忙しそうだったので、名乗らずカウンター席にyさんと
私は座った。テーブルをはさんで調理場。客席はカウ
ンターに10席くらい、廊下をはさんで畳にテーブル席
が4つ。以前とまったく変わらない。以前は奥の調理場
で、おやじさんが、油ものを揚げていたが、その姿はな
かった。
生ビールを二つ注文。私は口をつけただけ。しばらく
yさんとおしゃべりしたあと、雑炊を頂く。これが滅法お
いしかった。今日は私がお祝いさせてもらう、とyさん
は私に勘定をさせない。
私は席を立つと、初めて「ykです」と言った。
それを聞くやいなや、女将は急いで私に寄って来て「や
っぱり、ykさんやった。そうやないかな、思うてました」
と手を握った。
9年ぶりの再会であった。
妻が亡くなった時、女将はマンションまで来てくれて、お
参りするやいなや、骨壷を胸に抱くと「しんどかったん?」
よしよし、と語りかけた。そして、「いっしょにご飯食べた時、
うなぎの骨がささって、お医者さんに取ってともろうた、いう
てはった」と思い出を話した。
当時は店でも、おばあちゃんが亡くなって不幸があった。
二人は仲がよかった。だから、妻が亡くなった時は、女将は
大層悲しんだ。
「娘さんはどないしたはる? 今もお一人で?」
店の玄関口で質問責めにあう。
「今度、また来るし」
「ぜひ、来てください」と見送る「くいしんぼ」の親子。
「行く所が増えましたな」とyさんぽつり。
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