換しました。

何人かの先生が指摘したのが,「学生が本を読まない」ということです。文献を調査せよと指示すると,学生は,インターネット上,主にグーグルのような検索エンジンを用いて記事検索をする。そして,そこにアップロードされているものを拾ってくる。図書館に所蔵されている専門書や論文集をきちんと読まず,文献調査を終わらせてしまう。という状況を指しています。

うちのゼミでも同様で,インターネット検索でひっからない文献をきちんと読みません。大学教育の一環で行っている研究発表大会で,専門書や論文に触れないことはあり得ないのですが。専門書や論文を読み,研究発表にそれを生かそうとするのならば,理論を正面から学ぶことが求められます。ほとんどの専門書や論文は理論の開発やその応用を試みています。

研究発表は,基本的に,「なぜこのようなことが起きたのか?」という疑問を基に構成されるはずです。その疑問に対して,自分なりの答えを導くためには,まず理論を紐解く必要があります。なぜならば,理論は,現実社会における特定の現象が起きる原因やメカニズムを,単純に示すために開発されたものだからです。自分なりの答えを出す前に,先人が苦労してひねり出した理論が考察対象に応用可能かどうか考えてみると,答えの手がかりが得られます。学生が一から答えを導き出すなど至難の業なのです。

ゼミ生はじめ学生が理論的な文献を読まないのは,理論は難しく役に立たないものだと思い込んでいるからでしょう。理論は確かに一般的には使わないような表現が盛り込まれていて(しかも漢字や英語,場合によって数式だらけ),一見訳が分からないでしょう。

しかし,理論は,現実社会の特定現象を説明するために開発されたものなので,現実と無関係な言葉遊びではありません。しかも,本当に現象を説明するための道具として役立つのかどうかテストされ続けています。特定現象以外の他の現象に応用可能かどうかも試され続けています。「どのようにすれば戦略が成功するのか」という問いには理論は直接対応していないかもしれません。いわゆる実務的な解は提供していません。しかし,現象の原因やメカニズム追究には役立つことがあるのではないでしょうか。

なお,学生が理論中心の専門書を難しくて理解できない時には,教員に質問して教えを請えばいいだけの話です。高い学費を支払う学生には,教員を利用する権利があります。そのために教員は大学に雇用されているのですから。

「学生が本を読まない」という嘆きが出ていましたが,実際には,今回の中間発表会で,例年より,文献をきちんと読み,理論の応用を考えた発表が多かったといえます。反省すべきはうちのゼミだけなのかもしれません。ゼミ生には,本を読めと諭します。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ありきたりのテーマはだめなのか?

2015年06月05日 | 名古屋マーケティング・インカレ
先日,名古屋マーケティング・インカレのエントリーシート提出日を迎えました。現在,全参加学生と教員間で全てのシートを閲覧できるようになっています。

そのなかで,個人的に注目したものがあります。愛知大学の学生チームによる「なぜ総合スーパーの衣料品は弱いのか」というテーマのシートです。大半の学生チームは自分の生活体験上の興味からテーマを見つけようとするか,外部から依頼された「実践的」テーマに乗っかります。しかし,このテーマはどうもそうではなさそうです。

今どきの学生は総合スーパーで衣料品を買う機会は少ないでしょう。そこを利用したことがあったとしても目立つ存在ではありません。したがって,学生がそれに注目することはあまりないだろうと思います。また,総合スーパーの経営問題は,日経ビジネスのような専門雑誌の記事,学術論文等で散々取り上げられてきていますが,もはや花形の小売業態とは言えないので,未来に目を向ける若者がそれを掘り下げようとは思わないでしょう。以上は私の勝手な推察ですが。ともかく,学生が総合スーパーを取り上げたこと自体に注目しました。

