11月3日(水)に名古屋市で行われた、将棋日本シリーズJT杯準決勝は、先手の藤井聡太三冠が永瀬王座を相手に99手で勝利。11月21日(日)に千葉市幕張メッセで行われる決勝戦へ駒を進めました。決勝戦の相手は、またもや豊島竜王。現在、竜王戦七番勝負を繰り広げている将棋界の頂上決戦は、早指しの日本一を決めるJT杯決勝でも、その雌雄を決することとなりました。
ところで、今回の準決勝、先んじて攻めに転じたのは、四強の一角にして、将棋界では「軍曹」の呼び名を持つ永瀬王座。自らに厳しく、誰よりも努力を重ねて、将棋のスタイルも、どんなに泥臭くなっても、とにかく勝つために前進を続ける胆力戦を得意とする棋風。
その「軍曹」が、『新手』で果敢に攻め込むところを、慌てずにしっかり受け止め、連続する攻め技に対して少しも怯まず、力技には力技で返し、大技には大技で返す柔軟な受けを続けて、結局、攻めた相手を駒損に追い込んで、そのまま優勢から勝勢へ寄り切って、まさに圧勝の内容でした。四強の一人 永瀬王座を相手に、「いなして押し出す」横綱相撲を取り切ってしまうのが、今の藤井聡太三冠の強さ。
現在進行中の竜王戦七番勝負でも、開幕から藤井三冠が3連勝を遂げていますが、あの豊島竜王をもってしても、今の藤井三冠から、スキらしいスキを見つけることが出来ないのが実情。どれだけ、実力が抜きんでているのか、もう止める棋士がいない状態になっています。
将棋AIですら、思いもよらないような、そんな手を繰り出す「創造力」「破壊力」を持つ棋士でないと、藤井聡太を破ることは難しいのだと思います。自分が想像するに、そんな棋士は全盛期の羽生善治以外は存在しないと考えます。
現在の将棋界の頂上対決を、虎視眈々と見つめ続け、快進撃を続ける藤井聡太という最強の怪物を、どうやって止めていくか。プロ棋士として、今の羽生善治は、そのことだけを考え続け、研究を続けている気がいたします。
A級順位戦よりも、王将戦挑戦者決定リーグに注力しているのは、その最たる証拠。今期のA級順位戦では、藤井聡太と対戦するチャンスはない一方で、王将戦挑戦者決定リーグでは、挑戦者をかけた藤井聡太との決戦が、いよいよ待ち構えています。王将戦挑戦者決定リーグでの羽生善治 対 藤井聡太、この一戦にも注目いたしましょう!