池上優游涵泳

「料理と散歩と仕事で海外」「ベトナム生活あらかると」改め、「池上優游涵泳」として日々を綴っています。

【じんけんカフェ】お肉はつくられる 第2回

2019-10-24 17:08:05 | 知識・学習

昨日の秋晴れは、一日で終わってしまい、また台風が近づいているようで、本日は曇り空、この後、雨が降るようですね。

私は寒いのは嫌いではなく、布団わたが冬物のふかふかになったことで、眠りが深くなったような気がします。

何より、足が攣りませんでした。筋肉が冷えて硬くなっていると、ちょっと力(刺激)を加えただけで、拗ね、脹脛、足の裏、それが左右、全6箇所のうち、3つ、4つが一気に来ますからね(辛)

ともあれ、寒くなって、暖かい布団をかぶれるようになって良かった〜(堵)

こちらは、今朝の洗足池の鴨たちですが、

寒い(水が冷たい)のでしょうか、皆さん杭の上で縮こまっていました。

 

さて、昨日、おおた区民大学、【じんけんカフェ】お肉はつくられる〜東京中央卸売食肉市場見学〜の第2回がありましたので、参加して来ました。

第1回【と場見学事前学習①】差別を超えて〜取材ノートから〜での、元朝日新聞論説委員の臼井敏男さん(著書「差別をこえて」)による講演の模様はこちら(前編後編)を参照してください。

なお、第1回における、私にとってのポイントをまとめると、

  • 差別における「差別」は、何も違いがないのに、あの人たちは自分と違うと集団を一括りに線を引いてしまうこと。
  • その実態のない違いを、「穢れ」として出身、内の職業に当てはめた歴史に由来する。
  • 東京では問題は、意識はあっても身近ではない認識であるので、出身者に気づくなど想定外の事が起こりと、とりあえず排除しようとする差別につながってしまう。
  • お互いを理解する、顔を顔の見える関係を築くことが重要。差別をしない人、と出身者から信用される人物であるべき。

です。

 

これらを踏まえて、第2回は【公開講座】映画「ある精肉店のはなし」を鑑賞しました。

学習支援者は、映画監督の纐纈(はなぶさ)あやさん。

映画上映の後、映画を作った切っ掛けなどをお話しくださいました。

 

映画なので、講演の時のように議事録のようなものは作りませんが、ストーリーを感想を簡単に述べます。

大阪府貝塚市東町で精肉店を営む、北出さん(4世代、3家族)のドキュメンタリー映画です。

”生産直売”として、小売だけでなく、自ら牛を育て、割って(映画の中で、弟さんが”割る”と表現していた)、解体して、販売していた。

現在、貝塚と場は閉鎖され、枝肉(ロッキーがトレーニングしていたようなブロック)を仕入れ、切り分けて販売をしている。

移動販売など、地域と密着した商売を行っており、だんじり祭りにむけて、捌いた牛の革で太鼓の張り替えを行ったりしている。

差別に触れたのは、108分の映画の中のインタビューシーンで数カ所

  • 次男が、牛を殺すのが凄いを言われるのが嫌い。むしろ、そう言って食べる方が凄いと述懐したところ
  • 長男が、父親が子供の頃、”東の子”と馬鹿にした教師の腕に噛み付いて以来、学校に行かなかったと父親を懐古したところ
  • 昔は岸和田藩の最下級の身分であったので、近年まで貧しかったが、差別の自覚はあまりなかった(何となく違うな、程度)。しかし、の解放運動が始まって、生きる姿勢が変わったと、長男夫婦が回答しているところ
  • 長男の息子が結婚することになり、婚約者が、出身者であることは知っていたのかと問われ、自分の父親から肉屋だからと聞いたが、父親は、人がよければ、と言ったと答えたところ

くらいで、差別の実態とかの話ではなく、

何気なく見たら、仲がよく、明るい大家族の一年間を追ったドキュメンタリー映画のよう。

最後は結婚式の模様でしたし。

 

