風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

三島由紀夫 『三島由紀夫レター教室』

2008-02-25 02:21:33 | 

 「あなたの会話にはトゲがあって、ときどき腹が立つけれど、今となってはそのトゲがなつかしいのです。いったい、若い連中はあんなにおしゃればっかりして、エスプリ(機知)が一つもない会話をえんえんとつづけて、まるで、箱の中でマシマロがぶつかり合っているみたい。あれで人生が何が愉しいんでしょう」
・・・・・・
 「大ていの女は、年をとり、魅力を失えば失うほど、相手への思いやりや賛美を忘れ、しゃにむに自分を売りこもうとして失敗するのです。もうカスになった自分をね」
・・・・・・
 「ともすると、恋愛というものは『若さ』と『バカさ』をあわせもった年齢の特技で、『若さ』も『バカさ』も失った時に、恋愛の資格を失うのかもしれませんわ」
・・・・・・
 「なぜ断られるか?それは彼女にやさしさと自信との平和な結合がないからです。女の真の魅力は、その二つのものの平和で自然な結合以外にはないのですからね。彼女の心のアンバランスを、男性は一目で見抜いてしまうのです」
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 「恋は愉しいものではなくて、病気だわ。いやな、暗い発作のたびたびある、陰気な慢性の病気だわ。恋が生きがいだなんていう人がいるけれど、とんでもないまちがいで、悪だくみのほうが、ずっと生きがいを与えてくれます。恋が愉しいなんて言っている人は、きっとひどく鈍感な人なのでしょう。私はもうこれから先、二度とあんな思いはしたくありません」
・・・・・・
 手紙を書くときには、相手はまったくこちらに関心がない、という前提で書きはじめなければいけません。これがいちばん大切なところです。
 世の中を知る、ということは、他人は決して他人に深い関心を持ちえない、もし持ち得るとすれば自分の利害にからんだ時だけだ、というニガいニガい哲学を、腹の底からよく知ることです。
 世の中の人間は、みんな自分勝手の目的へ向かって邁進しており、他人に関心を持つのはよほど例外的だ、とわかったときに、はじめてあなたの書く手紙にはいききとした力がそなわり、人の心をゆすぶる手紙が書けるようになるのです。

(三島由紀夫 『三島由紀夫レター教室』)


友達から貸してもらった三島由紀夫の本。
劇団四季の鹿鳴館は観たことがあるけれど、本を読むのははじめてでした。
ロンドンに来て日本語の本を読むわたし。。。
でも面白かった!
短いお話なので、2時間くらいで読めてしまいました。
この本だけでは三島由紀夫についてどうこうは言えないけれど、妙に印象に残る言葉を書く人だなぁと感じました。
そういえば鹿鳴館もそうだった。ストーリーはどうということはないのに、いくつかのセリフが妙に心に残ったものでした。
そういうタイプの作家なのかしら、この人は。
『仮面の告白』でも読めば、もうすこしこの作家についてわかりますかね?

それにしても三島由紀夫がこんなに明るくて皮肉なユーモアのある話も書いていたとは意外だった。
手紙を通した、歯に衣着せぬ自分勝手な生の感情のぶつかりあいが妙に愉しく、気持ちがよかったです。
オブラートに包んだ人間関係より、人間くさくていいね、こういうの。
登場人物達も、みんな自分勝手なのに、妙に愛嬌があります。友達にしたいかといえば、ちょっと遠慮したいかもしれないけど(笑)。

”英文手紙のコツ”もすごく納得できて面白かった。
「いちばんきらわれるのは、文法的に正確で、無味乾燥な手紙と思ってよろしい。かわいらしいことが第一です。外国人というものは、どこかかわいらしくなくてはなりません」
また、手紙を書くときに気をつけなければいけないこと「相手はまったくこちらに関心がない、という前提で書きはじめなければいけません」も、メールを書くときに参考になりそう。私も相手の興味も気にせず自分の書きたいことを延々書いてしまうくせがあるので。

ところで三島由紀夫って、海外で川端康成とともにやたらと人気がありますよね。
どうしてなんでしょう。

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