今回おすすめは,杉本貴司『ユニクロ』日本経済新聞出版です。最近話題のビジネス書です。タイトルの通り,ユニクロを取り上げた著書です。経営者柳井正さんの学生時代から,最近までのユニクロ発展に関するドキュメンタリーです。450ページを超える大作です。
学者が書く経営史と違い,事実の客観的記述にはとらわれず,筆者の思いや評価をあちこちに盛り込んだ記述になっています。ただし,ジャーナリスト(日経新聞編集委員)らしく,徹底した取材に基づいて,詳細な物語を書き上げています。これには,成功あり,失敗あり,逆転あり,衝突あり,和解あり,別離あり,様々な人間模様が含まれているので,小説のような面白みがあります。平板な経営史やドキュメンタリーには仕上がらず,躍動感いっぱいの物語なのです。大作にもかかわらず2日ほどで読了しました。
私は本書を自分の専門である流通論のケースブックと捉え,流通システムを革新する先駆的小売業者の足跡として読み始めました。しかし,読み進めるにつれ,地方の個人商店が日本を代表する世界的大企業へと脱皮する過程として,捉えることができると気づきました。つまり組織論のケースブックです。山口県の地方都市にあった社長の個人商店が,東京に進出し,原宿で店舗を構え,フリースブームで飛躍する。ブーム後業績は落ち込んで危機を迎えるが,新しい商品・事業で再浮上のきっかけをつかむ。さらには海外進出を遂げて,世界的存在感を示していく。その過程で,柳井さんと彼を取り巻く幹部たちの衝突が起きる。そして,古参の幹部が脱落したり,新世代の幹部が育ったり,組織編成が変わったりする。
実際,組織が大きくなるにつれ,仕組みが整えられるのはどこも同じで,その過程で様々な混乱が起きます。ユニクロ(ファーストリテーリング)のような急成長企業は,経営者の役割や組織編制の変化,幹部の交代に伴うきしみを捉えるための好例なのでしょう。本書はその好例に切り込んでいます。
ただし,柳井個人商店であった当社が,個人商店を止めて,システマティックでしかも起業家精神あふれる大企業に脱皮したのかどうか,本書はまだ十分描き切っていないと感じました。柳井さんが現役中はそれは難しいのかもしれません。続編を期待します。ともかく,あっという間に読める面白さ。しかも,流通論や組織論の学びにつながる良書です。
学者が書く経営史と違い,事実の客観的記述にはとらわれず,筆者の思いや評価をあちこちに盛り込んだ記述になっています。ただし,ジャーナリスト(日経新聞編集委員)らしく,徹底した取材に基づいて,詳細な物語を書き上げています。これには,成功あり,失敗あり,逆転あり,衝突あり,和解あり,別離あり,様々な人間模様が含まれているので,小説のような面白みがあります。平板な経営史やドキュメンタリーには仕上がらず,躍動感いっぱいの物語なのです。大作にもかかわらず2日ほどで読了しました。
私は本書を自分の専門である流通論のケースブックと捉え,流通システムを革新する先駆的小売業者の足跡として読み始めました。しかし,読み進めるにつれ,地方の個人商店が日本を代表する世界的大企業へと脱皮する過程として,捉えることができると気づきました。つまり組織論のケースブックです。山口県の地方都市にあった社長の個人商店が,東京に進出し,原宿で店舗を構え,フリースブームで飛躍する。ブーム後業績は落ち込んで危機を迎えるが,新しい商品・事業で再浮上のきっかけをつかむ。さらには海外進出を遂げて,世界的存在感を示していく。その過程で,柳井さんと彼を取り巻く幹部たちの衝突が起きる。そして,古参の幹部が脱落したり,新世代の幹部が育ったり,組織編成が変わったりする。
実際,組織が大きくなるにつれ,仕組みが整えられるのはどこも同じで,その過程で様々な混乱が起きます。ユニクロ(ファーストリテーリング)のような急成長企業は,経営者の役割や組織編制の変化,幹部の交代に伴うきしみを捉えるための好例なのでしょう。本書はその好例に切り込んでいます。
ただし,柳井個人商店であった当社が,個人商店を止めて,システマティックでしかも起業家精神あふれる大企業に脱皮したのかどうか,本書はまだ十分描き切っていないと感じました。柳井さんが現役中はそれは難しいのかもしれません。続編を期待します。ともかく,あっという間に読める面白さ。しかも,流通論や組織論の学びにつながる良書です。