そこに、差別のドキュメンタリーという視点を加えて、感想を述べると、

何も変わらない、普通の家族、むしろ生活のために真面目に働いて、楽しそうで、それで家族、一族が幸せで、羨む人こそあれ、蔑む人はありえませんね。

と殺のシーンも2度ありましたが、ノッキング(金槌で打つ)は一瞬ですし、家族で手際良く捌いていく模様は、マグロの解体ショーに見入るが如くで、「倒せば商品、どれだけ美味しく届けられるかだから」は、プロフェッショナルとしか感じられませんでした。

 

やはり、何も違わない、というのがメッセージなのでしょうね。

 

映画の後、監督の纐纈(はなぶさ)あやさんが、映画を制作した背景などを話してくださいました。

先週の臼井さんのお話同様、このお話も目から鱗でしたので、詳述します。

  • 公開した2013年に先立ち、北出さんと出会う前、2008年に初めて松原と場を見学した。
  • と場見学は、衛生面、働く人のプライバシーの問題などで、難しかったが、この映画のプロデューサーが写真家として、と場の写真を撮影していた繋がりで、見学が叶った。
  • 当時32歳で、野菜、魚、鶏は食材になる過程を知っていたが、牛と豚は、出どころを知らなかった。食べるのであれば、一度は見ておくべきと考えた。
  • 見学前のと場のイメージは、無機質な工場、機械的に捌かれていく、灰色、暗い、冷たい。
  • と蓄は、大きい牛をノッキング(ハンマーで眉間を打つ。豚は電気ショック)で気絶させて、倒され、首を掻いて、放血して絶命させて(早く抜くのが鮮度に影響)、解体する。
  • 実際は、熱気が凄くて、暑く、見学前のイメージがすぐに外れたが、時間が経つと、鈍い衝撃が襲って来た。これまで無自覚に、これを他人に委ねていたのだと。理解していたつもりだったが、実感としては何もわかっていなかった。これが、自分が食べることに直結しているのだと。
  • 枝肉にすると、温度が4℃くらい上が、周囲も暑くなる(ので冷水シャワーで冷やす)。油を流すため、ナイフや器具を消毒するため熱湯を使うので、とにかく中は暑い。半日で体重が2、3キロ落ちる重労働。
  • 見学前は霊安室のようにイメージしていたが、そこは命あるものが命あるものに向かいあう人の姿、働く人の姿があった
  • 働く人のイメージは、何となく怖い感じがしていたが、実際にお会いすると、職人集団として、活き活きとして、全身を道具として美味しい肉を作る気迫が感じられた
  • そして、と場の仕事をきちんと見せて、ちゃんと理解させ、食べることを見直し、働く人への先入観、偏見を取り除く映画を作りたいと思った。
  • しかし、映画化は難しい。と場の仕事は、産業を担って来た歴史的に、顔、名前を出すことがなく、映像でみせる機会もこれまでなかった。どうやって撮るか???
  • 3年後に、北出さんと出会い、半年後に貝塚と場の閉鎖が決まっていたので、(映画の冒頭シーン)と場見学会に参加した。
  • かつては全国に180くらいあったと場も、大規模と場にどんどん集約され、小さなと場を閉める前に、北出さん達のプロの技術を残す記録映画のつもりで撮影したが、どうしても映画にしたい思いに駆られてしまった。なぜなら、見学者からは素晴らしい仕事に感嘆の声が上がっていた。4人が無駄な動きなく、あっという間の40分で解体を終えて、見る者を驚かせた。
  • 北出さんからすると、特別なことは何もない、称賛されるものでもないが、蔑まれるものでもない、普通の仕事であると。ガツンと響いた。特別の仕事と思い込んでいた自分が恥ずかしい。生きるための普通の仕事、それを伝えるには北出さんしかない。
  • 地域にカメラが入るので、東町に通って、北出さん、解放同盟の方々と話し始めた。映画化における希望は、
    • 仕事を詳細に映像化
    • その人、その地域を肯定するためなので、モザイクはかけない
    • 啓発映画を作るつもりはない(← だから、上記のような感想を抱く映画なんですね。)
  • 書記長からは、差別を無くすためなら協力するが、映画にすることで新たに差別が生まれたら、どう責任をとるのか?と問われ、返す言葉がなかった(それだけ深刻なお願いをしている)
  • しかし、諦めずに通い詰めていると、東町から「まあ、やってみるか」という声が上がった。北出さんからも「映画を見て差別するならすればいい」と開き直りもあった。大きなリスクはあるが、事実をキチンを知って欲しい。それが差別をなくす
  • よく”寝た子を起こす”という表現が使われるが、それはおかしい。知ることで差別が醸成されるのであれば、その知った内容が間違っている(正しくない)はず。

