駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

山の見える風景

2010年09月17日 | 身辺記
 日本は山国なので、私と同じようにどちらかの方向に山並みが見える場所に住んで居られる方が多いだろう。東京名古屋大坂は例外で、例外の方が人口が多いのだが、日本の原風景は指呼の間に山並みと水と思っている。
 今朝玄関を出ると手前の山の中腹に雲が懸かって、日本画の様なちょっと幻想的な景色を見せていた。山肌はいつもは緑に見えるのだがやや青っぽく陰りがあり、まるでおぼこがお化粧をして急に女っぽく妖艶になったような感じがあった。
 突然の秋と言えばよいのか、一日で一ヶ月季節が進んだ。最初の研修医が丁寧にお礼を言い、見事なお辞儀をして病院へ帰っていった。民主党の党首選挙も終わり混迷必至のようだが、それは既に遠い昔のようで、初秋の青い山並みは世は全て事も無しと告げているかのようだ。
 いつもの懐かしい季節感は不思議な心の安らぎをもたらす。心のどこかで宇宙船地球号の安定した運行を感得するためだろうか。
 北杜夫だったか、幸せな老医の一日として、朝一杯のお茶を楽しみ午前中の二時間ばかりで五、六人の患者を心おきなく診察して、我が家に戻って庭を一回りした後、本を紐解くというような文章を読んだ記憶がある。そんな日は来ないと分かってはいるが、そんな日を夢見て五、六十人の患者さんを診ることととしよう。
 
コメント
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