愛知学院大学青木ゼミのブログ

愛知学院大学商学部青木ゼミの活動を報告するためのブログです。

インプット

2024年10月12日 | 名古屋マーケティング・インカレ
先日,名古屋マーケティング・インカレの第2回中間発表会が開催されました。その閉会式で,総評を求められたので,つぎのような話をしました。

今,皆さんはどのように研究発表を進めたらよいのか分からないで,迷っている。なぜ迷っているかといえば,知識が足りないからだ。知識がないまま,研究テーマや方法を議論したら,ぼんやりとしたあいまいな内容のやりとりをするだけだ。したがって,これから1か月間は徹底して知識のインプットに努めて欲しい。

夏休み前の1回目の発表時,皆さんは安直に研究発表を考えていたように見受けられる。仮説を思い付きのように立案して,アンケート調査によって根拠づけすれば,結論が見いだせると考えていたようだ。しかし,あれこれ文献を読み,消費者に対するアンケートや企業人へのヒヤリングを実施していくと,思っていた通りにはいかず迷いが深くなっただろう。

迷ったときには,とにかく知識のインプット。とくに本や論文のような文献のレビューを行う。さらに消費者,企業人,大学教員など他の人に聞いてみることも進める。徹底してインプットした後。発表の2週前ぐらいに,大胆にばっさり得た知識を捨て去る。100の知識を得たならば,90を捨てる。残った10で発表を組み立てる。もったいないように感じるかもしれないが,この捨て去る過程で「頭がクリア」になる。10を得ただけで,これをすべて使った発表はぼやんりとした曖昧なものになる。概念と概念の関係性が見えないからだ。しかし,100を得ていれば,概念には様々な解釈が存在し,その背景に違いがあることが分かる。そのうえで,90をばっさり捨て去れば,概念の本質が見え,概念間のつながりが明確になる。

以上理解してもらえたでしょうか。元々これは,文献の読み込みを中心に知識のインプットの甘い自分のゼミ生に対するメッセージでしたが,すべての参加学生に伝えました。学生の考えている研究テーマに関連する事項は,たいてい専門家が既に考察しています。まずそれらを徹底的に学ぶことが近道なのです。

最後に次の話をしました。

このインカレは複数大学が連携した拡大ゼミという趣旨で毎年展開している。これを重要視して欲しい。このインカレには様々な大学の8人の教員が関わっているが,それぞれ専門が異なる。この多様さを活かして,自分の指導教員以外の他大学の先生にアドバイスを求めて,良い発表ができるようにして欲しい。

以上,ゼミ生たちに確認して実践して欲しいので,ここに書き残します。
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研究発表は続く

2023年12月08日 | 名古屋マーケティング・インカレ
12月2日に名古屋マーケティング・インカレ2023本大会が開催されました。うちのゼミからは3チームが参加しました。元々は4チーム存在しましたが,第2回の中間発表会後に1チームが瓦解しました。

今回は,同性婚式が広がらない理由を探るチーム,最近店舗を増やしているバーガーキングの競争戦略を探るチーム,100ショップの下位チェーン・ワッツの競争力を探るチームが発表しました。

同性婚式が広がらない理由を探るチーム「均さん銀さん」が優秀賞に選ばれました。このチームが何かの賞を獲得することは事前に予想していました。調査が徹底していたからです。名古屋市内の結婚式場すべてに対する電話調査,路上でのアンケート調査,当事者へのインタビューなどしつこく実施しました。また,文献もそれなりに調査をしました。夏休みを無駄にせず,地道に調査と考察を重ねていました。そのため,情報がリッチで,面白い内容に仕上がっていました。地道さは聴衆にきちんと伝わっていました。

他2チームは高い評価を得られませんでしたが,これも事前に予想していました。11月段階で,引用していた文献がgoogle検索に引っかかるインターネット上の記事ばかりだったからです。その安直さが論理展開にもわたっていたからです。インターネット上の記事は理論解説を取り上げたものでしたが,その理論の引用元がきちんと示されていないばかりか,誤りが見られました。本来引用元になるべき著書は大学図書館に所蔵されています。きちんと元の学術文献を読むように指示しましたが,手遅れ感がありました。

