海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

久辺3区下水処理施設問題

2009-08-29 22:50:36 | 米軍・自衛隊・基地問題
 8月27日の午後、「ティダの会」と「新基地建設問題を考える辺野古有志の会」は、名護市が久辺3区とキャンプ・シュワブ基地の下水処理施設を一体化させて建設しようとしていることに対し、それをやめて久辺3区だけの下水処理施設を造るよう申し入れを行った。
 前回8月14日の申し入れのあと、名護市は17日の臨時議会に上記の下水処理施設の事業案を提案したものの、議員から「調査研究に時間が必要」という異議が出され、提案を撤回することとなった。しかし、9月の定例議会で再提案するということで、「ティダの会」「辺野古有志の会」としては二回目の申し入れとなった。
 前回の申し入れの際、対応した名護市の玉城政策推進部長や具志堅水道部長らは、久辺3区(辺野古・豊原・久志)の人口は3000人程度であり、それだけの人口では下水処理施設を管理・維持できないので、V字型滑走路をもつ新基地ができると6000人に規模に膨れあがるキャンプ・シュワブ基地と一体化させて、下水処理施設を造る必要があると説明していた。
 ところが、「ティダの会」と「辺野古有志の会」が久辺3区に隣接する宜野座村の状況を調べたところ、同村ではすでに松田、惣慶、宜野座、漢那などの各区に4カ所の下水処理施設が建設され、1200人から3000人ほどの計画処理対象人口で稼働しているのである。もちろん、米軍基地との共用=一体化は行っていない。しかも、区の軍用地料を当てることによって住民の下水道料金の負担はゼロとなっている(ただし、今後は徴集の方向で検討中とのこと)。
 宜野座村の各区は久辺3区と同じように沖縄島北部東海岸にあり、自然環境や集落の規模・形態、米軍基地と隣接している状況などよく似通っている。宜野座村で各区ごとの下水処理施設がすでにできて稼働しているのに、どうして久辺3区では同じようにできないのか。
 驚くべきことは、今回の申し入れで明らかになったのだが、名護市当局は「ティダの会」と「辺野古有志の会」に指摘されて初めて宜野座村の下水処理施設のことを知ったという。申し入れの日程調整の際に宜野座村の資料を渡され、担当の職員があわてて宜野座村役場に行って話を聞いてきたというのだ。その職員も下水処理施設はまだ見ていない、と述べ、玉城政策推進部長や具志堅水道部長も今回初めて知ったと発言した。聞いていて呆れはててしまった。
 8月2日付の沖縄タイムスの記事によれば、名護市の計画している久辺3区とキャンプ・シュワブ基地の下水処理を一体化させる施設は、総事業費が70億円から100億円にもなるという。それだけの予算を使って事業を進めるというのに、名護市は何の調査も行っていなかったのだ。普通なら近隣の自治体や久辺3区と似たような地域の下水処理施設の状況を調べ、資料を収集してどのような処理施設が適切かを研究し、いくつかの案を作って比較検討しながら最終案を練り上げていくのではないか。しかし、名護市当局は何の調査もせず、宜野座村の下水処理施設のことも知らないまま、17日の臨時議会に同事業案を提案していたのである。
 玉城政策推進部長をはじめ対応した名護市職員からは、調査もなにもやっていない自らの怠慢を反省する言葉は一言も聞かれなかった。むしろ玉城政策推進部長の発言を聞いていると、辺野古への新基地建設を前提として、それと久辺3区の下水処理施設の建設を一体化させるという結論が最初にありきで、宜野座村のことなど知らなくてもいい、と言わんばかりであった。
 また、玉城政策推進部長は、地元(久辺3区)の要望だから…、という言葉をくり返していたが、久辺3区の区民の大半は新聞報道でこの事業案を知ったのであり、区長や行政委員から区民への説明はなされていない。一般社団法人キャンプ・シュワブ・サポート事業協会(CSS)と同じように、大半の区民は知らないところで、区長や行政委員などの一部で物事を決めているのである。
 70~100億円もの予算を使って下水処理施設を造ろうというのに、このような怠慢かついい加減なありようで事業を進めているのが、名護市当局の現状である。しかも、問題を指摘されても反省もしないで、9月定例議会に再提案しようとしている。島袋吉和市長をはじめ名護市当局のでたらめさは目に余る。

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1 コメント

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Unknown (かむじゃたん)
2009-09-01 15:11:51
ホントに行政のいいかげんさ、あるいは
国からの予算獲得をおのれの成果とする
ような態度はふざけています。
名護では、水面下で、来年早々の市長選
についても動いているのでしょうが、
かつての「わったー市長を選らぼう会」
のような、広範な議論をふまえた候補者が
求められます。
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