あの青い空のように

限りなく澄んだ青空は、憧れそのものです。

『左手一本のシュート』を読んで

2011-05-23 10:11:43 | インポート

寄せられたコメントを通して,以前ブログでも取り上げた山梨県立日川高校バスケットボール部の田中正幸さんのことを紹介する本が小学館から出版される<企画・編集者,執筆者に心から感謝です>ことを知りました。

以前朝日新聞の記事を読んで,右半身麻痺という状態にありながら,懸命な努力と周りからの温かいサポートを受けながら,公式の試合で見事左手一本でシュートを決めた田中正幸さんのことを知った時のことを思い出します。記事を読み終わった時には,涙があふれ,熱い感動が込み上げてきましたが,本を読んでも同様の感動を味わいました。

そして,田中正幸という人間のすばらしさはもちろんのこと,彼をサポートした周りの人々が何と心が温かくすばらしい人たちであったかを改めて実感することができました。

病院やリハビリの施設でお世話いただいた方々,小・中・高で所属したそれぞれのバスケットボール部の監督さんたち,中学校での担任の先生方,大好きなバスケットを通して強く心が結びついた仲間たち,いつも身近にいて彼を温かく見守り支えてくれたお母さんや家族。

それぞれがある時は,良き理解者や指導者として関わり,熱烈なサポーターとして,彼を支えてきたんですね。

そして,田中さん自身も常にまわりの人への感謝を忘れませんでした。

『あの日から,僕の人生は変わったんです。自信がついたし,心の底から人に感謝することができるようになった。人は人に支えられてるんだって。あの日の出来事は,僕がまわりの人に支えられて生かされていることを忘れないために,神様が僕にくれた贈り物だって思っています。』

あの左手一本で決めたシュートは,彼と関わり彼を支えたたくさんの人々の熱い思いが実を結んだ最高のシュートであったんですね。

田中さんの大好きな曲に,モンゴル800の歌う『あなたに』という曲があります。特に出だしの「人にやさしくされたとき 自分の小ささを知りました」というところとかが好きで,すごく元気づけられ,いつもまわりに支えられていたんで,ああ本当にそうだなって思ったそうです。この曲は本来はラブソングということですが,私には詩の中で「あなた」にあたるものが,田中さんを支えている周りの人々であり,大好きなバスケットであり,自分の求める夢だったのではないかと思います。

    「あなたに」

    人にやさしくされたとき 自分の小ささを知りました

    あなた疑う心恥じて 信じましょう 心から

    流れゆく日々 その中で変わりゆくもの多すぎて

    揺るがないもの ただひとつ あなたへの想いは変わらない

    泣かないで 人々よ 悩める喜び感じよう

    気がつけば 悩んだ倍 あなたを大切に思う

    ほら 元通り以上だよ 気がつけば もう僕の腕の中

右半身麻痺に負けずに,決して揺らぐことなく,再びバスケットコートに立ってシュートすることを夢み信じながら,努力を続けてきた,田中さんの強い意志の源が,この詩の中に息づいているように感じます。

田中さんは,中学校の恩師(二宮先生:良き理解者であり温かい指導者)の依頼で,中学校3年生を対象に講演をします。その後半の一節です。

   「………… 僕は夢とは『自分自身の心と体を成長させてくれる大切なもの』だと考えま

    す。夢に向かって毎日精いっぱい頑張れるように『いつか,やがて,きっと』という言葉

    を僕は心の中で大切にしています。頑張っていれば必ず夢はかないます。だから,み

    んなにも勉強をしっかり頑張って高校に合格を果たして,その先にある輝く未来へ夢を

    もって努力していってほしいです。………」

二宮先生は,教師として生徒たちにいいものを与えたいと願い,田中さんに講演を依頼しました。

   『あのね,いいものって<本物>だと思っているんです。うそ偽りなく,自分自身の力で運

    命を切り開いた人。田中正幸は,間違いなく本物です。』

左手一本でシュートを決めた場面では,まるでその会場にいて,熱いサポーターの一人として応援しているような気持ちになり,入った瞬間には込み上げるものがあり,深い感動を覚えました。

今は,将来の夢を実現するため希望の大学に入り,頑張っているとのこと。

支えられた自分が,今度は支える側となって活躍する夢に向かって歩んでいくことと思います。

高校の3年間,田中さんを支えた日川高校バスケットボール部の古田監督は,

『正幸を支えようと懸命にやってきましたが,振り返ると,こちらのほうがあいつに支えられていたと思うんです』

と語っています。

私自身,この本を読んで,改めて生きる希望や夢,これからを生きる元気や力をもらったような気がし,田中正幸さんに心から感謝したいと思っています。

コメント
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