来年1月28日に商学部の学内研究発表会が開催されます。ここで挽回して欲しいのですが,今一つモチベーションが高まらない様子です。ここで,きちんと最後まで努力を継続しないと,4年次の卒論を書くための能力が養成されません。最後まで粘りに粘り,文献を読み,インタビューを繰り返し,内容を見直し続けることが,論理的に思考する訓練になります。

評価が高かったチームはメンバー全員が発表内容の形成に貢献していました。その一方,評価が低かったチームは,メンバー間の努力格差が顕著で,一部のメンバーはほとんど何もしない状況でした。がんばったゼミ生の不満を生まないために,成績評価の際,この努力格差を考慮します。成績は別にしても,何もしてこなかったゼミ生は,次年度の卒論で苦労することになります。調査のやり方,文献の読み方を身につけないまま,単独で卒論を仕上げなくてはならなくなるからです。

これまで調査研究について他のメンバーにおんぶにだっこだったゼミ生は,せめて残りの1か月ぐらいは真剣に調査研究に取り組んでほしいと思います。
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手間を惜しむな

2023年11月29日 | 名古屋マーケティング・インカレ
12月2日の名古屋マーケティング・インカレ本大会を前に,うちのゼミ3年生たちが焦っています。例年同じことを繰り返しているので,少々あきれています。

〇夏休み中の継続的調査と考察が大事といいながら,ほとんど何もやらず,2か月間無駄に過ごす。
〇チーム内で,ほとんど何もやらないメンバーが存在して,それがお荷物になったり,紛争の種になったりする。
〇理論的検討を行わないまま,思い付きの結論に安易なアンケート調査で根拠づけしようとする。
〇メモを取らず,議論や作業の記録をつけないために,堂々巡りの議論や繰り返しの作業を行う。
〇紙の文献を読もうとせず,安易にインターネット上の記事を真偽も確かめずに使おうとする。

以上毎年うちのゼミ生にとりつく悪癖ですが,今年もまた同じです。ようやく11月に入り,無為な夏休みを反省し,理論的文献を読み,テーマの絞り込みをしていますが,なかなかうまくいきません。時間足らずになりそうです。

紙の文献を読もうとせず,安易にインターネット上の記事を真偽も確かめずに使おうとすることについて,2年次に既にその問題点を指摘していましたが,ゼミ生たちは本気で取り合ってなかったようです。最近これが露呈してきました。

2つのチームが,インターネット上でフィリップ・コトラーの理論解説を探し出し(だれが書いたか分からない解説記事),これをそのまま引用しようとしました。私はコトラーの本をきちんと読まなければならない旨諭しました。インターネット上の解説記事にはコトラーのどの文献から引用したのか書かれておらず(コトラーの本の内容の解説にもかかわらず,その教科書の書名すら明らかにされていない),著作権を侵害している可能性があるうえに,間違った解説をしている可能性があるからです。

はたして,コトラーの実物の本(訳本)をゼミ生に確認してもらうと,インターネットの解説記事はコトラーの説とは違っていることが判明。さらに,その解説記事は別の学者の説をコトラー説として不正確に記述しています。

参考文献欄がURLだらけの,安易なインターネット引用をする学生チームや個人が,まともな研究発表をしたケースはありません。安易なインターネット引用をする学生は,文献調査以外でも手間を惜しんで,安直な発想で安易な作業を繰り返します。紙の文献を読むかどうかは,研究発表に対して手間をかけることの象徴なのです。手間を惜しんでは良い発表はできないのです。地道さが,思考を深め,矛盾の少ない論理を導き出すことにつながるのです。

締め切りまでもう少しですが,ゼミ生には最後まで手間を惜しまないで欲しいと思います。
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見直し・改善

2023年07月16日 | 名古屋マーケティング・インカレ
7月8日土曜日に愛知淑徳大学において名古屋マーケティング・インカレ第1回中間発表会が開催されました。34チーム総勢150名が発表しました。うちのゼミからも3年生4チーム13名が参加しました。今回は4年ぶりに中間発表会においても懇親会が開催されました。これでようやく平常に戻りました。

