米国の中間選挙が目前となっております。
アメリカの分断を心配する声が増えていますが、赤い州(共和党を支持する傾向が強い州)と青い州(民主党を支持する傾向が強い州)をますます分断する事態を伝えるニュースが流れてきています。
元来、テキサス州とかアリゾナ州といったメキシコとの国境ラインが続く州には、国境を越えてきた不法移民が数多くコミュニティを作っており、地元では大きな問題となっております。また、カリブ諸国から海を漂流して渡ってくる不法移民が多いフロリダ州も同じ問題を抱えています。これらの多くが『赤い州』、すなわち共和党支持が強い州であります。
こうした州の州知事たちが、この夏以降、不法移民に対して寛容な政策を取り続けている『青い州』、すなわち民主党支持が強い地域のニューヨーク市やワシントンD.C.に向けて、大量の不法移民をバスに乗せて送り届けるという行為を続けています。
表面的には、「生活に苦しむ不法移民たちを寛容に受け入れる地域へ送り届ける」という「人道的措置」としていますが、明らかに、『赤い州』から『青い州』への嫌がらせであり、11月の中間選挙に向けてのデモンストレーションであります。結果として、ニューヨーク市やワシントンD.C.は、移民用シェルターの増設対応に追われているとのこと。
20年前であれば、こうした行為は、共和党支持者からも民主党支持者からも、「アメリカ的ではない」「デモクラシーに反する行為」として激しく非難されたと思いますが、今は違います。トランプが大統領に当選した2012年の頃から、不法移民たちによって貧困生活者に追いこまれた伝統的な白人労働者層の不満が爆発。その不満に乗じて当選したトランプ大統領に象徴されるように、今や、共和党の支持基盤の強固な部分は、不法移民に不満を持つ「伝統的な白人労働者層」となっており、この「伝統的な白人労働者層」が多くを占める『赤い州』で票を得るためには、このようなデモンストレーションが大きな効果を示す時代になってしまったのです。
ところで、ここ30年の間、アメリカと日本の成長力は段違いとなって、アメリカに大きな差をつけ続けられている状況ですが、この差の大きな原動力は、日本の人口は1億2千万人をピークに下がり始めているのに対して、アメリカの人口は当時の2億3千万人が今や3億4千万人まで増えていることにあります。これは移民の差であります。
移民は安い労働力になるだけではなく、中間層としての豊かな生活を手に入れるために、一所懸命に働き、多額のローンも許容しながら、家を買い、車を買って、国の消費を支える成長の源と言える存在となります。これがアメリカの国力を、そして民主主義を200年間支えてきた原動力であることを、米国民全体が理解していたはずなのに。
アメリカでは、2000年以降、国の成長率を高めよう高めようとするあまり、貧富の格差が大きくなり過ぎてしまいました。今までアメリカの経済と民主主義を永年支えてきた伝統的な白人労働者層を、冷たく置いてきぼりにしてしまったツケが、ここへ来て回ってきているのだと思います。
こんなことを続けていて、アメリカは中国の国家資本主義に打ち勝てるのでしょうか?
習近平の『台湾統一』宣言も危うい綱渡りに見えましたが、『赤い州』から『青い州』への不法移民の大量送届けの事態も、相当にヤバい状況。どちらも、世界のリーダーには相応しくない姿に見えてしまいます。