今年、64歳に到達しました。
昭和35年生まれの人間には、64歳から「特別支給の老齢厚生年金(=報酬比例部分のみ)」が支払われます。
ご案内のとおり、老齢厚生年金は65歳から支給が開始されるのが基本ですが、60歳支給だった時代からの激変緩和措置として、生まれた年によって段階的な「特別支給の老齢厚生年金」が支払われることになっています。昭和35年生まれの人間には、報酬比例部分のみ64歳時から支払われます。
ちなみに、この老齢厚生年金というのは、自動的に支払われる訳でなく、こちらから「支払いの申請手続」をしない限り、支払われることはありません。その手続きを行うために、まず年金機構から受給資格を得た人間に対して「申請用の書類」が届けられます。この書類に所定の記入を行った上で、戸籍謄本などの必要な証明資料を添付して申請をするのが手続きの流れになります。
「いやいや、自分はまだ働いているので、給与との併給制限(給与と年金の月額合計が50万円を超えると年金支給額が調整される)に引っかかるから、申請しても無駄」と、全く何もしない方が結構な数いらっしゃると思いますが、これは間違いなく手続きをしておいた方が良いと思います。
理由は以下の3つであります。
(1)国民年金部分(1階部分)には、給与との併給制限がないこと。
老齢厚生年金は、1階の国民年金部分と2階の報酬比例部分とかありますが、国民年金部分には併給制限がかかりません。したがって、国民年金部分だけでも受給するために「支払いの申請手続」を行う意味があるのです。この「申請手続」をしないで放っておくと、いつまで経っても国民年金部分の支払いが行われないだけでなく、5年経過した部分は時効で権利を失ってしまいます。
(2)特別支給の「支払い申請手続」を行っておけば、65歳になった時の申請手続が簡便になること。
特別支給の手続をあらかじめ済ませておけば、65歳時点には年金機構からは「支払い開始を確認するためだけのハガキ」が届くことになります。このハガキでは、1階の国民年金部分と2階の報酬比例部分の支給を予定通り受け取るか、あるいは受給開始を将来に繰り下げるかの選択に〇をつけるだけで返信すれば、もう手続は完了。非常に楽に受給開始となります。
(3)年金と給与の併給制限の計算は複雑。年金機構側が正確に計算すると、実は少額でも年金が出る場合があること。
併給制限の金額は適宜見直されていることや、給与金額は標準報酬月額で計算されることから、自分が想定している給与金額よりも少なくカウントされる場合がけっこうあります。そのため、少額ながら「特別支給」「本支給」ともに報酬比例部分が支払われるケースがままあります。そうなると、その影響を受けて加給年金などの他の項目にも影響が出て、配偶者が受け取れる年金額が増えることに繋がることもあり得ます。ですから、自分で勝手に「申請手続は無駄だ」と思い込むよりも、計算は年金機構側に任せて「支払い申請手続」だけは済ませておく方が得策なのです。
年金機構側の説明書類を見ても、YouTubeの専門サイトを見ても、「併給制限の計算は年金機構側で正確にやってくれるので、安心して申請手続だけはやっておいた方が良い」とはアドバイスしていません。
勝手に思い込んで申請手続をしないのは、だいたい高額所得者でしょうから、そんな人たちに特に親切にしなくてもよいということなのかもしれませんが、今まで多額の厚生年金保険料を納めてくれた貢献者たちなので、もう少し親切な説明をしてあげても良い気がいたします。