来週7月25日に、いよいよ井上尚弥選手とWBC・WBOスーパーバンタム級王者フルトン選手との世紀の一戦が行われます。
当blogでは、井上尚弥選手を特集して<井上尚弥が目指す最終到達点①~③>を2022年12月21日~23日に、また<井上尚弥の挑戦①②>を2023年3月21日~22日に掲載いたしました。今週は、あらためてこの5編を再掲したいと存じます。
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プロボクシングの井上尚弥選手が、バンタム級初の世界4大タイトル統一を成し遂げました。
井上選手は、バンタム級の前には、WBCライトフライ級世界タイトルを1度防衛、WBOスーパーフライ級タイトルを8度防衛しており、あの時には、スーパーフライ級、フライ級にも全く敵がいない状態になっていました。そして今回のバンタム級統一戦でしたが、この前にはバンタム級のスーパートーナメントにも優勝して、あのレジェンドであるドネアにも2回勝利した段階で、すでにバンタム級には敵がいない状況でありました。
そして次は、スーパーバンタム級の世界に突入いたします。
井上尚弥選手の階級の上げ方は、相手しやすいチャンピオンを探して何階級を制覇したというような安易な方法は選ばず、強そうな相手は全て倒してから次の階級を目指すという、本来の意味での階級征服を成し遂げることを信条としています。そして、ここまでの強さを見てきた人は、スーパーバンタムも同様に征服してしまうだろうと期待している人が多いと思います。
しかし、自分はそれほど甘くはないと考えています。
バンタム級から約2㎏プラスのスーパーバンタム級、さらに約2㎏プラスのフェザー級という階級は、世界中のプロボクサーの選手層が最もぶ厚いクラスだからであります。同じ三階級制覇でも、選手層が薄いミニマム級(アジア系と一部の中米系しか選手がいないクラス)からフライ級までと、バンタム級からフェザー級までの三階級制覇では全く価値が異なるのです。
少し古いお話をしますが、ご容赦下さい。
1970年代に軽量級の黄金時代と言われた時期があって、その時の世界の軽量級王者には、歴史的に名を遺す名チャンピオン達が、数多くひしめいておりました。WBAジュニアフライ級には13回防衛の具志堅用高、WBCフライ級には14回防衛のミゲール・カント、WBCバンタム級にはキング・サラテと呼ばれた9回防衛のカルロス・サラテ、WBCスーパーバンタム級には同じくキング・ゴメスと呼ばれた17回防衛のフィルフレド・ゴメス、WBCフェザー級にはKOキングで9回防衛のサルバドル・サンチェス。(さらにこの上のスーパーフェザー級にはアレクシス・アルゲリョ、ライト級にはあのロベルト・デュランも居たのですが、今日はここまでにしておきます)
この時、バンタム級の無敵の王者であり、メキシコの英雄カルロス・サラテがプロ無敗のまま、1階級上のフィルフレド・ゴメスのスーパーバンタム級タイトルに挑戦したのです。対戦前はサラテの勝利を信じるファンが多かったようですが、結果は5R KO負けというゴメスの一方的な試合になりました。そして、そのあと、そのゴメスが同じくプロ無敗のまま、1階級上のサンチェスのフェザー級タイトルに挑戦したら、今度はゴメスが8R KO負けという結果になってしまいました。
自分の階級では全くの敵なしの歴史的チャンピオンが、約2㎏だけ上のタイトルに挑戦したら、ボロボロに倒されるという事態が続いたのです。このように、スーパーバンタム級やフェザー級というクラスは世界的に選手層が厚いため、井上尚弥選手と言えども簡単な圧勝劇を期待するのは危険であります。
ちなみに、井上尚弥選手の相手となるであろうWBC・WBOスーパーバンタム級王者のフルトン、WBA・IBFスーパーバンタム級王者のアフマダリエフともに無敗の王者であり、あのカルロス・サラテにとってのフィルフレド・ゴメスと全く同じ状況なのです。安易な楽観を持つには、非常に危険な相手ばかりなのです。(続く)