金融マーケットと馬に関する説法話

普段は資産運用ビジネスに身を置きながら、週末は競馬に明け暮れる老紳士の説法話であります。

【井上尚弥が目指す最終到達点③】 『軽量級完全制覇』と『史上最高のPFP』 <再掲>

2023-07-20 02:31:30 | ボクシング

 さて今回は、井上尚弥選手が目指す最終到達点シリーズの最終回。意識する過去のレジェンドとして、まず前回は、『ボクシング軽量級の完全制覇』を目指したファイティング原田選手のことを挙げました。そして、今回は『史上最高のPFP=パウンド・フォー・パウンド』と言える Roy Jones Jr.=ロイ・ジョーンズ・ジュニア選手を取り上げます。

 

 

 ロイ・ジョーンズ・ジュニアは、ソウル五輪のライトミドル級で銀メダル(本来は金メダル。ジャッジのレベルが酷く、五輪開催国の選手有利に判定)を獲得したあと、1989年にプロデビュー。1993年にはバーナード・ホプキンスとのIBFミドル級王座決定戦に勝って世界王座を獲得。1度の防衛後、1994年にはジェームズ・トニーが持つIBFスーパーミドル級王座に挑戦、これを大差の判定で破って二階級制覇。これを5度防衛した後、1996年にはマイク・マッカラムとのWBCライトヘビー級王座決定戦を大差判定勝ちで三階級制覇。このあとは、WBCからWBA、またIBFからWBA、WBCとライトヘビー級王者を同時に保持する期間が長く続いて、通算で世界ライトヘビー級を25度も防衛します。しかも、この間、2003年には当時のヘビー級最強のボクサー、WBAヘビー級チャンピオンのジョン・ルイスに挑戦ジョン・ルイス103㎏だったのに対して、ロイ・ジョーンズ・ジュニアはわずか88㎏で闘い、スピードでヘビー級チャンピオンを圧倒、12回大差の判定勝ちで、WBAヘビー級王座を獲得して四階級制覇を成し遂げています。

 ロイ・ジョーンズ・ジュニアは、ミドル級時代に、のちの史上最強のミドル級王者と言われるバーナード・ホプキンスに勝利しており、かつ、のちには当時のヘビー級最強のジョン・ルイスをも、スピードで圧倒する勝利を収めていたため、どの階級で闘っても、ボクシングの質が史上最高レベルで変わらないと言われて、まさに『史上最高のPFP=パウンド・フォー・パウンド』と呼ばれるボクサーでありました。

 

 今でこそ『PFP=パウンド・フォー・パウンド』とは、「全階級を通じて誰が最も優秀なボクサーであるかを、経歴と表層上の戦力評価で定めるランキング」とされていて、「体重が同一と仮定したら誰が一番強いかを決めるランキング」ではないと言われていますが、ロイ・ジョーンズ・ジュニアを指して『PFP=パウンド・フォー・パウンド』の第1位としていた2000年代では、やはり『体重を揃えたら、誰が1番強いか?』という意味で、この選手を挙げる人が多かったと思います。何しろ、ミドル級の体格とスピードで、最上級のヘビー級チャンピオンを圧倒するパフォーマンスを見せつけたのですから、皆がそう考えていたのも仕方ありません。

 

 井上尚弥選手が目指しているのは、この時のロイ・ジョーンズ・ジュニアのようなボクサーなのだと感じています。

 

 いや、とはいえ、別にバンタム級の体格とスピードで、ヘビー級王者を倒すことを目指している訳ではありません。むしろ、軽量級の中の最高位と思われるフェザー級タイトルを、あの時のジョン・ルイスのヘビー級タイトルに重ね合わせて、完全な内容で制覇しようとしているのだと思います。

 中量級の選手だったロベルト・デュランシュガー・レイ・レナード、あるいはオスカー・デラホーヤといったスーパースターが、ライト級から始まって、ウエルター級、そして最終的にはスーパーミドル級という中量級の最高位を目指す姿にも重なります。

 また井上尚弥選手は、形だけ五階級制覇をすれば良いと考えている訳ではなくて、強い相手を全て倒して「完全制覇」することを階級制覇と定義付けているようですから、その目指す高見は別次元であります。

 

 井上尚弥選手が目指す最終到達点はまだまだ先ではありますが、『ボクシング軽量級の完全制覇』『史上最高のPFP=パウンド・フォー・パウンド』という目標を定めた背景には、きっとファイティング原田選手とロイ・ジョーンズ・ジュニア選手の姿があるのだと私は考えております。ここからの井上尚弥選手の進化の過程を、我々もジックリと楽しみたいと思います。

 


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