愛知学院大学青木ゼミのブログ

愛知学院大学商学部青木ゼミの活動を報告するためのブログです。

悩み

2011年02月20日 | 運営
来年度のゼミをどのように運営するのか悩んでいます。

まず,新4年生についてはどうすればきちんと卒論に取り組んでもらえるのか悩んでいます。例年,大半の4年生はまじめに卒論に取り組みません。「就職活動が忙しいのでできない」というのが学生の言い分ですが,就職活動が早期に終了した学生も卒論には力を入れません。秋学期も半ばになって,あわてて数冊の教科書かビジネス書の内容を抜書きして(よく言えば引用ですが・・・),あいまいなテーマと一貫性のない構成の卒論を書きあげるのが学部内で目立ちます。うちのゼミでも同様です。

ゼミでは昨年度から,観察調査やアンケート調査等による1次データを収集していないものは原則認めないようにしました。少し平均レベルは上昇しましたが,深く考察して文章を書かないのは相変わらずです。かつて,商学部で,優秀な学生が卒業要件単位を早々充足してしまって,卒論執筆を辞退するケースが続出して問題になりました。卒論を仕上げるインセンティブがないことが大きな問題のようです。どうすれば良い卒論を執筆することに学生を駆り立てることができるのか。悩みは簡単には解決できません。

新3年生は名古屋マーケティング・インカレに参加してもらうことになっていますが,これも悩みの種です。例年うちのゼミと他大学からの参加ゼミとのレベル差が大きいのです。今のままでは他大学に迷惑をかけてしまいます。他大学のゼミから見れば,うちのゼミは,特色がなく,インカレに対するインパクトも貢献もない存在のようです。今年度はたまたま最優秀チームがうちから出ましたが,ゼミの平均レベルはうちが最低でした。

低レベルに甘んじている理由の第1は指導する教員の教育研究レベルが低くく指導力がないことです。これは自覚しています。学部内で不人気ゼミになっているのも,教員の指導力がないことが見透かされているからでしょう。そのため,一部を除いて本気で勉強をしようと意気込む学生が入ってきません。他の人気ゼミに入れないから仕方なくという学生が例年多く志望してきます。他大学のゼミは,所属学部の平均学力レベルがうちの学部のそれよりも上回っている状況で,さらにその学部内で最も優秀な学生が集まっています。

低レベルに甘んじている理由の第2はうちの大学・学部の生ぬるい雰囲気です。うちのゼミでは,多くの大学のビジネス系ゼミで見られるオーソドックスな活動を行っています。取りたてて厳しいことはありません。課題をたくさん出しているわけでも,難解な専門書を読ませるわけでもありません。激しく叱咤することもありません。ただ,「あかんな,やり直し」と繰り返し言っている程度です。しかし,学部内では厳しいという風評になっています。うちが厳しいのではなく,学部の雰囲気が生ぬるい中で,一見大変そうに感じられるだけです。うちの大学では,学生(もしくは教職員)が自らの大学と学生を評して「のんびりしている」とよく指摘しますが,それは善意な表現で,実際にはぬるま湯で甘えているだけです。名古屋マーケティング・インカレにおいて見ていると,うちのゼミ生たちは「このぐらいでいいだろうと」簡単に高をくくってしまい,最後の追い込みの時期に追求を緩めがちです。それで許されてきたからです。

来年度は愛知淑徳大学の大塚ゼミのような高レベルのゼミが参加します。こうなるとうちのゼミはいよいよコンテストのお荷物になって埋没してしまいます。来年度は参加を取りやめたほうがいいとも考えています。愛知学院大からの参加ゼミがないことが問題ならば,マーケティング関連の他のゼミに参加してもらうようにお願いしようかとも考えています。しかし,名古屋マーケティング・インカレ参加を希望して入ってきたゼミ生が存在しているので,それは酷です。希望者のみの参加にとどめようかと考えています。ただそうすると,参加しないゼミ生は何をやるのかという問題が出てきます。ゼミが分裂します。これまた悩みは簡単には解決できません。

ただし,来年度は笑いの絶えない雰囲気づくりは徹底しようと考えています。深刻そうな雰囲気では,モチベーションが上がらず,勉学に駆り立てられないからです。
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お勧め本

2011年02月05日 | Weblog
春休み中,読書の機会があるならば,ゼミ生たちにはマーケティングに関する専門的な本も読んで欲しいと思います。せっかく大学で専門的な講義を聴いても,自分で進んで関連する内容の文献を読まなくては,専門知識が定着しません。

ここではお勧めの専門書を紹介します。ただ,あまりに難解な内容では,理解することができず,時間の無駄になってしまいますので,大学生の学力レベルで十分読みこなせるものを紹介します。激安商法や原材料価格高騰など,昨今価格に関するニュースを目にすることが多いので,それに関連する本です。

第1は,エレン・ラペル・シェル『価格戦争は暴走する』筑摩書房。これは,近年あらゆる消費財に広がってきた低価格化現象を取り上げて,その実現の仕組み,消費者の購買心理,産業や経済全体に及ぼす影響を説明しています。激安商法の創始者たちという章では,現在の小売業界を席巻しているディスカウント・ストアの仕組みと経営史を簡単に解説しています。こうして価格にだまされるという章では,脳科学や心理学の知見を用いて,安売りがどのように人々を魅了するのか説明しています。ますます貧しくなる生活という章では,安売りを実現するための企業のコスト削減努力が労働コストの引き下げにも及び,賃金の引き下げによって私たちが貧しくなってきた状況を説明しています。安い食べ物の落とし穴という章では,安売りされている商品の危険性を指摘しています。

この本(訳本)の原題は Cheap:The High Cost of Discount Culture です。安売りがもたらす高い代償という意味ですが,これを読むと安売り商品を買うことは実は高くつくことが理解できます。無駄な出費をし,危険な商品を入手するという意味で売買面で我々は得をしているとはいえないことが分かります。そして,低価格化が我々の生活を破壊して,社会全体で大きな犠牲を払うことになっているかもしれないことも分かります。まさに今の我々の経済のあり方を警告しています。

第2は,大崎孝徳『プレミアムの法則』同文舘。この本は,低価格化が進行する現在,あえて高く売ることができる商品のマーケティングに関心を寄せ,同じカテゴリーの中で高価格を維持している商品の事例を分析して,高価格マーケティングの法則性を導き出しています。分析している事例は,フジパンの本仕込,サントリーのプレミアム・モルツ,花王のアジエンス,トヨタのレクサスなど我々におなじみの「ちょっといい商品」です。分析から,消費者ニーズを捉えつつも,消費者の想定を大きく超えた品質が実現されていること,その結果機能的価値がきちんと実現されているので明確なメッセージの広告が展開されていること,企業においてトップの強いリーダーシップや全社一丸体制が見えることなどを導き出しています。

著者の大崎先生は名古屋マーケティング・インカレを一緒に運営している仲間です。仲間の本を推薦するのは,仲間ほめということでほめ言葉に信憑性がないと感じられるのかもしれませんが,実際に読んでみると事例収集に多大な労力を傾たことが分かり感心します。面白そうな事例をつまみ食いして読むだけでも学ぶことが多いといえます。うちのゼミ生にはおなじみの先生が書かれた本なので,とくに注目して欲しいと思います。
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