今年度のゼミ卒業生の卒論について講評します。
藤角清香「マーケティングにおけるナラティブの有効性」が商学部研究発表コンテスト「ビジネスカンファレンス」論文部門の最優秀賞(流通・マーケティング)を受賞しました。卒論をそのままコンテストにエントリーしたのでした。そして昨日卒業式の後表彰されました。
この卒論はナラティブ・マーケティングという概念を自分なりに整理・提案し、その有効性を明らかにすることを目的としています。雑誌『フォーブス』で、ストーリー型マーケティングが終焉し、これからはナラティブ型マーケティングが必要とされるという記事を読んだが、その概念が記事内で明瞭に示されていないことに気づき、明らかにする必要があると思ったことがテーマ設定の始まりです。さらに、ナラティブ関連の研究を読み込む中で、ナラティブ、ストーリー、物語という用語について厳密に定義づけられていないことを確認し、ナラティブという概念がマーケティングの文脈でどのように概念規定できるのか追究する必要があると考え、テーマを固めました。
ナラティブ概念を用いた研究は、心理学、看護学、経営学などマーティンング以外の領域で多数存在するので、そのうちの主だったものをまずレビューしています。つぎに、物語を用いたマーケティングという研究が既に存在しているので、それをレビューしています。その後、事例を用いながら、マーケティングにおけるナラティブとは何か、物語、ストーリーという用語とはどのような関係にあるか検討しています。この卒論では、物語という包括概念の中に、ナラティブとストーリーが含まれるとし、ストーリーは企業から消費者に一方的に伝えられる完結した物語、ナラティブは企業と消費者を含めた社会全体で対話している現在進行形の物語と捉えて、マーケティング上のナラティブの特性とその有効性を議論しています。
まだなおあいまいな個所はあるものの、なかなか面白い内容になっています。学部学生が理論的文献を多数読み込みながら理論上の概念の論究を行うのはハードルが高いので、それにチャレンジしたことに対して教員で構成された審査員が高く評価しました。この卒論は、動画を用いたプレゼンテーション部門でも、優秀賞を獲得しています。プレゼンテーションの表彰は、参加学生による投票に基づいて決まります。一見複雑そうな概念規定の過程を、学生でも理解できるように、親しみやすい動画で説明したことが評価されました。
この卒論の執筆過程で、何度もしつこく「あいまいで言っていることがでよく分からない。考え直しなさい」と私は突き返しました。その度に、この卒業生は文献を読み、内容検討を繰り返しました。卒論締め切り2週間ほど前になってようやく結論の糸口が見えたようでした。ゼミの中では最も作業が遅れていましたが、最後の最後まで粘って考え続けたこと、文献を読み込み続けたことがよい評価につながったと思います。
この卒論以外にも、ゼミ卒業生の中から、論文部門、プレゼンテーション部門においてそれぞれ入賞者が出ました。今年度は、春学期に対面授業が不可になり、ゼミ活動がまともにできなくなりました。さらに秋学期に入っても、合宿やヒヤリング等が不可になり活動は制限されました。したがって、卒論の出来上がりは例年より悪くなるだろうと秋学期開始時点では予想していました。しかし作業が進行するにつれ、ヒヤリングなどの一次データ収集ができない分、文献の読み込みを例年以上に丹念に行ってくれました。結果として、うちのゼミの卒論は例年並みの水準を維持してくれたと感じています。今年度から副査制度が導入されましたが、それがよい緊張感を卒業生に与えたのかもしれません。
今年度は脱落者が数人出て残念でしたが、卒論を書き上げてくれた卒業生は「制限があっても工夫する」「何度もやり直しながら、一つのテーマを追い続ける」ことの大事さを学んで、有意義な1年を過ごしてくれたと信じています。
藤角清香「マーケティングにおけるナラティブの有効性」が商学部研究発表コンテスト「ビジネスカンファレンス」論文部門の最優秀賞(流通・マーケティング)を受賞しました。卒論をそのままコンテストにエントリーしたのでした。そして昨日卒業式の後表彰されました。
この卒論はナラティブ・マーケティングという概念を自分なりに整理・提案し、その有効性を明らかにすることを目的としています。雑誌『フォーブス』で、ストーリー型マーケティングが終焉し、これからはナラティブ型マーケティングが必要とされるという記事を読んだが、その概念が記事内で明瞭に示されていないことに気づき、明らかにする必要があると思ったことがテーマ設定の始まりです。さらに、ナラティブ関連の研究を読み込む中で、ナラティブ、ストーリー、物語という用語について厳密に定義づけられていないことを確認し、ナラティブという概念がマーケティングの文脈でどのように概念規定できるのか追究する必要があると考え、テーマを固めました。
ナラティブ概念を用いた研究は、心理学、看護学、経営学などマーティンング以外の領域で多数存在するので、そのうちの主だったものをまずレビューしています。つぎに、物語を用いたマーケティングという研究が既に存在しているので、それをレビューしています。その後、事例を用いながら、マーケティングにおけるナラティブとは何か、物語、ストーリーという用語とはどのような関係にあるか検討しています。この卒論では、物語という包括概念の中に、ナラティブとストーリーが含まれるとし、ストーリーは企業から消費者に一方的に伝えられる完結した物語、ナラティブは企業と消費者を含めた社会全体で対話している現在進行形の物語と捉えて、マーケティング上のナラティブの特性とその有効性を議論しています。
まだなおあいまいな個所はあるものの、なかなか面白い内容になっています。学部学生が理論的文献を多数読み込みながら理論上の概念の論究を行うのはハードルが高いので、それにチャレンジしたことに対して教員で構成された審査員が高く評価しました。この卒論は、動画を用いたプレゼンテーション部門でも、優秀賞を獲得しています。プレゼンテーションの表彰は、参加学生による投票に基づいて決まります。一見複雑そうな概念規定の過程を、学生でも理解できるように、親しみやすい動画で説明したことが評価されました。
この卒論の執筆過程で、何度もしつこく「あいまいで言っていることがでよく分からない。考え直しなさい」と私は突き返しました。その度に、この卒業生は文献を読み、内容検討を繰り返しました。卒論締め切り2週間ほど前になってようやく結論の糸口が見えたようでした。ゼミの中では最も作業が遅れていましたが、最後の最後まで粘って考え続けたこと、文献を読み込み続けたことがよい評価につながったと思います。
この卒論以外にも、ゼミ卒業生の中から、論文部門、プレゼンテーション部門においてそれぞれ入賞者が出ました。今年度は、春学期に対面授業が不可になり、ゼミ活動がまともにできなくなりました。さらに秋学期に入っても、合宿やヒヤリング等が不可になり活動は制限されました。したがって、卒論の出来上がりは例年より悪くなるだろうと秋学期開始時点では予想していました。しかし作業が進行するにつれ、ヒヤリングなどの一次データ収集ができない分、文献の読み込みを例年以上に丹念に行ってくれました。結果として、うちのゼミの卒論は例年並みの水準を維持してくれたと感じています。今年度から副査制度が導入されましたが、それがよい緊張感を卒業生に与えたのかもしれません。
今年度は脱落者が数人出て残念でしたが、卒論を書き上げてくれた卒業生は「制限があっても工夫する」「何度もやり直しながら、一つのテーマを追い続ける」ことの大事さを学んで、有意義な1年を過ごしてくれたと信じています。