さらに,学生がある意味ありきたりといってよいテーマに切り込もうとしていることにも感心しました。なぜ総合スーパーの衣料品は不振なのかという疑問に対しては,何度もメディアで取り上げられ,すでにジャーナリスト,コンサルタント,学者が答えを出しています。その概略はつぎのような内容です。つまり,何でも扱う総合スーパーに対して,特定カテゴリーに絞り込んで競争力をつけたカテゴリーキラーが,多くの商品分野において,総合スーパーの顧客を奪った。とくに,衣料品分野においてはSPAと呼ばれる専門店小売業者が,商品開発とコスト・コントロールに強みを発揮して,総合スーパーの衣料品分野から顧客を奪い,その分野を落ち込ませた。さらには,企業規模の大きくなった総合スーパー企業は柔軟性を欠き,顧客ニーズをつかみ損ねて,対抗措置をとることができなかった。

既に専門家が定まった答えを出しているように思える問題を,学生が検討する余地はないかもしれません。結局,専門家たちの書いたレポートや記事を読んで,その内容を整理して,作業は終わるかもしれません。しかし,本当にそうでしょうか。専門家たちの言説には,納得のいく根拠が示されているでしょうか。要因間の関係がきちんと提示されているでしょうか。疑ってみることはできるのではないでしょうか。そしてその疑いの果てに,専門家が示した答えとは違ったものを示すことができる可能性があります。あるいは,答えは同じでも,違った視点の説明を提案することができるかもしれません。もし,そのようなことができれば,十分オリジナリティーのある面白い研究発表になります。

一般的に,企業とコラボした新しい商品パッケージや,オタク市場に切り込むゆるキャラなど,学生は,実践的な戦略提案型の研究テーマを志向するか,自分たちに身近で奇抜な現象を取り上げることで,面白い研究発表が出来上がると考えているようです。そして,たいてい,学生のみずみずしい感性を活かして,学生をターゲットとする商品やプロモーションを提案するというのが結論です。メディアでは,優れた大学教育のトピックスとしてそのような活動がよく取り上げられているので,意義あるテーマのように思えます。しかし,これらはすでにあふれかえっていて,私の目からはもはやありきたりの研究発表に見えます。

むしろ,専門家が出した答えを疑って,それをひっくり返す発表をする方がよほど面白いと感じます。今や,学生がそのようなことをするのは,ありきたりではないと思います。なぜ総合スーパーの衣料品は不振なのか,専門家の気づかない,わくわくする答えを期待しています。同様のテーマの名城大学チームによる「立ち上がれGMS」にも期待しています。

うちのゼミでは,コストコはなぜ日本の消費者に受け入れられたのかというテーマを取り上げるチームがあります。これについても,専門家がそれなりに答えを出しています。しかし,本当それでいいのか疑って,自分たちなりの答えを出して,私や他の教員を面白がらせて欲しいと思っています。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

反省

2014年12月07日 | 名古屋マーケティング・インカレ
名古屋マーケティング・インカレ本大会が12月6日に開かれ,公式の行事は終了しました。私は校務のため,予選途中で退席せざるを得なくなり,その進行を把握していません。したがって,例年書いている本大会の概要と最優秀賞に対するコメント等は,今回は書けません。

今年度のうちのゼミの3年生による名古屋マーケティング・インカレに対する取り組みについては,春学期からあきれ果てる出来事がいくつかあったため,もうブログでは触れないことを決めていました。しかし,ゼミ生と私への戒めのため,ここできちんと反省を記述しておいた方が良いと思うようになりました。

うちのゼミの取り組みについては大失敗でした。過去最低だったと思います。

ゼミ3年生たちは,春学期,大会エントリー前,4つのチームを編成し,研究テーマ探しをしていました。しかし,一部メンバーが何もしないゆえに,全く進まないチームが出たため,それを解散させ,3チームに集約しました。それでエントリーをしました。ただ,エントリー後も,何もしなかったゼミ生はやはり何もしないままでした。そして6月に1回目の中間発表会に参加しました。例年ここでゼミ生の意識は変わります。他大学生の真剣な取り組みや発表レベルの高さに触れ,自分たちもきちんとやらないと恥をかくと認識するようになります。何もしないゼミ生もここで変わってくれると期待していました。

