盃に住む龍の話。
コレクションというほどのものでな
いけれど、私はのんべいだったころ
盃を集めていた。
そのうちの一つ、九谷焼の杯に龍が
一匹住んでいた。
龍は普段目をつむって寝ているが、
盃に酒を注ぐと目を開ける。
「おう、今日は何の酒だ。相変わら
安い酒いれやがって」
龍は口が大層悪い。
富山の妹がかぶらずしを送ってきた。
かぶにブリの塩漬けをはさみ、こう
じで漬け込む。金沢、富山に伝わる
豪華な冬の珍味だ。
冬になるとそれぞれの家で漬け込む。
酒には最高のあてになる。
「うまい酒はないのか」と龍。
いや、この酒は**姫と言って加賀で
一番の銘酒なんだぞ。
「高い酒ならなんでもいいと思ってい
るんだろう。かぶらずしにはきつすぎ
る。++正宗あたりでいいだろう」
龍の奴好きなことをいうが、当たって
いるかも。++正宗は金沢の酒で、う
まいものがそろう金沢で決して料理を
負かすようなことをしない。分をわきま
えて料理をおいしくし、ほどよい酔い
を誘う。
「おう、飲め」
龍はぎろり、目を開いた。
(2018年のブログから)
コレクションというほどのものでな
いけれど、私はのんべいだったころ
盃を集めていた。
そのうちの一つ、九谷焼の杯に龍が
一匹住んでいた。
龍は普段目をつむって寝ているが、
盃に酒を注ぐと目を開ける。
「おう、今日は何の酒だ。相変わら
安い酒いれやがって」
龍は口が大層悪い。
富山の妹がかぶらずしを送ってきた。
かぶにブリの塩漬けをはさみ、こう
じで漬け込む。金沢、富山に伝わる
豪華な冬の珍味だ。
冬になるとそれぞれの家で漬け込む。
酒には最高のあてになる。
「うまい酒はないのか」と龍。
いや、この酒は**姫と言って加賀で
一番の銘酒なんだぞ。
「高い酒ならなんでもいいと思ってい
るんだろう。かぶらずしにはきつすぎ
る。++正宗あたりでいいだろう」
龍の奴好きなことをいうが、当たって
いるかも。++正宗は金沢の酒で、う
まいものがそろう金沢で決して料理を
負かすようなことをしない。分をわきま
えて料理をおいしくし、ほどよい酔い
を誘う。
「おう、飲め」
龍はぎろり、目を開いた。
(2018年のブログから)
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