就活の情報解禁日、3月1日が目前にせまり、売り手市場でのんびりしていた学生たちもようやくエンジンがかかってきた。エントリーシートを書いては見せに来ている。その中で、ある傾向として気づくのは「ドラマチック」に書きたいのか? と思われる内容だ。
例えば「学生時代一番頑張ったことは、留年したがそれを挽回したこと」というもの。確かに自分なりに精いっぱい頑張ったのかもしれないが、留年したことをはじめに言うのはどうか? と思う。もちろん「なぜ留年したのか」と聞かれたらそれについて答えることは必要だ。そこをどう挽回したかとプラスの方向で答えるのはいい。だが、それはあくまでも聞かれてからのこと。自分のマイナスポイントをはじめから声高にPRする必要はない。
自分のことを長所も短所も洗いざらい書いて、わかってもらうのがエントリーシートではない。
読んだ会社側の担当がどう思うか、ということを少し考えて書こう。ドラマチックな作文も決して望まれているわけではない。確かにエントリーシートで「困難だった出来事と、それを克服した経験を書きなさい」という質問はよくある。その場合は「困難な出来事」を書かなくてはならないが、先に挙げた例のように自分の失敗を書くのではなく、「状況」を書く方がいい。
例えば「部活動のコーチがいなかったが、自分たちで工夫して練習した」などだ。質問の仕方は違うが、結局、「学生時代一番力を注いだ経験」を書くことになる。なぜなら「困難な出来事」に遭遇するのは力を入れたからこそ。そもそも力を注いで頑張ってもいないのに、困難な出来事には遭遇しないだろう。
上田晶美「ドラマチックなPR必要? 企業側に立って吟味しよう」日経新聞2018年2月18日抜粋
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以上の記事では,学生が自分の体験記をドラマチックなものにすべく,あえてミスやマイナス生活からの挽回物語を作り上げて,企業にアピールすることのおかしさを説いています。
そもそもドラマチックな物語が必要なのでしょうか? 学生たちは,就職活動において,華々しさや特別な存在感が企業に受けると思い込んでいる節があります。しかし,多くの企業や職種において,華々しさや特別な存在感より,地道さや粘り強さのほうが重要であるのかもしれません。多くの組織の採用活動は「スター発掘」とは違います。たいていの組織の採用担当者は,職場に貢献してくれる働く仲間を探し出しているのです。組織の業務には,地味で,面白みがなく,ときに理不尽で腹立たしい部分が存在します。そんな業務を,一緒に担当できる人を探し出しているのです。
なお,私が学生のエントリーシートを始めとする書類を見ていて思うことは,ドラマチックかどうか以前に,「何を伝えたいのか分からない」要領を得ないものが多いということです。これは,学生の状況を要約する能力が低いことが原因の一つではないかと考えています(少なくとも私が接している学生の話)。逆に言うと,要約能力を高めると,就活で求められる書類の評価が上がると考えられます。さらには,口頭での説明においても同様に評価を上げることができるでしょう。
ゼミでは,日経ビジネスの記事を要約する練習を毎年行っています。記事の内容を要約して口頭で説明することを指示すると,ゼミ生は,慣れないうちは記事を全部読んでしまうのです。「これでは要約にならない,記事の内容を短くまとめるように」と指示すると,ゼミ生は記事の文章をいくつか抜き取って読み上げます。これがやっとです。
しかし,これでも要約にはなりません。そもそも自分なりに重要なポイントは何か把握していないので,ばらばらの情報を紹介しているだけになります。何を伝えたいのか不明です。さらに,記事で使われている言葉を自分なりに聞き手に合わせて換えておらず,記事の内容を聞き手に理解してもらう工夫がありません。これでは聞き手には,ゼミ生が何を伝えているのか理解できません。
テーマを捉えること,焦点を当てること,聞き手に合わせて言葉を換えること,これらをきちんと行うだけで,要約能力が上がると思います。言うは易く行うは難しですが。
例えば「学生時代一番頑張ったことは、留年したがそれを挽回したこと」というもの。確かに自分なりに精いっぱい頑張ったのかもしれないが、留年したことをはじめに言うのはどうか? と思う。もちろん「なぜ留年したのか」と聞かれたらそれについて答えることは必要だ。そこをどう挽回したかとプラスの方向で答えるのはいい。だが、それはあくまでも聞かれてからのこと。自分のマイナスポイントをはじめから声高にPRする必要はない。
自分のことを長所も短所も洗いざらい書いて、わかってもらうのがエントリーシートではない。
読んだ会社側の担当がどう思うか、ということを少し考えて書こう。ドラマチックな作文も決して望まれているわけではない。確かにエントリーシートで「困難だった出来事と、それを克服した経験を書きなさい」という質問はよくある。その場合は「困難な出来事」を書かなくてはならないが、先に挙げた例のように自分の失敗を書くのではなく、「状況」を書く方がいい。
例えば「部活動のコーチがいなかったが、自分たちで工夫して練習した」などだ。質問の仕方は違うが、結局、「学生時代一番力を注いだ経験」を書くことになる。なぜなら「困難な出来事」に遭遇するのは力を入れたからこそ。そもそも力を注いで頑張ってもいないのに、困難な出来事には遭遇しないだろう。
上田晶美「ドラマチックなPR必要? 企業側に立って吟味しよう」日経新聞2018年2月18日抜粋
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以上の記事では,学生が自分の体験記をドラマチックなものにすべく,あえてミスやマイナス生活からの挽回物語を作り上げて,企業にアピールすることのおかしさを説いています。
そもそもドラマチックな物語が必要なのでしょうか? 学生たちは,就職活動において,華々しさや特別な存在感が企業に受けると思い込んでいる節があります。しかし,多くの企業や職種において,華々しさや特別な存在感より,地道さや粘り強さのほうが重要であるのかもしれません。多くの組織の採用活動は「スター発掘」とは違います。たいていの組織の採用担当者は,職場に貢献してくれる働く仲間を探し出しているのです。組織の業務には,地味で,面白みがなく,ときに理不尽で腹立たしい部分が存在します。そんな業務を,一緒に担当できる人を探し出しているのです。
なお,私が学生のエントリーシートを始めとする書類を見ていて思うことは,ドラマチックかどうか以前に,「何を伝えたいのか分からない」要領を得ないものが多いということです。これは,学生の状況を要約する能力が低いことが原因の一つではないかと考えています(少なくとも私が接している学生の話)。逆に言うと,要約能力を高めると,就活で求められる書類の評価が上がると考えられます。さらには,口頭での説明においても同様に評価を上げることができるでしょう。
ゼミでは,日経ビジネスの記事を要約する練習を毎年行っています。記事の内容を要約して口頭で説明することを指示すると,ゼミ生は,慣れないうちは記事を全部読んでしまうのです。「これでは要約にならない,記事の内容を短くまとめるように」と指示すると,ゼミ生は記事の文章をいくつか抜き取って読み上げます。これがやっとです。
しかし,これでも要約にはなりません。そもそも自分なりに重要なポイントは何か把握していないので,ばらばらの情報を紹介しているだけになります。何を伝えたいのか不明です。さらに,記事で使われている言葉を自分なりに聞き手に合わせて換えておらず,記事の内容を聞き手に理解してもらう工夫がありません。これでは聞き手には,ゼミ生が何を伝えているのか理解できません。
テーマを捉えること,焦点を当てること,聞き手に合わせて言葉を換えること,これらをきちんと行うだけで,要約能力が上がると思います。言うは易く行うは難しですが。