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トサノクロムヨウラン・1~開花

 ラン科クロムヨウラン属の「トサノクロムヨウラン(土佐の黒無葉蘭)」。ベニタケ属やチチタケ属に寄生する菌従属栄養植物で、光が届かない暗い林床に生育する。草丈は15~30センチになり上部に2~2.5センチの花を数個咲かせる。
 さて同属の開花しないクロムヨウランと開花するトサノクロムヨウランについて前ブログPart5で説明したが、復習のためにもう一度掲載しておこう。
 2018年(平成30年)1月神戸大学大学院理学研究科は、それまで図鑑などで取り上げられていた開花するクロムヨウランはトサノクロムヨウランであり、宮崎県、高知県、和歌山県などの限られた地域に分布する本当のクロムヨウランは固い蕾のまま開花せず自家受粉で結実するという特殊な生態であることを明らかにした。
 もともとクロムヨウランは1931年(昭和6年)に本田正次氏が和歌山県西牟婁郡岩田町で採取し発表した種で『花ハ正開セズ、花被ハ相接シテ円筒状ヲナス』と説明している。トサノクロムヨウランは全国的に分布しているが、高知県では花を咲かせない本当のクロムヨウランのほうが普通に見られるのが話をややこしくしている。
 1981年(昭和56年)に高知大学の故澤進一郎助教授が、高知市で採取した開花するほうの種をトサノクロムヨウランとして発表したが、この発表と前後して複数の図鑑で開花する種をクロムヨウランとして紹介した。そこでクロムヨウランは開花するものだという認識が一般に広まり、澤氏の見解は数十年間埋もれていた。私が持っている図鑑でもクロムヨウランはしっかり開花している。
 神戸大学の研究グループは『①クロムヨウラン自体は開花しない種に名付けられた』『②高知市で採取されたトサノクロムヨウランは他の地域に分布している開花する種と形態的差異が無い』として、澤氏の見解が正しいと結論付けた。
 菌従属栄養植物は光合成を放棄してキノコやカビの菌糸を根に取り込みそれらから養分を得て生きているが、クロムヨウランは光の届かない暗い林床に生育するためハチやチョウなど訪れる昆虫も無く、そのため開花することまで放棄してエネルギー消費を最小限にしていったようだ。
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ホルトノキ・4~腺体

 陵南公園に植栽されている「ホルトノキ」。ホルトノキ科ホルトノキ属の常緑高木で先日開花したところを見たが改めて花を観察してみた。花径は1センチほどで5枚の花弁の先端は細かく裂けている。雄蕊は多数あり黄色から黒褐色に変化していく。雄蕊が落ちると基部のオレンジ色の腺体が目立つようになる。花が下向きに咲くのは開花期が梅雨時で花粉が流されないようにしているのだろう。
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ミッキーマウスノキ・1~果実

 長池公園“自然館”の中庭で見られる「ミッキーマウスノキ」。オクナ科オクナ属の常緑低木で熱帯アフリカ原産。その呼び名は通称で正式な名は「オクナ・セルラタ(Ochna serulata)」となる。3年前に沖縄県恩納村の“かりゆしの森”で初めて見たが、その時は果実が熟す前で名前を調べるのにずいぶん苦労した。花期は4月頃だが残念ながらいまだにその黄色い花を見ていない。来春は忘れずに観察しよう。赤い部分は萼片で花期は緑色をしている。写真の後方に見える若い果実は緑色で熟すと黒くなる。この黒い果実をミッキーマウスの耳に見立てたのだろう。ニガキの果実もミッキーマウスに見えることがある。
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