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また貸金業関係を書いてしまった

2006年11月12日 16時53分46秒 | 社会全般
上限金利ものは書かないと言ったのに、書いてしまいます。悪しからず。


svnseedsさんが大変見やすいグラフを示して下さっております。

svnseeds’ ghoti


このような作業はきっとご面倒だったと思いますが、グラフになっているのでとても判りやすいです。厚く御礼申し上げます。

論点は今まで大体記事に書いてきたので、挙げておきます。

闇金が増加したワケ(追加あり)

坂野教授に反論する(追記後+訂正あり)

貸金業者数減少は上限引下げが原因か

貸せなくなるって、本当?

生活困窮者の対策と破綻処理(追加あり)

貸出金利の条件について


いくつか気になった点を挙げてみたいと思います。


①貸金業者数に関して:

・上限金利と業者数の減少は「相関関係が見られる」と説明されております。

是非「質屋の業者数」もグラフに加えて頂ければ、と願っておりますが、質屋の数は減少傾向であって、貸金業者の減少とほぼ似たトレンドではないかと思います。このような場合、「相関関係はある」と言えるのでしょうか?質屋の上限金利は別モノですけれども、同じように業者数は減少トレンドなわけですから、必ずしも上限金利の低下と業者数減少には「関連がある」とも言えないように思えます。

業者間の競争が激化していけば、業者数が減少することは普通であるように思えます。また、経済学に詳しい方々がよく取り上げられる需給と価格ですけれども、「貸金業の信用供与額が増加」(需要の増加)、ということがあったのですから、私の素人考えで申し訳ないのですけれども、「価格」(すなわち貸出金利)が低下するのは普通なのではないか、とも思える訳です。上限が下がったことで「平均約定金利が下がった」という説明の方が、経済学的な理論から言えば「妥当性が高い」ということでしょうか?数回の上限引下げがなければ、「価格は低下しなかった」即ち「金利低下も起こらなかった」ということでしょうか?


・上限引下げによって業者数が減少して寡占化が進んだと説明されています。

単に数について言えば、それでも現状で4千社程度はある訳ですし、代替的なクレジットキャッシング業者もそれなりに存在しているので、ここにアクセスできない人たちは少ないのではなかろうかと思っております。銀行等の民間金融機関は、これよりもはるかに少ない(大手銀行、地銀、第二地銀、信金、信組、農協、郵貯等の合計)のですが、これを数的に寡占と言ったりするのでしょうか?

小規模業者が淘汰された場合に問題とされているのが何なのか判りませんが、もしも大手などとは「マーケットが異なる」(これは47thさんがちょっと記事で触れておりました)可能性とか、他の誰も貸さない借り手にのみ貸す、ということを想定されているのでしょうか?他の貸金業者から一切借入不可能で、小規模業者の少しだけ高い金利でなら「借入可能」という借り手は、そんなに多く存在しているとは考えていないのですが、そうであれば、そのような借り手はそもそも多重債務には陥ることは少ないように思えます。「小規模業者からしか借入できない」という借り手の貸出残高は、年間貸倒引当金よりも小さいはずです。

池田信夫氏やbewaad氏などの早大の坂野論文を論拠として支持していた方々は、論文中にあるように「貸金業の市場は(ほぼ)完全競争市場である」ということを前提に考えておられたのではないかと推測しますが(そうでなければ坂野論文の内容を支持できなくなると思います)、業者数が減少してきたからといって、それを「寡占だ」などとは考えていないのではないでしょうか。

イギリスでの業者数は日本よりもかなり少ない訳ですが、「業者数が少ないイギリス」では日本よりも寡占化が進んでいて競争が阻害されている、ということを言っておられるわけではないのですよね?