ここで時間となり、ちょっとだけQ&Aがありました。質問と回答が一対一ではなかったのですが、お答え内容がまた印象深いものでしたので、それをまとめます。

  • と場で働いている人は、と場で働いていることを言えない、家族にすら言っていない場合がある。どうしても言わなければならないとき、決まった反応を受ける。”可哀想”、”残酷”だと。これら他人事の言葉に傷つく。”残酷”なのは食べる行為。と場で働く人に向けられる言葉ではなく、食べる自分に向けるべき言葉
  • 戒名も差別的であった時代があった。東町に浄土真宗のお寺があるが、神社はない。天皇制と同和問題は、関連性があり、北出さんも強い想いがあるらしい。
  • (映画に出てきた)獣魂碑は、と場が取り壊されても残っている。差別が酷いほど大きな獣魂碑が建てられたり、自分たちが好きで殺しているのでもないのに獣魂碑を建てるのはおかしいと撤去するところもあったり、と殺(殺すという言葉が使われている)とは言いたくないので、締めるとか割るとか別の表現を使うとか、それぞれ仕事に向き合う中で、深い思いを抱えている。

 

映画のパンフレット配布されましたので、参考に貼付します。

それと、裏面の下にアンコール上映の告知がありますので、もしご興味があれば。

(纐纈さんも、お友達に紹介してください、と仰っていましたので)

 

 

前回、講義の後、振り返りシートに、感じたことなどを記入して提出して帰ったのですが、それを事務局がまとめて、一枚ものにしてくださっていました。

最後に、先週の講師であった、臼井さんから、その振り返りシートの内容についての解説があり、第2回が終了しました。

振り返りシートを読むと、参加された皆さんが、感じたいろいろな事柄から、記憶や感覚がリフレッシュされました。

一点、そう言えば、というコメントがあったので紹介しますと、

上記、纐纈さんのQ&Aのところで、天皇制と同和問題の関係、という、ちょっと口を濁した部分がありましたが、

ある方が「名字に「部」がつくのは物作りに携わった先祖を持つというような事を学校で習ったと思います・・・」と書かれていて、

そうか、”物部”か。

であれば、朝廷内の対立から、朝廷を追われた一族で、信仰も違ったし、確かに”自然の状態から違うものを作り出す”一族で、穢れを纏わされたかもしれません。

もし差別の由来が、そこまで遡るとすると、皇室に注目が集まっている現在、更にタッチーな話になりますね。。。

 

さて、次週、第3回【と場見学事前学習②】お肉はつくられる〜お肉の情報館見学〜では、東京中央卸売市場食肉市場に行きます。

(まだ、と場見学ではありません。この情報館見学を経て、再来週、と場見学になります)

自分の議事録(本ブログ)、参加者の振り返りシートを復習して臨みたいと思います。

ではでは


現在までの変遷

「料理と散歩と仕事で海外」として、タイトルの通り、趣味の料理と散歩、そして出張する海外の情報を掲載していましたが、ハノイ赴任となり「ベトナム生活あらかると」でベトナム生活、近隣の国への旅行模様などを掲載するようになり、一時、仕事が忙しく更新が滞りましたが、2017年末に帰任し、2019年から改めて「池上優游涵泳」として、知識探求、スローライフを紹介しています。

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