人生アラカルト

どうせ過ごすなら楽しくね。

金石の浜で、むりやり煙草を吸ったが…

2013-01-26 23:44:14 | 日本海
「見たことのない顔やな、どこのもんや」
突然、二水の帽子をかぶった男が声をかけてきた。
場所は北陸鉄道旧金石線の電車内。
私は京都からの転校生で、2年生になったばかりで
あった。
声をかけてきた男は、見るからに、ばんから風で
あった。でも、なんとも親しみの持てる顔をして
いた。
私はすぐ気に入り、学校のこと、土地のこと聞い
たが、彼はなんでも教えてくれた。
それがIとの顔合わせだった。

Iは当時K姓であった。のちに「さっぼう」という
あだ名であることがわかった。
Kは犀川河口にある橋のたもとにある2軒のうち1軒
の家に住んでいた。彼は家から20分くらい歩いて
金石の駅から登校した。かれは度々、私が住んでい
た幸円寺に寄った。

先だって、私たち兄弟姉妹が集まった時、下の妹が
当時のことを覚えていた。
私の友人たちは幸円寺に来ると、案内を乞わずその
まま、二階の私の部屋へ来る。
Kも我が家のように訪れていた。
2人は大学受験という人生の一大事業にとりかかっ
ていた。
勉強をしたような、しなかったような、真剣さが足
りなかったように思う。
二人はよく夜を徹してしゃべった。二人とも金沢大
学を受験したが、ものの見事に落ちた。
彼は早くから「わしは医学部を目指す」といってい
た。2年目に受かったのは理学部だったので、いつ
方向転換したか分らない。

金石に金沢大学生がいた。その先輩が金石の浜に二
人を誘ってくれた。そして、慰めてくれた。その時、
1年下のU君も浜に来た。
Kと私はその時初めて煙草を吸った。苦かったが無
理やりのんだ。
このあと、私は新聞社に入ってからヘビースモーカ
ーになり、やめるのに10年かかった。Iはいまだ
に煙草から離れられないでいる。

Uのとしちゃんは秀才なので、一発で医学部に受か
った。彼は金石で親のあとを継いで医者になり、後
に県医師会長に上り詰めた。
理学部と法文学部と学問が違ったので、二人の関係
は二水の時のように濃くはないが、つかず離れず。
就職、結婚を経て子供の進学で世話をしたり、され
たり。二人の関係は続く。
そして、Iは長年の苦労が実って、黄綬褒章を受け
た。友人としてこんなうれしいことはない。私はI
のことを親友と思っている。死ぬまで付き合ってほ
しい男だ。M/Y

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