・図6の説明に関して、次のように記されています。

『2000年までは失業率と業者数は無関係に推移していましたが、2001~2002年の失業率の更なる悪化に伴い業者数が増加し、その後失業率が改善するに従い業者数も急激に減少している点が興味深いところです。』

まず、一時期の業者数増加の原因は、私の推測としては、悪徳業者(闇金系ですね)に流行った手口が財務局に登録して引っ掛けるというもの(借り手を信用させる為)でしたので、この登録件数が多かったからだろうと思っています。スポーツ紙広告などに掲載するやり口ですね。もしもこの増加がなければ、ほぼ直線的な減少トレンドは変わらなかったのではなかろうか、と。単に元のトレンドに戻ってきただけなんじゃないのかな、と。

上記注釈によれば、「失業率の更なる悪化に伴い業者数が増加」とされていますが、そうであれば、それ以前の失業率が上昇した時に業者数が増加すると考えなかった理由というのは何でしょうか?また、「失業率が改善するに伴い業者数が急激に減少」とも述べられておりますが、この両者と考え合わせると、「業者数は失業率の変動に確実に影響を受けている」と解釈している、と受け止めてよろしいでしょうか?もしそうであれば、svnseedsさんが主張されている「上限金利引下げで業者数は減る」ということとの影響度の程度をどのように考えておられるのか、ご意見を伺いたいと思います。


②ライフイヴェントに関して:

失業率と自己破産件数のグラフですが、これはとても説得力のあるグラフですね。相関係数も出しておられて、失業が大きな要因である、というのは確かにその通りであろうかと思います。「ライフイヴェント」を裏付けるものである、とのご趣旨も頷けます。

そこでお伺いしたいのですが、失業と破産件数の相関は、日本だけに見られる特徴的現象なのでしょうか?もしもそうであれば、他国との比較というのはできない訳ですが、「ライフイヴェント」は割りと何処の国でも起こるように思えますので、「破産原因はライフイヴェントだ」というのを比較できるようにも思えます。あくまで素人考えなので、申し訳ないのですけれども。

もしも図4にアメリカの自己破産件数をグラフ化するとどうなのでしょうか。この作業をやってくれとは申せませんので、ザッとの印象だけですみませんが、確かアメリカの自己破産件数と日本の自己破産件数の推移は割りと似ていたように思います。そこで、まさか日本の失業率とアメリカの自己破産件数に相関関係がある、などとは言えないのですが、しかし、データだけを持ってきて見てみれば、関係があるかのように「目に映せる」んじゃないのかな、と。少なくとも、日本においては失業というのが、家庭のキャッシュフローの「in-out」バランスに大きく影響することは間違いなく、それは私も当然だろうと考えております。ただ、注意すべきは、「in」部分に大きく影響する要因、「out」部分に大きく影響する要因、(つまりはライフイヴェント)ということを考えるのは勿論でしょうけれども、借入額とか金利というのがどのような影響を有しているか、ということについての判断には至らないのではないかと思っています。それ故、坂野論文での分析においては、モデルに問題があると考えていました。

英米二カ国においても、自己破産件数と失業率には有意な相関関係が見出せるということであれば、破産の主たる要因は失業ということで決着がつきそうに思いますが、これはおそらく違うだろうな、と考えています。失業率の低下トレンドの時期であっても、自己破産者は増加してきていると思います(前に記事を書くとき見たように思いますが・・・・どこで見たのか忘れましたので資料がないのですけれども、金融庁だったかtalpasのところだったか、のように思いますが・・・定かではありません)。もしも、日本だけに特徴的であるとすれば、どのようにお考えなのかな、とちょっと思います。


自己破産件数増加要因としては、他にもあると考えています。「整理弁護士」の積極的な介入や司法書士介入(時期は別でしょうけれども)とか、『夜逃げ屋本舗』のような映画だったかテレビ(笑)とか、とにかく多くの人々に自己破産制度があると認知されてきたから、ということがあると思います。過払い返還の増加もそういう面があります。それと、利用者の絶対数が増加すれば、破産者の発生確率が同じであっても、破産件数の絶対数は増加するだろうと思います。