いつものように,今後どのように展開するかという決意表明にとどまる発表内容が大半でした。一部インタビューやアンケートなどの1次データ収集を行っているチームもありましたが,テーマが未確定であるため,それがどのように主張を支える根拠になっているのかが不明で,探索的・試論的な調査にとどまっていました。うちのゼミでも,名古屋市内の結婚式場ほとんどにアプローチして,電話インタビューを実施したチームがあります。しかし,想定とは全く違う回答を得てしまい,テーマを根本から見直すことになりました。

発表会後,テーマの見直し・改善を考えるように指示しました。その時に諭したことは,「文献をきちんと読みなさい」です。彼らが取り上げている,同性婚式,下位100円ショップや下位ハンバーガー・チェーンの生き残りなどについて,直接論究している研究はないかもしれませんが,それぞれ参考になる既存研究は多くあります。また,現象を説明する関連理論もたくさんあります。例えば,下位100円ショップの生き残りについては,競争戦略論における,競争地位別戦略,弱者戦略などに関する議論が参考になるかもしれません。あるいはそれ以外の研究が参考になるかもしれません。試行錯誤するしかないのです。

しかし,ゼミ生たちは理論的文献を読むことを嫌います。そんなことをするよりも,簡単な質問項目をいくつか編み出し,アンケート調査をさっさと実施して,質問に対して好意的な回答が得られれば,それで主張が根拠づけられると安易に考えています。ただし,その発想には重大な欠落があります。なぜそのような現象が起きたのかという問いとその答えを探す姿勢を持っていないのです。なぜそういう現象が起きたのかをロジカルに説明できなければ,まともな研究発表にはなりません。理論は現象が起きるメカニズムを示します。理論を学んで,なぜそのような現象が起きたのかという問いとその答えを探す姿勢を身に着ける必要があります。

最後にゼミ生に伝えますが,今探し出し,今後明らかにすべきは「目に見えないこと」です。それは要因やメカニズムと呼ばれるものかもしれません。目に見える現象の奥に潜む「目に見えないこと」を追究する過程が研究であり,それをロジカルに他人に伝えることが研究発表の場で求められるのです。現状では目に見えることを整理しているだけです。
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反省を踏まえて

2022年12月15日 | 名古屋マーケティング・インカレ
12月10日土曜日に愛知大学において名古屋マーケティング・インカレ本大会が開催されました。うちのゼミの3年生16名4チームが発表しました。今回は30チームと過去最高参加となりました。3年ぶりに、2回の中間発表会、本大会すべて対面形式で行うことができました。

今回の本大会では、いつも以上に特別賞を授与しました。予選段階で、評価が拮抗する発表ブロックが多かったためです。発表ブロック内で、優秀賞発表とほとんど差がない、差がついてもわずか、あるいは優秀賞にはならないものの一部学生が高く評価していたので惜しいという発表がいくつもありました。そういう発表には特別賞を与えた訳です。少々大盤振る舞いな感じはありましたが、頑張った学生を評価してあげたいという教員側の気持ちの発露です。うちのゼミでも1つ特別賞を授与されたチームがありました。

今日は本大会後初のゼミ授業日でした。まず、今回の最優秀賞チーム愛知大学「塩、ひとつまみ」による男性化粧消費に関する発表内容を振り返り、良い点と不十分な点を指摘してもらいました。ゼミ生たちは、良い点として、素直なロジック、見やすいパワポシートなどを挙げる一方、不十分な点として、アンケート項目のおかしな点、同義反復に陥っている論理を指摘していました。この指摘が自分たちに向かうことを期待して、この検討をしてもらったのです。つぎに自分たちの発表の良くない点を洗い出し、改善の方向性を議論してもらいました。事前に私から考え直すべき事柄を連絡してありましたので、それを踏まえての議論になりました。発表したらやりっぱなしではなく、将棋の感想戦のように、終わった後に、きちんと内容を振り返ると思考訓練になります。

