日々是好舌

青柳新太郎のブログです。
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狸爺  田舎狸に  化かされた

2013年08月07日 14時32分40秒 | 日記
 現役時代の仕事仲間から久しぶりに電話があって、日曜日の9時半からいつもの場所でいつものメンバーでマージャンをやろうということになった。

 土曜日は自宅の生垣を刈り込んだりして良い汗をかいた。日曜日は恒例の町内溝浚いがあった。これは自宅横の側溝を掃除するだけだから、7時30分ころから作業に着手し、8時30分には作業を完了した。

 溝(どぶ)掃除が終わってからシャワーを浴びて入念に汗を流した。頭にもムースを塗ってブラシで髪を整えた。

 お気に入りのシャツにベストを着込んで普段よりはちょっとおめかしをして約束の時間に間に合うように出かけた。

 そうそう出かけるときに家内から「見せ金」を3万円ほど借りて財布に入れた。財布の中身は自分の小遣いと合わせて都合8万円ほどになった。

 博打(ばくち)に行くときは懐が寂しいと必ず負けてしまう。第一、負けてから金が無いというのでは見苦しい話である。

 さて、件(くだん)の雀荘に着くと私が一番乗りだった。雀荘のママとは予ねてからの顔なじみであるから、直ぐにコーヒーを振舞ってもらってしばらく寛いでいると、メンバーの面々が続々と到着した。

 一人は誘いの電話をよこした男で昔の仕事仲間である。その仕事というのは所謂「談合屋」という仕事で工事の受注業者を決める役目である。勿論、不法行為であることは百も承知のことだが、私は今から18年前にその世界から足を洗っているのですべて時効である。

 残る二人のメンバーのうち一人は工事関係の技術者だった人で、もう一人はその人の従兄弟で工業高校の教員だった人である。

 定刻の9時半にゲームが始まった。
 東南半局ごとのルールで25000点持ちの30000点返しである。

 最初の回は私のダントツで終局した。特に大きな役が出来た訳ではないのだが、何回かかけたリーチはツモれたし、裏ドラがよく乗った。

 面前であがったときには、赤い牌一牌につきチップ一枚がもらえるというルールもあるのでリーチをかけてツモるというのが一番有利である。

 私は赤い牌を3牌使った手を一発でツモって一度に12枚のチップを貰ったりしたのでチップだけでも30枚ほどのプラスになっていた。1枚500円だから15000円である。

 夜の7時ころ8回目が終局して清算したときには私が一人勝ちになっていた。

 さて、帰るときにメンバーの一人が私の車に同乗して一緒に帰ることになった。彼の自宅は私の勤務先の近所である。だから、道順はわかっていた。彼の自宅の前で同乗者を降ろしてから、何時もの帰り道へ引き返せばよかったのだが、この道をそのまま行けば大丈夫だという言葉にしたがって知らない道へ進入したのが間違いの元だった。

 前方に堤防が見えて行き止まりになったので慌てて左折したのだが、突然、道が狭くなった。しかし、前方には車が頻繁に往来しているのが見えるのである。

 道は狭いが車は通れるだけの幅はあったので強引に前に進んだ。やがて、さっき見えた道路のところへ辿り着いたのであるが、無情にもネットフェンスで出口を塞いであるではないか。広い道路まであと20センチで出れるのにフェンスが邪魔をして車はもう前へ進めない。元の入り口は見えないくらいに遠い。進退窮まったというのはまさにこんな事態であろう。

 運転席側のドアーは建物に当たって開かない。仕方が無いから助手席側から降りて、歩いて様子を見に戻る。助手席側は水路で深さは1メートル以上はありそうだ。運転席側も建物が近接している。

 ガックリと肩を落としてとぼとぼ歩いていると「あんた、こんなところで何しているの?」と窓から声をかけてくれたご婦人がいた。

 飼い犬があまりにも激しく鳴くので怪しく思って窓を開けたのだという。

 実はこの道へ迷い込んであそこで行き詰まって困っていますと窮状を訴えると、親切なご婦人は、それではここまでなんとかバックしてきて、私の家の庭を通って表の道路へ出なさいと言ってくれた。

 ご婦人の指図で息子さんがライトを持って車の後ろを見てくれてなんとか水路へ落ちずにご婦人のお宅の横までバックした。

 しかし、水路へかけた橋の部分は狭くて車のハンドルを切ると庭の花壇が壊れてしまうことが予想された。そのことをご婦人に告げると、そんなことは心配しなくていいから、兎に角ここから脱出しなさいと言ってくれた。

 そこで車のチエンジをローギアにいれてゆっくり庭へ乗り入れて車庫の中を通してもらって表の道路へ出ることができた。予想通り花壇の周りに並べてあったブロックが動いてしまった。

 その晩はお礼もそこそこに自宅へ戻ったのだが、なんだか後味が悪かった。

 もしかしたら狸に化かされたのではないかなどと馬鹿なことを考えたりもしたが、兎に角、明日になったら、地獄に仏のようなあのご婦人のところへお礼にあがろうと決めて寝床についた。

 翌日の月曜日、近所の菓子屋で銅鑼焼の菓子折りをしつらえてお礼に行って来た。ご婦人は若い頃にはさぞかし美人であったろうと思われるほど上品な感じであった。

 件(くだん)の道は田圃の畦道のような狭い通路で昼間だったら絶対に間違えて進入するようなところではない。きっと狸が見せ金をしてマージャンに勝った私を懲らしめるため化かしたのに違いないと改めて深く反省した次第である。

コメント (2)
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