svnseedsさんの記事と直接関係ない話ですので、申し訳ないのですが一応書いておきます。
普通に考えれば、同じ程度のライフイヴェント発生確率の集団を見れば、「借入額が多い」、「借入金利が高い」というのは破産リスクを高めると思いますが、そういう分析は日本ではなされていないのでしょうか。ライフイヴェントの発生確率が異なっているか予め判っていない集団であっても(恐らく職種とか勤続年数等の違いが審査されるのではないかと)、金利が高い層は「貸倒率が高い」ということが起こるはずであり、逆に金利の低い層は「貸倒率が低い」ということになるのではないでしょうか。そうであれば、「金利水準」が説明要因になるのではないでしょうか?もしもこうした区別をつけず、破綻リスクには関係なく一様に貸すのであれば、全員同じ金利が適用されるはずで、その集団ではある水準でライフイヴェントが発生する、ということになるでしょう。それとも、金利の高い層では低い層に比べてライフイヴェントの発生確率も高い、ということを考えているのでしょうか?堂下論文を肯定している人たちには是非お伺いしてみたいと思っていましたものですから。無理にお答えにならなくとも宜しいので・・・。


③貸金業者の利益に関して:

『図3から読み取れるように、業者数の減少が2002年以降の需要の停滞・減少に大きく反応していることから、サラ金業の多くは世間で言われているほど儲かってはいないのではないか、とも言えそうです。』

仰るように、近年の利益減少は確かにあると思います。
90年代後半以降、大手は営業経費を縮減してきたので、貸出残高対比では貸倒引当金以外の営業経費率は低下しています。調達金利の低下(笑)もその一つですね。即ち、本来であれば営業利益が増加する体制になり、その環境も整ってきているわけです。00年の引下げ後であっても、貸倒率以外の経費は約5~6%程度です。ところが、「貸倒率」の上昇が続いてきたので(今年は低下に転じたはずですが)利益は縮小し、過払い返還費用もかさんできているのが現状です。貸倒率は7%前後、返還費用が2~3%ですから、両方で約10%程度の比率となっています。営業経費に占める割合は、それ以外の営業費用よりもはるかに多いのです。以前は貸倒率が3%以下でしたから、利益も多かったのですね。

返還費用を考えないとして(返還請求は一時期のものですから)、貸倒率6%、それ以外の経費6%としても、平均約定金利が18%であれば、営業利益6%ということになり、引下げ前の水準(2003年頃)と利益率は大きく変わりません。貸倒率のコントロールが大きく影響するということは言えると思います。

大手以外の中小業者になると、貸倒率の高い業者が存在する、それ以外の経費率が大手に比べて高い、というコスト構造が見られますので、大手に比べれば非効率である可能性は否定できないと思います。商品の違いとか、顧客層の違いによって、それでも生き残れるのかもしれませんけれども。これは推測ですので実際どうなのか判りませんが。


長々と書いてしまい、申し訳ありません。どうしても回答して欲しい、というものではありませんので、無理をなさらなくともいいです。

「見たいものだけを見る傾向」というのは、私にもズバリ当てはまるわけですが、このようなアドバイスをされている賢人もネット上にはおられるようです。恐らくsvnseedsさんのグラフを見て、その関係性については「一目瞭然」とか、「相関関係があるのは明らか」ということには必ずしもならないのではなかろうか、と思っていますが、それは「見たいものだけを見ようとする」(見たくないものは見ない?)私の個人的性質によるかもしれません。でも、今回このような実際の数字、過去の経過を取り上げて頂いて、感謝しております。私の素人談義では影響力がないもので。



議論も何も

2006年11月12日 12時31分09秒 | 俺のそれ
まず、根本的な部分を言っておきます。
「経済学」を最も揶揄し、貶めている人々とは、誰あろう「経済学信奉者」たちではないですか?一般の経済学素人などではありませんよ。勿論大衆でもない。学問に対する敬意ですって?敬意を持っていて、どうして彼らのような態度、言説が出てくるというのでしょう。


私は弾さんの気持ちが分るような気がしますよ。思わず訝りたくなる気持ちもね(笑)。

経済学を謳ってる連中が如何にいい加減なことを言って、デマをばら撒いていることか。
彼らが自ら笑いものにしているような「経済学」を、どうやって信頼ができると?


