昨日の続きで、初年度種付料が異例の2000万円に設定された種牡馬イクイノックスをテーマにします。
いきなり種付料2000万円となれば、初年度産駒から「三冠馬」あるいは「牝馬三冠馬」を出すくらいでないと、「期待に応える」ことにはなりません。理由は以下のとおり。
まず、あのディープインパクトの種付料が2000万円になったのは、2012年に三冠牝馬ジェンティルドンナとダービー馬ディープブリランテが誕生、そして翌2013年にキズナが2年連続でダービーを制したあとの2014年からでした。また、ロードカナロアの種付料が2000万円となったのも、2018年に三冠牝馬アーモンドアイが誕生、翌2019年にサートゥルナーリアが皐月賞を制したあとの2020年でした。さらに、エピファネイアの種付料が1800万円に急上昇したのも、2020年に三冠牝馬デアリングタクトが誕生、翌2021年に年度代表馬エフフォーリアが出たあとの2022年からでした。
まだ産駒が1頭も生まれていない段階で、いきなり種付料が2000万円になるということが、どれだけ異常な事態かは、これでご理解頂けると思います。
そして、こうなると、何がなんでも初年度から「三冠馬」「三冠牝馬」、少なくとも「ダービー馬とオークス馬」を出そうと、生産界は『サンデーサイレンスの4×3インブリード』を盛んに試みることになります。何と言っても、イクイノックスはサンデーサイレンスの曾孫ですから、大量かつ高品質を誇るディープインパクト産駒の牝馬との掛け合わせで、『サンデーサイレンスの4×3インブリード』が実現できる種牡馬でありますから。
なお、産駒1頭に何億円も投じる馬主の方々からすれば、イクイノックス産駒全体のレベルなどに興味はなく、自分が持つ産駒が特別に化ける可能性を極大化して欲しいというニーズばかり。結果として、異常なほど、インブリード生産の比率が高くなることになるでしょう。
しかし・・
本blogでは、再三再四アラームを鳴らしているとおり、『サンデーサイレンスの4×3インブリード』の大量生産が、エピファネイア産駒の早熟化や低いAEI、同じくモーリス産駒の低いAEIの主原因になっている可能性があります。(当blogの2022年1月19日の記事、および2022年12月9日の記事に詳細を記しています。ご参照)
イクイノックスにも同様の影響が出る可能性がありますので、『サンデーサイレンスの4×3インブリード』は程々に留めて、出来るだけ、繁殖の王道であるアウトブリード中心の組合せを選択すべきだと考えます。
イクイノックスを大種牡馬にしていくためには、ここは非常に大事なポイントになると思います。社台スタリオンステーションの皆さん、すなわちノーザンファームの皆さん。ここは、是非に慎重にお考え下さい。イクイノックスの種牡馬成績を短期間でコケさせるような愚を犯さないように、お願いいたします。