あの青い空のように

限りなく澄んだ青空は、憧れそのものです。

「ゆずり葉」の詩を読みながら

2011-08-19 09:43:08 | インポート

     ゆずり葉

                     河井 酔茗

子供たちよ。

これはゆずり葉の木です。

このゆずり葉は

新しい葉が出来ると

入り代わってふるい葉が落ちてしまうのです。

   こんなに厚い葉

   こんなに大きい葉でも

   新しい葉が出来ると無造作に落ちる

   新しい葉にいのちをゆずって……。

      子供たちよ。

      お前たちは何を欲しがらないでも

      すべてのものがお前たちにゆずられるのです。

      太陽の廻るかぎり

      ゆずられるものは絶えません。

         輝ける大都会も

         そっくりお前たちがゆずり受けるのです。

         読みきれないほどの書物も

         みんなお前たちの手に受取るのです。

         幸福なる子供たちよ

         お前たちの手はまだ小さいけれど……。

            世のお父さん,お母さんはたちは

            何一つ持ってゆかない。

            みんなお前たちにゆずっていくために

            いのちあるもの,よいもの,美しいものを,

            一生懸命に造っています。

               今,お前たちは気が付かないけれど

               ひとりでにいのちは延びる。

               鳥のようにうたい,花のように笑っている間に

               気が付いてきます。

                  そしたら子供たちよ。

                  もう一度ゆずり葉の木の下に立って

                  ゆずり葉を見る時が来るでしょう。

                         ………………

 「コクリコ坂から」についてのブログを書きながら,思い出した詩が「ゆずり葉」です。父から子へ,母から子へと受け継がれていくものを考えていて,思い出した詩です。

 主人公の海と俊は,『いのちあるもの,よいもの,うつくしいもの』を父母からゆずり受け,新たな『いのちあるもの,よいもの,うつくしいもの』を二人で造っていくのでしょう。宮崎吾朗さんも父の駿さんが造り続けたものをゆずり受け,新たな映画作品を造っていくのでしょう。 そうして造りあげたものを次の世代の子供たちがまたゆずり受け,新たなものが造られていく。

 世代を超えて受け継がれ(ゆずられ)新たなものが造られていく人間としての営み。その流れの中に今自分も身を置いているのだということを強く感じます。

 新聞によれば,福島県の子ども約1150人を対象にした甲状腺の内部被曝検査で,45%の子どもに被曝が確認されたとのことです。政府担当者は,問題のないレベルだと説明したそうですが,親にとっては我が子の将来を通して不安は消えることがないのではないかと思います。政府の担当者に宛てた福島の子どもの手紙に「何さいまで生きられますか?」という切実な思いが綴られていたとのこと。七夕飾りの短冊に「がんにならないように」と書いた子どももいました。

 子どもたちにゆずられるものは,『いのちあるもの,よいもの,うつくしいもの』であるべきです。決して「いのちを危うくするもの,悪いもの,汚染されたもの」であってはならないと思います。

 内部被曝した子どもたちの健康を継続的に見守り,万全な医療的ケアが受けられるような対応を強く願います。

 同時に,『いのちあるもの,よいもの,うつくしいもの』をしっかりと子どもたちにゆずることのできる,一人の親であり人間でありたいと思います。

 もう一度 子どもたちが,ゆずり葉の木を 希望に満ちて見上げることができるように…。

 

 

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