駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

独り暮らしの世界

2017年08月04日 | 人生

           

 一人暮らしが増えている。入社数年の若い人、これは昔からのことだが、今は女性が加わったところが違う。この時期の一人暮らしはいろいろな意味で一人前になる準備期間の意味合いもあり、自然で有意義に見える。それに何某かの鬱屈が加わりもやもやした三十台半ばを過ぎると様相が違ってくる。まず、女性が減ってくる。結婚だけでなく、親(しばしば片親)との同居が増えるようだ。四十過ぎの一人暮らしは、男性の比率が増える、揺るがない感じというかスタイルが出てきて、これからも一人たぶんずっと独り暮らしの雰囲気が漂い始める。

 中に稀だが同性との二人り暮らし、男の方が多い感じがする、も出てくる。

 七十代八十代の独り暮らしは、連れ合いを亡くして、家もあることだしと子供と同居せず、そのまま一人で居る人が多い。一人で居るのは基本的に一人で暮らす能力があるからで、自立できなくなれば引き取られるか施設に入れられる。中には親子疎遠?な人も居て、男親と息子の組み合わせが多いのだが、弱ってきてもなかなか手が出て来ず、ケアマネの差配を必要とすることもある。

 やがて終わりが訪れる。この辺りのことは熱心なケアマネ、訪問看護師、私のように往診をしている医師でないと実態は中々分からない。警察官や救急隊員も断片的ではあるが、立ち会われることがあると思う。人に歴史ありというが、歴史的にこういう結末と言えば失礼で偉そうに聞こえるかもしれないが、自分も含めた誰もがたどり着いた結末を迎えることになる。生まれてくる時も終わる時も独りだからなどと言われる方が居るが、自覚的にはそうかもしれない?が、実際には肉親や他者が関わっていることが殆どで、そうした言い方にはちょっと違う感じもする。

 人間は弔いをする。なぜかは知らないが人間はそういう存在で、弔うことがなくなれば人間でなくなる気もする。独り暮らしと関係ないようで、ふとそんなことを思った。

コメント
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