しかし,その期待はうち砕かれます。その後も結局何もしないままだったのです。何もしないメンバーがいるチームではリーダーのみが発表準備を進めることになりました。そのリーダーの頑張りは空回りし,そのチームは,2回目の中間発表会後の11月まで迷走し,ころころとテーマを変え,何をやりたいのか自分たちでもわからなくなっていました。最終的には,本大会までに発表内容を作り上げる見込みがなくなったので,私の方から本大会辞退を勧告し,その手続きをとりました。過去,中間発表会に参加したのに本大会を辞退したチームは,全参加大学において,発生しなかったため,前代未聞といえるでしょう。

最初の段階で何もしないゼミ生を辞めさせておけばよかったと反省するのですが,それでは教育にはならないという思いもあります。他大学生と触れ合う中で,真剣に研究発表に取り組む雰囲気が生まれるのが,名古屋マーケティング・インカレの良いところです。1年間近く,競い合い,協力し合う場面が多々存在し,そこに包まれて,ダメ学生が変わっていく様子をずっと見てきました。その効果がなかったというのは,私には驚きです。問題が提起されたかもしれないと感じています。何かダメゼミ生のモチベーションを上げる方法がなかったのか悩んでいます。

なお,本大会を辞退したチームのメンバーには,現状ではゼミの単位は取得できない,基本的には今すぐ辞めてもらう。ただし,単位取得のチャンスをここで与えないのは,教育上問題があるので,1月の卒論発表会の時に,4年生の卒論発表と並んで,研究発表を行い,そこで卒論に準じた評価が得られたならば,単位取得について道をひらくと私から指示しました。

何もしないゼミ生がいたためか,残りのゼミ生の取り組みはいつもより遅れがちで,ゼミ全体で停滞した雰囲気がありました。本大会に出場し,発表をやり終えたチームについても,結果は芳しいものではありませんでした。

他大学チームと比べ,アンケート調査やヒヤリング調査をしつこく実施する姿勢にかけていました。ほどほどの妥協をしてしまい,うまくいかなければ何度でも調査する,様々な角度からデータを収集するということはありませんでした。アンケート項目について,yes かnoを聞くような単純なものを考え出すだけで,特定の事象が生じた背景を拾い上げるような質問を盛り込んでいませんでした。そのために,薄っぺらな調査になってしまいました。私は,そのような状況に対して,失敗からのリカバリーを考えていない調査をしていると何度か指摘しているのですが,ゼミ生たちは理解しませんでした。

また,先行研究の検討を春学期から指示しているのですが,それが不十分になっていました。ゼミ生においては,現地調査のような「アクティブ」なことをやれば,事足れりという認識だったのかもしれません。研究発表を行うには,先行研究の検討が欠かせないのですが,それが十分理解できないままだったのです。

春学期からずっと指摘していたのは,質問のダメさでした。中間発表会から本大会まで,他チームの発表に対し,うちのゼミ生はほとんどまともな質問ができませんでした。実は2年次からずっと質問は低調でした。やり方を教えてきましたが,それを実践したゼミ生は少数でした。質問ができないというのは,致命的です。研究発表の内容が理解できない,関心がないということを示しているからです。

私はもっとしつこく同じことを指摘すべきだったと考えています。しつこく言わないと人は動かないのです。10聞いて,1を知るというのが実情なのです。何もしない一部ゼミ生の存在の影響で,あまり重い負担を与えてもゼミ生たちは対処できないだろうという考えがずっと頭をよぎっていたのです。いつしか要求レベルを上げないようになっていました。しかし,きちんと取り組んでいるゼミ生にそのような考えを適用すべきではなかったのです。悔いの残るような研究発表をさせないことが重要だったのです。

