先進国株式が好調であります。NYダウは史上最高値を更新中ですし、日経平均株価も、もうすぐ3万円台に復帰しそう。2020年のコロナ禍で、先進国経済は軒並みマイナス成長となって、本来ならば株価は下落するはずだったのですが、中央銀行の連携が巧みであり、またジャブジャブの資金供給が相俟って、株価は高位安定となっている次第。
もちろん、株式の実質的な価値と、市場価値の間には少し乖離が生じている状況ですので、何かショックがあれば実質的な価値までの下落が発生してもおかしくはないのですが、ゼロ金利でかつ、ジャブジャブの資金供給によって、そうした危機も避けられているのが現状。そのうちに、脱炭素=カーボンニュートラルに関するイノベーション投資が盛り上がってくるので、景気も急回復、株価の実質的価値も市場価値に追いつくというのが、メインシナリオであります。
ただし、気をつけないといけないのは、脱炭素の投資とは、例えばクリーンエネルギー設備への投資は「既存設備の廃棄」を伴う、いわば二重投資。すなわち、まだ使える設備を捨てる訳ですから、そのコストを世間一般で負担しないといけません。また、新たなイノベーション投資であっても「すぐに収益化する投資」とは限りません。むしろ、無駄な投資も数多く発生するのがイノベーション投資。このコスト負担も国民全体で受けていかないといけません。
すなわち、脱炭素投資を続けていくと、サプライサイドをきっかけとしたコストプッシュのインフレが発生しやすいということ。これは実質金利や名目金利を上げる要因になりますので、先進国の長期金利は久しぶりに跳ね上がる可能性が相応にあるということです。
この金利上昇が、ある程度、先進国の中央銀行が制御できるスピードで起こるのであれば、そう心配する必要はありません。しかし、制御能力を超えるスピード感で発生すると、もう株式市場の急落は避けられない事態となります。特に、日本の場合、長期金利が数%上昇しただけで、大量の国債発行のコスト負担が膨れ上がりますので、国の財政問題が急浮上いたします。これは為替市場にも反映するので、ますます金利上昇を止められなくなる。
グリーン成長戦略は、大変重要で、希望に溢れる国家プロジェクトでありますが、このようなリスクシナリオも存在することを、投資家の皆さんはぜひお忘れなく。