さて、本日は、昨日の続きで、
公証週間特別講演会「安心できる人生のエンディングの設計」(その2)です。
昨日は、相続と遺言について、講演内容をまとめてみました。
簡単に振り返ると、
相続とは、財産にかかる権利・義務をスムーズにバトンタッチすることで、
遺言を作っておけば、比較的スムーズにいくものですが、
遺言がないと、相続人全員一致での遺産分割、一致しなければ、家庭裁判所での調停・審判に、時間、費用、エネルギーを費すことになります(親族間の関係悪化も招きますね)。
ただし、遺言に法的な効力を持たせるには、専門的な様式行為、手続きに従わねばならない(勝手に希望を書いても認められない)
というコンテキストで、
そこに、昨年改定された相続法(施行日はそれぞれ異なる)のポイントの説明を織り交ぜました。
- 配偶者居住権
- 配偶者の居住用不動産の遺贈・贈与における持戻し免除
- 遺産分割前の払い戻し制度
- 自筆証書遺言の方式緩和(目録はワープロ可)
- 自筆証書遺言の法務局保管による検認不要
- 遺留分侵害請求
- 相続人以外の親族の特別寄与料
さて、本日は、休憩を挟んだ講演会後半のトピック、家族信託、任意後見、死後事務委託、尊厳死宣言、そして、ちょっとだけQ&Aです。
家族信託とは?
- 信託とは、信託契約または遺言信託によって、受託者が受益者のために財産管理・処分を行うことで、家族間で行われることが多いことから、家族信託と呼ばれています。
(遺言信託とは、遺言の中で、委託者の死後、受益者のために、受託者に財産管理を託す方法で、親が、生前、子供に財産管理を委託するのは信託契約で、死後は遺言、生前は契約、という理解でいいかと。前者は委託者が被相続人で、受益者が相続人、後者は、委託者と受益者が同一ですね。)
- 家族信託は、親(委託者)が障害を持つ子供のために、財産管理を”信頼できる家族(受託者)”に委託し、死後も障害のある子供の生活に財産を役立てる場合に利点があります。
(という説明でしたが、映画やドラマでは、大抵、受託者が”信頼できない”叔父や叔母で、相続人(受益者)を亡きものにして、とか、財産を横領してとかいう話で、家族=信頼できるかどうかは。。。家族間の信頼があれば、遺産分割のトラブルも起きないでしょうし)
任意後見とは?
- 昨日、遺言は元気なうち、判断力のあるうちにと話した通り、”法律効果を発生する法律行為(契約、単独行為、合同行為)をするには意思能力(判断能力)が必要。精神障害により意思効力を欠いた者のした法律行為は無効”であるので、判断力を失ってからは(病気や事故などで)、家族や他人に、財産管理・処分を委任することもできなくなります。
- そこで、以前の民法にも法定後見制度というものがあり、交通事故で植物状態、意思能力を失った後では、本人が示談契約できないので、裁判所が後見人を選任・監督し、後見人が本人に代わって契約を行うものです。
- そして、高齢化社会とコンプライアンス要請の背景から、平成11年に「任意後見契約に関する法律」が制定されました。
- 任意後見制度では、本人の自己決定の尊重と本人の調和を図るために、本人の判断能力が不十分になる前、本人が元気なうちに自らの意思により選択した任意後見人に後見事務を託すことができます。
- 法定後見制度においては、家族が後見人になることを希望したとしても、裁判所の判断で、弁護士や司法書士が選任されることがあります。
(家族信託のところでも、ちょっと言っちゃいましたが、専門職ではないと、しかも家族だと、自分のために本人の財産を使ってしまいがちらしく)
- それに対して、任意後見制度では、必ず任意後見契約を締結した受託者が任意後見人になります。家裁の監督は受けますが、間接的な監督に止まります。
(間接的とは、定期報告(3〜6ヶ月に一度)のことですが、家計簿をつけて、領収書を添えて、本人のための支出であることを証明する必要があります。しかし、家族経営のお店などの場合、横領する気は無くとも、本人の財産と自分(後見人)の財産を分けて管理することは難しいようです。だから、法定後見では、家族の選任が認められなかったりするようです)
- 法定後見の種類:後見(取消権と包括的な代理権)、保佐(重要な法律行為に保佐人の同意が必要、同意・取消権と特定の法律行為の代理権)、補助(重要な法律行為の一部に補助人の同意が必要、同意・取消権と特定の法律行為の代理権
