今年の夏は友人二人の墓参りをしたい。
まず新潟へ来る途中に福井市にS君の墓を訪
ねた。
墓は無く、家にぽつんと置かれた骨壺の中に
彼はいた。
阿弥陀経をあげた。
写真の彼はなんとも言えない顔をしていた。
ん?
そう、彼は世の中の仕来たりにうとい、という
より、当たり前のことを無視する性格だった。
私がお経をあげるものだから、困惑したに違い
ない。「そんなことして、何の意味がある?」
しかしおれは、これで区切りをつけたつもりだ。
「さよならS。お前もおれも、はんぱやったな」
いずれ、おれもあの世とやらへ行くが、Sとは会わ
ないだろう。
あの世とは、なにもない〈無〉の世界と信じている
から。