現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

初恋~お父さん、チビがいなくなりました

2019-05-14 15:42:46 | 映画
 年取った愛猫がいなくなったのをきっかけに、離婚の危機を迎える老夫婦の話です。
 コミックスを原作とした娯楽作(ラストですべてが一見まるく収まるご都合主義のハッピーエンド)なのでシビアには言いたくないのですが、あまりにリアリティがないので愕然としました。
 仕事人間で亭主関白な夫とそれに長年仕えてきた妻という設定とその描き方(帰ってきた夫の靴下を妻が脱がせる、夫婦で会話がない様子など)は、驚くほどステレオタイプです。
 さらに言えば、同じステレオタイプを描くにしても、主人公たちの年齢(役者さんたちの年齢から考えると七十代後半なのですが、それにしては子どもたちの設定が若すぎる(独身の末娘は37歳)ので、七十代前半か?)からすると、かなり古すぎる夫婦関係です。
 私の亡くなった両親は生きていれば102歳と95歳ですが、主人公たちは両親の夫婦関係よりさらに古めかしく感じられました。
 さらに、せっかくの夫婦の危機(遅すぎる感じですが)も、夫が妻に「お前が初恋の相手だ」と打ち明けて、猫が帰ってくるだけであいまい化されてしまいます。
 妻の夫婦関係への疑問、夫の認知症の始まりを思わせるシーン、夫が妻の先輩とずっと密会(といってもプラトニックなようですが)していた理由など、大きな問題はすべて棚送りのまま情緒的な解決(?)がなされます。
 末娘の結婚観や労働観も含めて、監督の老人問題への意識やジェンダー観自体が、かなり時代遅れな感じです。
 それにしても、ラストに笠置シヅ子の歌を流したセンスはいかがなものでしょうか?
 笠置シヅ子の全盛時代は戦争直後で、主人公たちが出会う回想シーンの時代(1960年代後半か?)には、とっくに(1957年ごろ)事実上歌手を引退していました。
 どうせ流すなら、妻役の倍賞千恵子の大ヒット曲「下町の太陽」(これも時代設定より若干古い1963年の作品ですが)の方がはるかにましでしょう。
 



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