私たちの生活や仕事で大事なのは,失敗から学ぶことです。今回の失敗から,何を学ぶことができるのか,次回のゼミではゼミ生に呼びかけてみたいと思います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

近況

2014年06月12日 | 名古屋マーケティング・インカレ
ゼミ3年生は,現在,7月6日開催の名古屋マーケティング・インカレ第1回中間発表会に向けて,準備中です。本人たちが読んでいる中で,きついことを書くのは気が引けますが,本人たちのために敢えて書くと,発表内容やチーム・マネジメントは過去5年間で最低レベルです。

4月に発表準備を始めた時には4チームありました。しかし,うち1チームがテーマを具体化できず辞退。3チームに絞りました。また,残った3チームにおいては,早くも何もしないメンバーがいたため,チーム・マネジメントに懸念が生じました。そこで,辞退した1チームのメンバーと,何もしないメンバーについて,3チームへの再配属を行いました。そして,5月下旬に新3チームが大会エントリーを行いました。

しかし,あれから3週間近くたちますが,あまり改善していません。例年は3月から研究発表準備が始まるところ,今年度はキャンパス引越しのため,4月からの開始になりました。その遅れが影響しているのかもしれませんが,それにしても,ゼミ生の意気は上がらず,発表内容は雑なままです。

酷いチームは,リーダー一人ががんばり,他のメンバーはほとんど何もしません。リーダーは毎日夜遅くまで調査を行い,発表準備にいそしむ一方で,他のメンバーは何もせず,夕方さっさと帰宅してしまいます。そして,何もしないメンバーにとって,週に1度のゼミの開講時限に出席し,リーダーが書いた発表原稿を棒読みするだけが,研究発表への参加になっています。これはダメだと諭しましたが,変化があるようには見えません。チーム・マネジメントの失敗ゆえか,そのチームの発表はここ3週間全く進歩がありません。

エントリー後ではありますが,ダメチームをさっさと解散させようと考えました。しかし,とりあえず,7月6日の発表会までは存続させることにしました。なぜならば,発表会を経験すれば,ダメメンバーも意識を変えるかもしれないと思ったのです。

ダメメンバーは,学内のなあなあな雰囲気を引きずって,「研究発表会なんて大したことがない」と高をくくっているのかもしれません。ゼミでは私は4月から厳しい指摘をしてきましたが,所詮学内での出来事なので,「教員のこけおどし」と受け取って,受け流してきたのでしょう。

発表会で,自分たちよりも意欲・能力で勝る他大生に直接会い,厳しい指摘をされれば,危機感を持ってもらえるかもしれません。他大生,他大学教員,ビジネスマン等の前では,学内とは違って,甘えが通用しないことを感じてもらえるかもしれません。自分たちのダメさを悟ってくれるかもしれないのです。そうなれば,意識が変化して,まじめに研究発表に取り組んでくれるのではないかと予想しているのです。

ただし,それは私の甘い期待に終わるかもしれません。やはり何も変わらず,ダメなままかもしれません。そうなった場合,ダメチーム・メンバーには,名古屋マーケティング・インカレからは外れてもらう(辞めてもらう)予定です。参加している他大学の先生方や学生には迷惑をかけますが,その大会の質を維持するためにはやむを得ないこととして,私が謝罪して,認めてもらうつもりです。

辞めたメンバーについては,ゼミの単位取得を望むならば,研究発表に取り組むゼミ生とは別メニューで,資格試験勉強をしてもらいます。例えばTOEICなど。一定水準の資格が取得できたら,ゼミの履修単位を認めることにする予定です。すでにゼミ生には予告していますが,春学期末にきちんと考慮する予定です。

今年度のこの事態について,昨年度からその芽が出ていることを上級生が指摘していました。私は,4月から名古屋マーケティング・インカレ準備に入れば,好転すると考えていました。私の見通しが甘かったのでしょう。反省してます。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする