今回のセミナーのねらいは、案内文によると以下の通りです。
「リュミエール兄弟による映画(シネマトグラフ)の発明から一年後に生まれた宮沢賢治の生涯は、映画が手品めいた見せ物からモンタージュの発展をへてトーキーにいたる歴史とぴたりと重なる。賢治はどのような映画の影響を受けたのか。映画はどのような影響を文学に与えたのか。そして文学はどのような影響を映画に与えうるのか。
あえて原作の映画化(アダプテーション)という主題をはずし、映画と文学の関係を問う。」
コーディネーターの岡村民夫の冒頭挨拶によると、今回の題目に適した人ということで、ジブリの宮崎駿に依頼したが、映画作成中なので断られたとのことでした。
次に、宮沢賢治研究 Annual Vol.22に掲載された蔡 宜静の論文を中心にやるということで、以下の講演内容になったとの説明がありました。
講演① 『氷河鼠の毛皮』の〈鉄道〉空間の設定と列車映画との関連
蔡 宜静(さい せんせい)
(台湾康寧大学応用外国語学科准教授。日本近代文学・日本語教育・台湾の日本映画受容史)
1975年、台湾台中市に生まれる。新潟大学大学院現代社会文化研究科卒業。台湾康寧
大学応用外国語学科准教授。日本近代文学・日本語教育・台湾の日本映画受容史。
著書『日本近代文学と活動写真の比較研究』(致良出版社、2009年)、『萩原朔太郎、
堀ロ大学、宮沢賢治および北川冬彦における映画の感受性』(康寧大学応用日本語学科出
版、2011年)。
2011年から、早福田大学演劇映像学連携研究拠点テーマ研究海外研究分担者。
現在、早稲田大学演劇博物館訪問学者。
講演② サイレント映画と近代文学者たち
安 智史 (やす さとしI
(愛知大学短期大学部教授・日本近代文学。日本近代詩、文化・メディア論)
1964年、茨城県生まれ。立教大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。
愛知大字短大部教授。日本近代文学・文化。
著書に萩原朔太郎というメディア一ひき裂かれる近代/詩人』(森話社、2008年)。
編著に『新編 丸山薫全集』(角川学芸出坂、2009年)、『コレクション・モダン都市文
化 第75巻 歌謡曲』(ゆまに書房、2011年)。共著に『和歌をひらく第5卷 帝国の和歌』(岩波書店、2006年)。論文に「三島由紀夫VS.増村保造一映画「からっ風野郎」とその後の三島の身体イメージをめぐって」(『大衆文化』第7号、2012年)などがある。
また2006年宮沢翼冶冬季セミナーでは、シンポジウム「宮沢賢治と温泉」のパネリス卜を務めた。
講演③ 宮沢賢治と映画 アダプテーションではなく……
岡村民夫(おかむら たみお)
(法政大学国際文化学部教授・表象文化論。映画評論)
1961年、横浜市に生まれる。立教大学大学院文学研究科单位取得満期退学。法政大学国際文化学部教授。表象文化論、場所論。
著書『旅するニーチェ リゾ一卜の哲学』(白水社、2004年)、『イーハ卜一ブ温泉学』(みすず書房、2008年)、『柳田国男のスイス一渡欧体験と一国民俗学』など。訳書『デュラス、映画を語る』(みすず書房、2003年)、共訳『シネマ2*時間イメージ』(法政大学出版局、2006年)など。
第19回(2009年)宮沢賢治奨勋賞受賞。宮沢賢治学会イーハ卜ーブセンターの花巻での映画上映をたびたびコーディネー卜している。現在、宮沢賢治学会イーバ卜一フセンター副代表理事。
パネルディスカッション・質疑応答
プレゼンテーションは題目のせいもあってか、パワーポイントやDVDやブルーレイディスクをうまく使って、視覚にも十分に訴えかけるものでした。
また、講演者をサポートするパソコンなどのオペレーターがいて、プレゼンテーションはスムーズに行われました。
このあたりは、レジュメを読むだけのことが多い日本児童文学学会の大会などでも見習った方がいいと思いました。
最後の挨拶で宮沢賢治学会の代表理事が言っていたように、宮沢賢治の研究者だけでなく、新旧の映画に関心がある人にも興味深い内容だったので、もっと学会外部にも宣伝して、多くの人に参加してもらった方が良かったと思いました(しかも、懇親会に参加しなければ会員以外でも無料でした)。
宮沢賢治―驚異の想像力 その源泉と多様性 | |
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