駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

鰻重を戴く

2018年07月23日 | 旨い物

    

 万葉集にも夏痩せに鰻召しませと謳われている。万葉の昔から鰻は栄養満点と知られていたようだ。今のような蒲焼きと言う調理法が始まったのは江戸時代の中頃とされるが、誰が思いついたか、これ以上飯に会う調理法はないと思う。昨日は土用の丑の日二日遅れで、鰻を食べてきた。そういうことはないと言われるかもしれないが、土用の丑の日は注文が多すぎて味が落ちるのではないかと、いつも避けている。

 鰻は海で産卵するが川魚で、海のない故郷の岐阜でも、幼い時から時々ご馳走になってきた。子供心にも美味しく、鰻と聞けば心躍ったものだ。成人してからも帰省すると父や兄がじゃあ鰻でもと近所の川魚料理の料亭へ連れて行ってくれたものだ。

 懐に余裕ができた働き盛りには月に一回くらい食べていた。しかし、だんだん値が張るようになり、今では年に数回食べるだけの本当のご馳走になってしまった。うなぎ屋自体も数が減ったようで鰻専門店は市内に七、八軒と思う。ウナギの蒲焼きは地方によって背開き腹開き蒸す蒸さないと調理法に様々なバリエーションがある。自分は故郷の蒸さない蒲焼きが好みだ。そうはいっても江戸風や九州柳川風も嫌いではなく、美味しく戴く

 昨日訪れた店は、鰻専門店で座敷があり、床の間に軸が掛かり、小ぶりの庭を眺めながら待つことができる。時代の流れで待たせないために時間指定の予約制で、座敷でも椅子とテーブルの設えになっている。

 父も兄も亡くなり、故郷にあった蛙の鳴き声や青い水田もないが、縁あって移り住んだ土地で家内と二人、見事に焼きあがって照りのある鰻重を「美味しいね」と戴いたことだ。

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