- 任意後見契約の類型:将来型(判断応力が低下した時に発効)、即効型(任意後見契約締結後発効)、移行型(任意後見契約を締結し、判断力低下により発効するまでは、委任契約により療養看護・財産管理を委任)
死後事務の委任
任意後見契約とは別に、葬儀、埋葬などの事務処理を委託するのもの。
(任意後見契約は、本人の死亡によって終了するので、後見人であった人が、本人の財産を使って葬儀を行うことはできない、というのは理屈が合います。身内がいない場合、甥、姪などの親族と交わしておくべきものだそうです。離婚・独身・子供なしの私の実姉からは、この死後事務を全てお願い(命令)されていますが、契約して、お金も受け取っておかないといかんな)
尊厳死宣言
本人の自己決定権の尊重と医療におけるインフォームドコンセント(説明と同意)の普及から、延命措置をしないで欲しいなどを記述した「尊厳死宣告公正証書」を、親族または医師に預けておくこと。
以上、「安心できる人生のエンディングの設計」の後半でした。
相続、遺言に比べると、信託、後見は、ちょっとまとめ難かったですが、どんなものか理解していただける内容であれば幸いです。
最後に、少しだけQ&Aの時間がありました。
ちょっとだけ意訳して紹介します(やりとりがあまりクリアでなかったので)。
死亡した時の、財産価値が不明な状態で(口座にいくらあるのか、不動産価値が上がっているのか下がっているのかなど)、遺言書にどう書くのか?
→ 遺言書に、金額は書かない。どこどこ銀行のお金は誰に、どこどこの土地は誰に、という書き方。
エンディングノートは、法的に有効なのか?
→ エンディングノートが何かよくわからないが、証書としての体裁ではなく、生前の希望を書いておくものならば、強制力はないと思われる。
(参考)
エンディングノートは、法的効力がなくても、資産情報などをまとめておいてくれたら、親族(相続人)は助かりますね。
私がいきなり死んでも、通帳、証書の類は、奥さんに場所教えてあるから、(印鑑、PWDがなくても)苦労しないと思うけど、奥さんに死なれたら、全く不明。。。マンションの権利書もどこにあるのやら。。。それに奥さんの職場の電話番号知らないから、連絡すらできないわ。。。
尊厳死宣言は、公正証書でなければならないのか?自筆証書でも良いのか?
質問者が、「自筆証書遺言の様に」と言ってしまったので、講演者が「遺言で書いても遅いですよ、前に書いておかないと」とトンチンカンな回答に終始してしまっていました。思い込みは怖いですね。質問者が、質問し直しても、回答は変わらず。。。
そこで、自分で調べてみると、
自筆でもOK。ただし、自筆の「尊厳死宣言書」を医師が信用するかどうかは不明。
捏造とか偽造を防ぐために、公正証書は望ましく、「尊厳死宣言公正証書」であれば、医師は、患者の意思として認めざるを得ない。
しかし、尊厳死宣言自体に、法的な効力はなく、
従うかどうかは、医師次第で、アンケート結果では九割程度の医師が、「終末期医療の参考にした」と回答するにとどまっている。
とのこと。
法的効力の有無や、手続の違い(遺言の場合の検認など)の話ではなく、書類の真偽、信用度の差の話ですね。
ちなみに、
臓器移植のドナーカードの法的な効力って、どうなんだろう?と思ったので調べてみると、
臓器移植法によって、法的な効力を持つようです。
2010年以前は、脳死移植に関する生前の意思表示は『遺言の一種』であるという解釈から、民法上の遺言可能年齢に準じて15歳以上であれば、記入し所持することにより、意思表示が有効であると認めていた。
と、意外なところで、昨日の「遺言能力」とつながりました。
最後に、
見出し画像になる写真がなかったので、昨日の晩御飯の写真を(苦)
あすけんのAIに、「Chayankさんは最近、ビタミン、食物繊維が少ないですね。」などと言われてしまったので、
大好きなキクラゲを、卵、豚肉、キャベツと炒めています。
味付けは、醤油、酒、ニンニク、生姜、ちょっとだけオイスターソース。
食物繊維、ビタミンたっぷり、タンパク質も摂れる、ちょっと体力疲労を感じた時の、私のスタミナ食です。
それで、金麦を飲みすぎてはいかんのだが。。。
ではでは