1月末に学部内の研究発表大会があります。ゼミ3年生の4チームは基本的に同テーマでそこで発表してもらいます。その発表会では審査は教員が行うので、今回の学生相互評価とは異なる評価が下る可能性を説明しました。学生相互評価と比べて、理論的説明が評価される傾向にあること、データの収集や処理に厳しく目を向けられることなどを頭に入れて、改善してほしいと思います。
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久しぶりの中間発表会

2022年06月30日 | 名古屋マーケティング・インカレ
6月25日土曜日に、名古屋マーケティング・インカレ第1回中間発表会を愛知学院大学名城公園キャンパスにて開催しました。3年ぶりのほぼ通常通りの対面型の中間発表会でした。150名ほどが参加し、マスク姿以外はいつもと同じ発表模様でした。

いつもは発表会の後必ず懇親会を開催していました。しかし、昨今の感染症情勢下、懇親会を開くことが認められないため、やむなく、発表後、5会場で拡大ゼミを開催しました。各大学の学生が入り混じるようにグループ分けして、各研究発表の課題を議論してもらうという趣旨でした。

当初90分の時間を割り当てたところ、事前に何人かの先生から「長すぎるのではないか」「疲れていて議論などできないのではないか」という指摘があったので、60分程度で、90分までの延長も認めると弾力を持たせて議論してもらいました。しかし、教員側の懸念をよそに、結構学生たちの議論は盛り上がりました。会場によっては90分フルに使って議論を展開する学生たちが存在しました。

閉会式が終わり、片づけをしながら、うちのゼミ生たちが雑談しているのをぼんやり眺めました。そうすると、「あの発表は今後伸びると思う」「自分たちに向けられたあの質問は今一つ意味が分からない」など他大学の研究発表をめぐって会話しています。

これを聞いて、中間発表会にゼミ生を参加させてよかったとしみじみ思いました。研究発表をめぐって、日常的に会話すること。これこそうちのゼミで目指しているゼミの雰囲気です(参加しているすべてのゼミともいえる)。自発性なく、教員から指示されて仕方なく研究発表会に参加するという場合、学生たちにとって単位認定権のある教員の覚えめでたくすることが重要で、自分たちの発表が終われば、他人の発表には関心を持たずという状態になりがちです。しかし、ゼミ生たちは(一部かもしれませんが)、他大学の学生の発表に関心を持ち、他大学の学生からなされた質問を吟味して自分たちの発表の改善を図ろうとしています。一連の研究発表会自体を自分たちの重要な学生生活フィールドであると考え始めているかもしれません。

自発的に切磋琢磨して、研究発表を面白がる態度こそが、自分たちを追い込み、知的能力を鍛える原動力になります。この雰囲気が一部のゼミ生間にとどまらず、ゼミ内のすべての学生に共有されることを願っています。第2回の中間発表会は10月に開催されます。楽しみにしています。
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見直し

2021年12月09日 | 名古屋マーケティング・インカレ
先週土曜日に名古屋マーケティング・インカレ本大会が2年ぶりに開催され、うちの3年ゼミ生が発表しました。3チーム参加しましたが、まともな発表ができたのは1つのみ。残り2つは研究発表の体を成していませんでした。事前にダメなことは分かっていました。しかしながら、ダメな内容でも、発表すること自体には教育的意義があるので、直前に細かな指摘をせずにそのまま送り出しました。

本日反省会で自ら改善策を考えてもらうことにしました。その参考のため、今大会で最優秀になった愛知大学のシンメトリーの発表「企業は広告型CMと非広告型CMをどのように選択しているのか」を取り上げ、その長所と改善点を皆で議論しました。

この発表は企業がどのように広告型CMと非広告型CMを使い分けしているのかその要因を明らかにすることを目指しています。ここでいう広告型CMは製品の品質や便益を訴求するCMであり、非広告型CMは物語性、芸術性、伝播性を含んで、驚きや癒しを与えるような感覚的なCMです。広告然とせず、口コミ等の発生によって企業と消費者との関係構築を図ります。

