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現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

白土三平「クズレの巻」カムイ伝所収

2019-05-21 18:33:18 | コミックス
 異常気象による飢饉により、日置藩は壊滅的な状況を迎えます。
 飢餓状態の農民たちは全藩一揆にまで追い詰められますが、権力者側(目付たち)は万全の態勢で待ち構えています。
 勝ち目のない全藩一揆に対する主要な登場人物たちの関わりは、大きく分かれます。
 草加竜之進(武士)は全藩一揆を主導して、この機会に一気に権力者側の転覆を図ろうとします。
 苔丸(スダレ、元百姓の)は、全藩一揆もやむを得ないという立場です。
 正助(百姓)は、夢屋七兵衛(商人)の協力を得て百姓たちを逃散(別の土地へ集団で逃げる)させようとします。
 抜け忍になったカムイ(元の忍者)は、権力者側に命を狙われている正助(カムイの姉ナナは正助の妻)を陰から守ります。
 一揆の代わりに逃散という発想は面白いのですが、これだけ大掛かりな逃散をさせるプロセスがほとんど描かれてないので、かなりご都合主義な感じはします。
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神沢利子「ビー玉の骨」いないいないばあや所収

2019-05-21 17:18:18 | 作品論
 誰もが幼い時に考えたことがある「自分はこの家の本当の子ではないのではないか?」という疑問。
 この作品では、そんな子どもの心の動きを鮮やかに描いています。
 「お前は橋の下で拾われたんだ」というからかい、自分だけが両親に似てないという不安。
 最後に、主人公がとうさんと似ているささやかな特徴を発見してホッとする場面では、読者も自分の体験と重ねあわせて共感できることでしょう。
 また、兄弟の多い家の子が、子どものいないおじさんやおばさんに、「うちの子になってよ」とからかわれるのも、小さいころにしばしば経験することです。
 それを描いた児童文学の傑作は、アグネス・ザッパーの「愛の一家」(その記事を参照してください)でしょう。
 もっとも、「愛の一家」の兄弟は本作より仲が良く、おじさんにもらわれそうになる男の子を皆で団結して守ります。

いないいないばあや (岩波少年少女の本)
クリエーター情報なし
岩波書店


愛の一家 (福音館文庫 物語)
クリエーター情報なし
福音館書店
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