愛知学院大学青木ゼミのブログ

愛知学院大学商学部青木ゼミの活動を報告するためのブログです。

読むべき本

2021年06月13日 | Weblog
最近、これぞマーケティングの好事例紹介書と思える本を読みました。飯田結太『浅草かっぱ橋商店街リアル店舗の奇蹟』プレジデント社、2021年です。

この本は、東京浅草かっぱ橋にある料理道具の専門店「飯田屋」が苦闘を重ねて、日本各地のみならず海外からも顧客が多数駆けつける繁盛店になるまでの軌跡を取り上げています。親から店を引き継いだ6代目の経営者が失敗を重ねた末にたどり着いた戦略を経験談として詳細に語っています。

引き継いだ当初は、飲食業に関わる商品を何でも扱う中小卸売店でした。意気込んで安売りに走りましたが、あえなく失敗。それから脱却するために、料理の道具という領域に品揃えを絞りこみ、料理をする人に顧客層も絞り込みました。従来は卸売業として、プロの飲食店経営者・従業員をターゲットにしていたのを、料理をするプロと一般消費者をターゲットにし、卸売に加え小売も積極的に行うようにしました。そして、経営者自らが料理道具の専門知識を高め、専門性を武器にして価格競争を止め、卸売と小売を分けず、従来行われていた価格交渉をなくしました。

その後、在庫回転率の悪さを気にせず、多様なニーズに応えるべく、1アイテム1陳列として多様な料理道具(他では扱われないもの含む)を品揃えるようになります。アマゾンのようなインターネット通販で実現しているロングテールを小さな実店舗で料理道具に限って実現します。飯田屋に行けば本当に欲しいものが見つかるという状態にするということです。さらに、顧客を大切にするため、売上ノルマをなくし、「売らない」ことを方針にし、一番相談に行きたくなる店にするといいます。「喜ばせ業」として、接客に注力し、1人の顧客に160時間まで使ってもよいという方針を打ち出します。とにかく顧客の困ったこと解決し、笑顔を見せてもらえることに邁進します。

小売マーケティングにおける差別化とはどうあるべきかがこの本には詰まっています。顧客満足を実現するため接客や品揃えの在り方のモデルの一つを示しています。

マーケティングを語るうえで重要な顧客満足(customer satisfaction)の実現について重大なことは従業員の顧客対応。その実現には従業員満足(employee satisfaction)が必要であることもこの本では示しています。過去、経営者が独善に陥り、自分は頑張っているのに従業員は頑張っていないと決めつけて彼らをしかりつけ、その自主性を重んじなかったため離職が続いたことを記しています。社長と一緒に働きたくないから辞めると言われた衝撃を語っています。それを反省し、従業員が働きやすい職場環境(人間関係)の実現に注力するようになり、そのため従業員個人の幸福感や強みを把握すべく自己紹介カードを書いてもらったり、朝礼で感謝を述べ合うことにしたりと様々工夫をするようになった経緯を語っています。

具体的な内容はこの本を読んで知ってください。マーケティングを専攻するうちのゼミ生は必読です。顧客満足を徹底して追求したならば、自然と商品が売れていく。そういうマーケティングの理想を本当に実現するためには何をすべきなのか考えるきっかけを与えてくれます。
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