現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

パーフェクト デイズ

2024-12-27 09:26:21 | 映画

2023年公開の日本・ドイツ合作映画です。

役所広司の一人芝居といっていいほど、彼の表情や仕草による演技が圧倒的で、カンヌ国際映画祭で主演男優賞を獲得したのも納得できます。

渋谷区の公衆トイレ(非常に芸術的でユニークなトイレがたくさん登場します)を舞台にしています。

もともとこの映画は、渋谷区内17か所の公共トイレを刷新する「THE TOKYO TOILET」というプロジェクトをPRするために企画されたものです。

監督のヴィム・ベンダースが、日本滞在時に接した折り目正しいサービスや公共の場所の清潔さに感銘を受け、長篇作品として再構想し、彼が日本の街の特徴と考えた「職人意識」「責任感」を体現する存在として主人公を位置づけ、彼に「平山」という名前を与えました。

この名前は、監督が敬愛する小津安二郎監督が、「東京物語」で笠智衆が演じた父親役を初めとして繰り返し使ったものです。

映画も、小津作品を思わせるような日本の美しい風景(隅田川や神社の庭の樹木など)が描かれています。

映画は、平山の規則正しい毎日のルーチン(一人暮らしでの身支度、育てているひこばえ(昼食をとる神社の大木から、許可を得て持ってきています)の世話、軽自動車による早朝のドライブ(アパートの外にある自動販売機で買った缶コーヒーを飲みながら、カセットテープで古い洋楽を聴いています)、几帳面で誠実なトイレ掃除、仕事を終えた後の銭湯、浅草の地下街にある焼きそば屋でのお酒、フィルムを使うカメラでの写真撮影、就寝前の文庫本による読書など)を描きながら、そこにわずかにかかわってくる人たちとの関係も描いていきます。

同僚の調子のいい男、彼が好きなガールズバーの女の子、家出してきた主人公の姪、それを迎えに来た主人公の妹、休日(これもルーチンがあって、掃除をまとめてやり、コインランドリーでの洗濯、写真の現像の依頼と受取り、古本屋で文庫本を買う)に行くスナックのママ(石川さゆりが演じていて主人公とはいい雰囲気なのですが、歌がうますぎるのが難点です)、ママの元夫(三浦正和が演じていてこれもいい感じです)などです。

主人公は、普段は非常に無口ですが、姪やママやその元夫とは、ちゃんと会話ができます。

ラストは、元夫(癌が転移しています)からママを託されて、主人公にとってはある意味ハッピーエンドな感じです。

主人公を初めとして、芸達者ばかりの出演者が、優れた監督の演出で確固たる世界を作り上げています。

アカデミー賞の外国語映画賞の受賞は逃しましたが、一見の価値のある映画だと思います。

 

 

 


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