今年も、SELECT SALE の季節がやって参りました。
SELECT SALE とは、日本生産のサラブレッドの競り市の名称で、数ある競り市の中でも、最も高価なサラブレッドが出展される日本一のサラブレッド競り市であります。
ここには、ノーザンファーム、社台ファームなどの日本を代表する大牧場で育てられた1歳馬と当歳馬=0歳馬が取引されます。1億円や2億円を超える馬も数多く出てくることで有名な競り市ですが、今年も第1日目から、いきなり3億円を超す値段が付けられた馬が出て参りました。
それは、キタサンブラック産駒の1歳牡馬で、母親が米国GⅠを勝った Include という良血で、何と落札価格が3億1000万円。これに消費税10%が加算されるので、売買価格は3億4100万円ということになります。
種牡馬キタサンブラックは、初年度産駒から世界ランキングNO.1のイクイノックスを出し、2年目産駒からも皐月賞1着、日本ダービー2着のソールオリエンスという大物を出していますので、人気になるのも頷けますが、この種牡馬人気の栄枯盛衰は激しいものがあります。
例えば、初年度産駒からアーモンドアイ、ステルヴィオ、ダノンスマッシュというGⅠ馬を出して、2年目からもサートゥルナーリアという皐月賞馬を出したロードカナロアは、あっという間に種付け料が2000万円まで上昇。その時の1歳馬の競り市では、1億円を超える馬が続出いたしました。しかし、その後、ロードカナロア産駒は、やはりマイル以下が得意距離だということがハッキリすると種付け料も2000万円⇒1500万円⇒1200万円と低下。それに伴い、産駒の価格も低下気味へ。
同じく、初年度産駒から牝馬三冠馬デアリングタクト、2年目産駒から年度代表馬エフフォーリアを出したエピファネイアも、あっという間に種付け料が1800万円へ急上昇しましたが、産駒の4歳以降の勝率が急低下する傾向から、早熟の疑いがかけられて、種牡馬としても産駒としても人気に陰りを見せており、SELECT SALE でも落札額が今一つ伸びない傾向にあります。
というように、初年度・2年目の産駒の成績が良くても、その後、急速に『課題』が顕在化することもあります。したがって、3世代目、4世代目の1歳馬競り市で、3億円超の馬を買うのは、けっこうな冒険ということが出来ます。もちろん、サンデーサイレンスやディープインパクト、あるいはキングカメハメハという種牡馬たちの3世代目、4世代目というのは、そのあとも活躍馬が続出していたので、相応の値段で購入しても、結果的にはまだ割安だったということもあります。
ただ、それでも3億円を超す値段というのは、これを取り返すには、普通のGⅠ勝利くらいでは無理なので、引退したあとの種牡馬の価値や、繁殖牝馬としての価値も含めて値段を付けているということ。すなわち、無理やり、将来価値も上乗せして値段をつけていると言えます。
このあたり、企業買収=M&Aの時の値付けにも似ています。仲介業者の口車に乗って高い買い物をすると、結局、元を取ることが出来ずに酷い「減損」をせざるを得ないことになりますが、SELECT SALE も全く同じ。4億円とか、5億円も出した馬で、上手くいった事例をワタクシは知りません。
ちなみに、あのディープインパクトは、セレクトセールで7000万円で取引された馬でした。
競り市は、とにかく熱狂しがち。冷静に、冷静に・・