都心だというのに、この地には平和な風が吹いていた。
爽やかな5月の午後
数人の男たちが
グミの実取りに興じている。
3階より高い建物がない広大な敷地には、クヌギの大木が広がる。
ここでは自然と人との共生を、頑固なまでに守っているのだろう。
私の好きな光景でもある。
研究施設というと、コンクリートの高層な建屋が所狭しと並ぶ。
そんなジャングルの中で、多くの人がうごめき、よくわからないものが作り出されていく。
しかし、ここは違う。
建屋は低い方がよい。
できれば周辺の樹木に隠れるくらいがよい。
贅沢かもしれないが、私の理想とする空間だ。
小さな建屋をつなぐようにして研究機関の複合体ができる。
窓を開ければ樹木が見え、風が吹けばそのささやきが聞ける。
昨夜、高知から一葉の写真が届いた。
南国の木々は、すでに緑を深め、夏を予感させる。
もう少ししたら
また暑い日々が続く。
四季折々の風情を愛で
気温の変化に負けないで
もう少し生きていきたい。
できれば、ちょっとでいいから、この大地に自分の生き様を刻みたい。
5月の風に揺らぐ木々の緑から
生命の豊かさと強さを教えてもらった。