蓼科をあとに高速で黒姫高原へ向かう
黒姫で宿を営むTさんから昨日メールが入っていた
「同宿の人たちがいます」「民泊の中学生です。一人が車いす使用で
母親付き添いです」「外での活動ができないと思うので
申し訳ないのですが、1分間の絵のワークショップ
私も含めてお願いできないでしょうか」
この時点では、一人の子の障害がかなり重いことは分かっているけれど
詳しい状況はTさんにもわかってなかったらしい
それでも引き受けるところはTさんらしい
そんなところも含めて関係者としては
Tさんのところに預かってもらうことに したのだろう
気楽な旅故、ちょっと気が重いことは確かだが
事情が分かって断るわけにもいかない
用意してもらうもの等連絡して向かった
実は「1分間で絵を描こう」というメソッドは家人が考えたもので
いろいろなところで実験的に行い、定期的に続けている人たちもいる
京都でこの後、5月の終わりにに行う展覧会で
「1分間の絵・トークと自身のパフォーマンス及びワークショップ」
を行うこと等をすでに案内していた
それでTさんも思いついたのだろう
美しい妙高山を眺めながら黒姫高原の宿に入ると
元気な女子中学生たちのいい声が迎えてくれた
思いがけない今夜のイベントをとっても楽しみにしていたらしい
ここでいう「民泊」というのは修学旅行等の一環として
所定の地域でグループに分かれペンションや民家等に宿泊して
いろいろ仕事を手伝ったり教えてもらったりする
体験型の取り組みのこと
この地域は各地の学校との連携が進みここ数年は
関東地域のこの学校の修学旅行生を受け入れているらしい
中学3年生女子、一人はチリから3年前に来たというLちゃん
バスケット部でがんばっている今日SUPで湖に落ちたというMちゃん
心臓の難病で車いす移動、階段もお母さんが背負って上る必要が
あるぐらいだがにこにこ顔でとっても明るいRちゃん3人のグループ
お母さんも明るくて気さくで前向きな方
この日1日ですっかりTさんと友達のようになっている
二人で仕事をしながらいろいろ話し、二人で何回も大笑いし
そして何回か泣いた… そんな感じ
みんなして作ったもの等、盛り付けもなかなか見事に仕上がった夕食を
みんなでワイワイ言いながら頂く
Tさんの酒粕を使った手作りパンも…
旅館のような一人鍋がセットされて一見和食風なのに
主食が「パン」って…これもTさんらしいと笑い合った
手作りのパンはもちろんこう見えてTさんのオリジナルっぽいお料理は
本当にいつも美味しいのだ
食事のあといよいよ「1分間の絵」の時間、お母さん、Tさんも一緒に…
「 思考を外す…1分間の絵」ということで「思考を外すとは…」
「思考を外すとどんなことが起きるか」「どんな感覚が芽生えるか」…
簡単な「お話」のあと A4の用紙を配ってさっそく1分間で描く
最初はコーヒーポット
描き終えたら自分のサインと日付を必ず入れる
次は玉ねぎ4個…描き終わってそれぞれの作品を並べて
それぞれの良さと特徴を見つけたり描いてみた感想等を出し合う
3枚目はだれでもいいから描いている仲間の「顔」を描く
「えーっー」「1分間で?」「無理ー!」とどこでもなるのだが
意外と描けるから不思議…
「楽しい!!」「もっと描きたい!!」中学生たちは口々に叫ぶのだが
今日はここでおしまいにする
本来ならせめて5枚~10枚くらいは描かせてあげたいのだが
意外と体力を使うのでRちゃんのことを考えると残念だけど今夜は限界か…
「1分間の絵のエネルギー」冷めやらぬ中でワイワイ盛り上がりながら
(たかが1分間されど1分間!不思議な感じでエネルギーが溢れるのだ)
昼間みんなで作ったというケーキやクッキーでお茶の時間…
Tさんにお土産に持ってきた手作りハーブティーを出す
「美味しい!」「これ何?初めての味!!」「すごーい!!」
と中学生たちにも好評だった
これで中学生たちはお休みタイム…
1分間の絵で描かれたRちゃんの絵は「筆圧がすごーい」と
Mちゃんがびっくりするぐらい力強かった!
3人がいろんな話をする中でRちゃんも
「合唱部に入って副部長やってます!」
とか自分からいろいろ話してくれた
今を力強く精いっぱい明るく朗らかに生きている
その内なる躍動感が「絵」からも伝わってきた
お母さんからこれまでのいきさつや今の医療では改善が難しいこと等
いろいろ聞いて今伝えられることを家人も交えてじっくり話した
「生命力がほんとに強いお子さんです」
「ご家族のいい関係が伝わってきます」
「3人姉妹、年子だという真ん中の妹さんに目を配ってあげて…」
「お姉さんの いないときに優しい言葉を一言でいいから」
「後ろから肩を抱いてあげるとか スキンシップが一番…」とか
具体的な話からちょっと難しい話も今伝えたいいろいろを…
「なんでわかるんですか?」
「私の後ろに何か見えてるんですか?」
何回も後ろを振り向いてみるお母さん…
中1の時本当に生死をさまよって生還してからRちゃんは今できること
今やりたいことを臆することなくチャレンジするようになったとか
「でもこの前もクラブ中に倒れて搬送されたんです…」
「姉を助けるためか同じクラブに入った妹がすぐ気づいて
知らせたからよかったんですけど…」
みんなとともに修学旅行に来られてよかった!民泊も体験できた!
結局この日は何事もなくお友達と同じ部屋で眠ることができた!
今を、1日1日を、大切に大切に
精いっぱい生きている親子の姿に胸が熱くなる…
朝、朝食の準備をする明るい元気な声が階下から聞こえていた
みんなで美味しい朝食を食べ終わったら予定より早く大型の観光バスが
迎えにきた 何とシャンデリアまでついている
「昨日から今日話してもらったことをこれからの生きる糧にして
頑張っていきます!」
とお母さんは挨拶されてバスに…
Lちゃん、Mちゃん、特にRちゃんは見えなくなるまで
バスの窓から力強く手を振っていた…
Tさんと一緒に、黒姫の新しくなった道の駅で懸案のバジル苗を
買うことができ 花とか他にもいろいろ買って…
「彼女たちと別れるのも寂しかったけれど、Yさんたちと分かれるのは
もっと寂しい…」とTさん
いつものようにお土産の手作りパンもたくさんもらって
黒姫に別れを告げる
名残惜しい信州を後に高速に乗り一路京都へ…
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