清涼飲料水を対象とし、48ブランドのCMを調べ、それらを広告型と非広告型に分類しました。引き続いて、その創出に影響与える要因として、製品ライフサイクル(導入期、成長期、成熟期)、ターゲット(30歳以下、それ以外)、製品コンセプト(機能的価値、感覚的価値)を取り上げ、各要因によってCM発現の差があるかどうか、調査しました。カイ二乗検定によって、発現の差が統計的に有意であるかどうか確かめたところ、製品コンセプトにおいて有意差が認められました。その結果、製品コンセプト(機能的価値、感覚的価値)の違いが、広告型CMと非広告型CMの選択に対する重要な要因であると結論付けています。

明快な研究目的を設定して、CMを数十も収集し、それらを分析し、さらに複数の要因との関連をしつこく調査した点は最優秀にふさわしい発表だと評価できます。研究上の問いに自分たちなりの答えをきちんと出しました。素直なロジックは、分かりやすく説得力のある内容に結びつきました。この発表の問題点をあえて挙げれば、結論がある意味当たり前であることです。製品コンセプトとプロモーション手段であるCMの選択が一貫するのは当然です。まっとうな企業はマーケティング戦略を立案するときに、戦略の一貫性を考慮します。機能的価値には広告型、感覚的価値には非広告型という一貫性は当然なのです。私個人としては、製品コンセプトと一貫しないプロモーションに着目して、なぜそうなったのか掘り下げると面白いと思いました。

ゼミ生たちは、製品ライフサイクルとターゲットの区分基準を操作して再考察すると違った結果になるのではないか?製品カテゴリーを要因として取り上げることは可能か?などの意見を出しました。また、プレゼンが上手、構成の組み立てが巧み、質疑応答が誠実などとほめていました。ゼミ生は自分たちの発表振りかえるための模範にしてほしいと思います。

さて、今回うちの2チームが酷い発表をすることになったのは、チーム・ワークが機能していなかったからです。1チーム5、6名のうち、2名程度が懸命に発表準備に関わるが、その他はノータッチか受け身の姿勢で傍観するのみになっていました。フリーライダーの登場です。フリーライダーがいると、その者に対する対応や不満で積極的メンバーが疲弊してしまいます。こうなると作業は滞るし、アイディアは貧弱になります。結局、11月の末まで堂々巡りの議論を繰り返していました。

全員が積極的に発表に関わると、路線対立でもめごとが起きることがあります。それでチームが瓦解することがありますが、その場合、チームを分割してしまえば、研究発表は継続します。この場合発表が成功するかどうかはさておいて、教育上知的成長は望めます。その一方、フリーライダーがいる不活発なチームをそのままにしておいた場合、フリーライダーは何もしないので知的成長は望めませんし、積極的メンバーは努力を発揮しきれないので、不十分な知的成長に留まります。

今日、1月末の学内の研究発表会までに改善を施してほしい、できれば抜本的な見直しをしてほしいとゼミ生に指示しました。さらに取り組み方に問題があり、チーム・ワークが働いていない。中学生相手ではないので細かな指示はしないが、この点も自分たちで見直すようにと要望しました。ゼミたちがきちんと見直し、改善の努力を図るかどうか不明です。自分の知的成長のために研究発表に本気で取り組んでほしいと願っています。

追伸
学生の研究発表チームの最適人数は3名であることを経験上割り出しています。5名以上になると何もしないメンバーが必ず出現します。5名以上になるとコミュニケーションが密にならず、疎外されるメンバーが出てきます。フリーライダーにも言い分はあるでしょう。しかし、その言い分を隠したままフリーライダー化するのはコミュニケーションに問題があったいうことです。なお、3名が最適なのは、人数が少ないため、密なコミュニケーションが保たれ、誰かが「さぼる」余地がなくなるからです。そして、路線対立が生じた際、奇数であるため、議決すると一つに意見が集約されるからです。
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オンライン発表

