デジタル空間の情報との向き合い方を調べるため、読売新聞が日米韓3か国を対象にアンケート調査を実施した結果、米韓に比べ、日本は情報の事実確認をしない人が多く、ネットの仕組みに関する知識も乏しいことがわかった。日本人が偽情報にだまされやすい傾向にある実態が浮かんだ。
調査は昨年12月、国際大の山口真一准教授(経済学)とともに3か国の計3000人(15~69歳)を対象に共同で実施した。情報に接した際、「1次ソース(情報源)を調べる」と回答した人は米国73%、韓国57%に対し、日本は41%だった。「情報がいつ発信されたかを確認する」と答えた人も米国74%、韓国73%だったが、日本は54%にとどまった。
回答者のメディア利用状況なども聞いた結果、偽情報にだまされる傾向が表れたのは「SNSを信頼している人」「ニュースを受動的に受け取る人」だった。一方、だまされにくかったのは「新聞を読む人」「複数メディアから多様な情報を取得している人」だった。新聞を読む人はそうでない人と比べ、偽情報に気付く確率が5%高かった。
(読売新聞オンライン,2024年3月26日)
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日本は情報のソース確認をしない人が多いという指摘は,学生の行動を見ていると納得できます。私の周囲では,安易なインターネット検索で情報収集を済ませ,それを研究発表や卒業論文に引用する学生が後を絶ちません。卒論の引用文献がすべてURLというのも珍しくありません。しかも,その引用元が政府の白書,企業のIR情報など確度の高いものならば問題ないのですが,だれが書いたか分からない個人の発信情報や企業のプロモーション関連情報について,1次ソースを確かめもせず使います。
うちの学生がよくやるのが,専門書(論文もあり)に書かれているはずの理論を,インターネット上の解説を読みそこから引用することです。インターネット上の解説は,個人,企業,協会が掲載しています。そして,元の専門書は読もうとはしないばかりか,図書館OPACの検索すらしません。
このネット上の解説を参考程度に読むのであれば問題ありません。しかし,専門書までたどって,その解説の真偽を確かめ,引用はその専門書から行わなければなりません。なぜならば,それが1次ソースだからです。1次ソースでないと,情報が歪曲されている,あるいは虚偽情報をまぎれているかもしれないのです。
以前,マーケティングのコトラー理論やポーター理論を使うといって,ゼミ生がインターネット上のそれらの解説記事を読み,研究発表に引用しようとしました。私はその内容に大きな違和感を持ったので,ゼミ生にコトラーやポーターの著書を読むように指示するとともに,自分で学生が引用している解説記事を読みました。果たして,解説記事にはコトラーやポータの著書からの引用表示がない上に,そもそも内容が間違っていました。
例えば,コトラー理論を解説するといいながら,コトラーのどの著書の内容を解説しているのか表記がなく,しかもコトラーではなく別の日本人学者の理論をコトラー説として解説しています。おそらくその解説記事を書いた本人はコトラーの著書を読んでいないでしょう。何かの資料の孫引き(ひ孫引きかもしれない)したのでしょう。
真偽を確かめないでインターネット情報に影響を受ける人は,インターネットの奴隷と化してしまうかもしれません。健全な状態ではありません。大学教育を受ける以上,ゼミ生には疑いの目をもってメディア,特にインターネットに接する姿勢を身に着けてほしいと思います。
調査は昨年12月、国際大の山口真一准教授(経済学)とともに3か国の計3000人(15~69歳)を対象に共同で実施した。情報に接した際、「1次ソース(情報源)を調べる」と回答した人は米国73%、韓国57%に対し、日本は41%だった。「情報がいつ発信されたかを確認する」と答えた人も米国74%、韓国73%だったが、日本は54%にとどまった。
回答者のメディア利用状況なども聞いた結果、偽情報にだまされる傾向が表れたのは「SNSを信頼している人」「ニュースを受動的に受け取る人」だった。一方、だまされにくかったのは「新聞を読む人」「複数メディアから多様な情報を取得している人」だった。新聞を読む人はそうでない人と比べ、偽情報に気付く確率が5%高かった。
(読売新聞オンライン,2024年3月26日)
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日本は情報のソース確認をしない人が多いという指摘は,学生の行動を見ていると納得できます。私の周囲では,安易なインターネット検索で情報収集を済ませ,それを研究発表や卒業論文に引用する学生が後を絶ちません。卒論の引用文献がすべてURLというのも珍しくありません。しかも,その引用元が政府の白書,企業のIR情報など確度の高いものならば問題ないのですが,だれが書いたか分からない個人の発信情報や企業のプロモーション関連情報について,1次ソースを確かめもせず使います。
うちの学生がよくやるのが,専門書(論文もあり)に書かれているはずの理論を,インターネット上の解説を読みそこから引用することです。インターネット上の解説は,個人,企業,協会が掲載しています。そして,元の専門書は読もうとはしないばかりか,図書館OPACの検索すらしません。
このネット上の解説を参考程度に読むのであれば問題ありません。しかし,専門書までたどって,その解説の真偽を確かめ,引用はその専門書から行わなければなりません。なぜならば,それが1次ソースだからです。1次ソースでないと,情報が歪曲されている,あるいは虚偽情報をまぎれているかもしれないのです。
以前,マーケティングのコトラー理論やポーター理論を使うといって,ゼミ生がインターネット上のそれらの解説記事を読み,研究発表に引用しようとしました。私はその内容に大きな違和感を持ったので,ゼミ生にコトラーやポーターの著書を読むように指示するとともに,自分で学生が引用している解説記事を読みました。果たして,解説記事にはコトラーやポータの著書からの引用表示がない上に,そもそも内容が間違っていました。
例えば,コトラー理論を解説するといいながら,コトラーのどの著書の内容を解説しているのか表記がなく,しかもコトラーではなく別の日本人学者の理論をコトラー説として解説しています。おそらくその解説記事を書いた本人はコトラーの著書を読んでいないでしょう。何かの資料の孫引き(ひ孫引きかもしれない)したのでしょう。
真偽を確かめないでインターネット情報に影響を受ける人は,インターネットの奴隷と化してしまうかもしれません。健全な状態ではありません。大学教育を受ける以上,ゼミ生には疑いの目をもってメディア,特にインターネットに接する姿勢を身に着けてほしいと思います。