2021年10月02日 | 名古屋マーケティング・インカレ
10月2日土曜日午後,名古屋マーケティングインカレの第2回中間発表会が開催されました。うちのゼミの3年生も3チームに分かれて参加しました。今回は緊急事態宣言が直前まで出ていた関係で,ZOOMを使ったオンラインによる発表会となりました。大学によっては,会議室,教室などの大学施設に学生が集まり,そこでオンライン参加できたケースがありましたが,うちのゼミ生は自宅から個別に参加しました。

いつもは自分のゼミ生の発表は参観しません。その時間は他大生の発表を見ます。自分のゼミ生の発表内容は把握しているので,他大生の発表を見たほうがこちらにとっては学びになるからです。しかし,今回は自分のゼミ生の発表も見て詳しく発表内容や方法をチェックしました。ゼミ生の実際の発表状況を把握しておいたほうがよいと考えたのです。なぜならば,オンライン発表はこの催しにおいて初めての試みであるうえ,ゼミ生はゼミの授業時間ではオンライン発表の練習をしなかったからです。

内容はさておき,発表方法を振り返ってみると,所定時間内で発表を収めることができなかったチームがありました。練習不足,学生間の連携不足でした。プレゼン技術が未熟で,説明が原稿棒読みで聞き取りづらい個所が何か所もありました。オンライン発表においては,顔や姿が十分見えない分,発話において丁寧さが求められるのですが,そこまで気が回らなかったようです。

他2チームは何とか時間内に発表を収めることができましたが,質疑応答が今一つでした。質問者が聞きたいことに十分答えることができていませんでした。臨機応変の対応はできず,質疑応答の予行演習が十分ではなかった印象です。

ゼミ生にとっては良い経験になりました。うまくできなかったことは全然問題ではありません。むしろ,それで自分たちの能力的に足りない部分を把握することができれば,今後の能力開発につながります。

今就職活動ではオンライン面接が当たり前のように採用されています。また,就職後はオンライン会議に出席することも多いでしょう。その前に,本格的な研究発表会でオンライン発表することができ,自分の足りない部分を知ることができたのは僥倖なのです。

なお,発表内容は問題だらけでした。早速発表終了後,各チームごと問題点を記したペーパーを配信しました。ゼミの授業は対面で行っていますので,今度のゼミ授業では,対面できちんと問題点の解説をします。その際,声のトーン,身振り手振り(ノンバーバル・コミュニケーション)を読み取って,反応を返してほしいと思います。叱ることも含め,問題点の指摘は対面が良いと思います。ノンバーバル・コミュニケーションが加わりよく情報が伝わります。

最後に,オンライン発表を取り仕切ってくれた愛知大学の学生の皆さんに感謝いたします。運営はスムーズでした。
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2年ぶり開催

2021年07月04日 | 名古屋マーケティング・インカレ
昨日2年ぶりに名古屋マーケティング・インカレの第1回中間発表会が愛知大学で開催されました。うちのゼミの3年生は3チームに分かれて参加しました。1年間無開催のブランクがあったため、発表会の運営ノウハウが継承されないのではないか、学生の参加意識が低下するのではないかなど当初懸念していましたが、実際にはそんなことはありませんでした。発表会は例年とほぼ同じ進行でした。円滑に進みました。学生の発表内容や水準も例年通り。

全チームの第1回の発表は、いつも、大まかなテーマ説明と、最終発表に向けた決意表明を中心に、これまで調べたことを取り上げます。たいていはテーマに関する現況の説明で大半の時間を費やします。そして最後に今後の課題を述べます。その後質疑応答に移ります。今回も同様でした。今回は質疑応答の前に、大学間の垣根を越えて、グループで発表に関する問題点や改善点を簡単に話し合うディスカッションの場が設けられました。そのディスカッションを受けて、質疑応答が行われました。

いくつかの質疑応答場面で、つぎのような質問・指摘が参加者から出ました。「課題がぼんやりしているので、具体的に何をするのか説明してほしい」「具体例の羅列では現状がよく理解できないので、いったん整理したほうがよいのではないか」。これは具体化と抽象化両方を要求しています。

かねてより私は抽象化と具体化両方を意識的に進めることが「頭の良い人の思考」につながると考えてきました。例えば、抽象化された理論を扱う場合には、それが具体的な社会現象の説明になっているのか常に考える。逆に具体的な社会現象を調査した場合には、それらをいったん分類し、現象間の関係性を考察する。このような思考のことです。「頭の良い人の思考」は自分がよく社会現象を理解することにとどまらず、他人によく理解してもらう「分かりやすい」説明にもつながります。

抽象化思考がないと、複雑な社会現象を複雑なままにしておくので、現象を整理し、現象間の関係やその背後の要因を見つけ出すことが難しくなります。また、社会科学はあくまで社会現象のメカニズムの解明が焦点なので、抽象理論を具体的な社会現象の関係に結び付けることができなければ、理論の存在意義はありません。具体化思考は社会科学には必須です。

昨日第1回の中間発表会を経験した学生は、具体化と抽象化ということを念頭において、次回の中間発表会の準備を進めてほしいと思います。きっとより明快な議論ができると思います。

なお、抽象化思考が苦手な学生が多いと思います。大学生の学力低下論争でも指摘されてきました。抽象化の第1歩は分類です。複数の社会現象を収集出来たら、まず分類してみてください。つぎにやるべきはキーワード化です。複雑な現象を表すいくつかのキーワードを考え出してみるのです。分類とキーワード化は情報の縮約になりますので、複雑な現象を複雑なまま扱うことがなくなります。この2つが抽象化思考の基本です。
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残念なこと

2019年12月10日 | 名古屋マーケティング・インカレ
11月30日土曜日に,名古屋マーケティング・インカレの本大会が開催されました。うちのゼミからは3年生2チームが参加し,発表しました。2つともボロボロの発表だったことについて,本人たちは自覚しています。

先週反省会を開催しました。つぎの2月の学内研究発表会に向けて改善してほしいからです。自分たちの取り組みでよくなかったこととして,彼らはつぎのような指摘をつぎつぎ口にしました。

 研究発表の方法をそもそも知らなかった。
 マーケティングの基本的知識がなかった。
 チーム内のコミュニケーションが悪かった。
 テーマを具体的にできなかった。

正直いって,私と上級生たちはあきれてしまいました。研究発表の方法は2年次からレクチャーしています。さらに,指定教科書である白井利明・高橋一郎『よくわかる卒論の書き方』〔第2版〕に,テーマ設定から,調査方法,議論の進め方など分かりやすく丁寧に記述されています。それをよく読むように何度も諭してきました。マーケティングの基礎知識については,コトラーの教科書の記述を図書館で調べてから,発表内容を組み立てるように春学期中に私は指示していました。上級生も,理解すべき専門用語や基礎概念について毎週指摘していました。

結局彼らは,この8か月間何も学ばなかったのかとため息をついたわけです。

また,コミュニケーションが悪かった例として,あるチームは,Lineで集合して議論する旨の連絡をしているにもかかわらず,メンバーの中には既読すらなかった者がいた。そのこともあって,集まって何かすることはうまくいかなかったと嘆いていました。Lineのメッセージでうまく連絡できないなら,電話するか,別途メッセージを送る方法を考えればいいのに。ただLineメッセージに既読がつかなかったというだけで先に作業を進めず,やり過ごしたことに驚きました。集まって何か作業ができないならば,各自が分担を決めて個人でどんどん進めてしまえばよかったのではないかとも思います。コミュニケーションの取り方や作業の分担など,チームワークが機能していななかったということです。結局そのチームは夏休みにはほとんど発表準備が進むことはありませんでした。貴重な2か月を無為に過ごしてしまったわけです。

この反省をきっかけに,あと2か月間できる限り改善してくれれば,少しの成長は見込めると思います。ただ,彼らはもう就職活動に目が行っているかな。そうなると研究発表に対して,モチベーションを高めることはない。大学教育における知的成長の絶好のチャンスを逃してしまう・・・

もちろん,ここでこのように厳しく書いているのは,彼らに知的成長してほしいからです。

 
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