私の考える経済学信奉者たちというのは、学者とか、民間の所謂エコノミストとか、行政・政策に関与する人々とか、大学院生とか、大学生とか、経済学マニア?とか、そういう人々がいると思いますね。常にそういう人々の誰かが「ウソ」を言い、胡散臭いデマをばら撒き、「経済学理論ではこれが当然」と喧伝し、それを攻撃する連中と防御する連中が年がら年中批判を繰り返し続けているのですよ。

ただ不毛なことだけが繰り返されているに過ぎない。
彼らは、それが経済学の一部であると考えているのではないか、とさえ思える。傍から見れば、異常としか思えませんね。そういうのが経済学信奉者たちのやっていることです。彼らの発言を見れば、あーそうか、と思ったりします。


要するに、経済学信奉者たちは、ただただ他人を「アフォ」と思ってるだけでしょ。「オレには分るが、オマエらには分らんのだ」という優越感への陶酔、他人を見下した態度、経済学至上主義的物言い、「素人はすっこんでろ」という排他性、自己の支持する理論のみが最善であるという非常に非常に強固な確信、そういう特徴を感じますね。


これまで貸金業の上限金利問題で見てきたように、経済学信奉者たちには「何を言っても無駄」というのが率直な感想。いつまで経っても同じですもんね。「議論」とかそういう問題ではないよ。経済学以前の問題としか思えんね。これも何度も書いたけど。


彼らには初めから結論が出ている。
何たって、全て分っているらしいからね、経済学理論に基づいて。
他の可能性とか、実際の数字とか、そういうのを見たり考えたりしないしね。
経済学理論で完全に明らからしいから。
そういう全知全能には対抗できんワナ。こっちは素人なんだし(笑)。
ああ、「らしい」とか書いちゃうと、またアレだけど。


経済学信奉者たちは大言壮語というか、自分たちの正しさを喧伝し、結論を豪語し、他の意見を排撃する。
これ最強。

まだ正確に判ってもいないことなのに、豪語なんてできんよな?
あんなに大衆をバカにしたりもできんよな?
金融庁や懇談会メンバーをバカにもできんよな?
自分たちが「答えを知っている」と強く確信しているからこそ、あれ程デカイことを言い、他人をバカにできるんだろう?


決めセリフは勿論、
「教科書嫁」

そのココロは、
「オマエは経済学を知らんから、そんなこと言うんだ」

読んだ挙句に、これですか?
経済学信奉者たちは。

感情論?衆愚?
笑わせるんじゃないよ。


専門知?

なら、答えを言ってごらんなさい。
正解は一つだ。そうだろ?

坂野先生に聞いてごらんなさいな。
堂下先生に聞いてごらんなさいな。
大竹先生に聞いてごらんなさいな。
池尾先生に聞いてごらんなさいな。
深尾先生に聞いてごらんなさいな。
池田先生に聞いてごらんなさいな。


答えは勿論、「需給」で一発解答!だよね?


えっ?
ごまかしてるんじゃないかって?
意見を出してるのが「経済学者」じゃないとでも?

(ひょっとして、池田信夫氏を経済学者とは言わないの?)


経済学を知っていて、「価格」「需給」で説明ができないなんてことがある訳ないよな?
学者が間違って、素人が正しいなんてこともないんだよね?


経済学信奉者に共通するのは、同じペーパーを論拠とし、いかにも明らかに正しいかのような「経済学風な理屈」を並べ、経済学素人たちの―特に、大衆の―「無知なる感情論」とバカにし、自分たちだけが全てを知っていて、初めから何もかも見通せていると確信していることです。


「トンデモ」を散々笑っておきながら、
「トンデモ」を蔓延させてるんじゃないの?

「答えはこれなんだよ!」とデマをばら撒いてるのと
何も変わらないんじゃないの?

経済学無知な大衆よりも、なお悪いのが、「トンデモ」をばら撒くヤツラだろ。
中途半端に理屈を使ってるんじゃないのか?


「理屈付き」が故に、なお手に負えないんだよ。
これなら大衆の感情論の方がはるかにマシ。
判別がつきやすいから。
それに、「ああ、水戸黄門的だな、藁」、と普通に分るでしょ(笑)。


「水からの伝言」がどうのなんて言ってるけど、経済学信奉者たちはそれと同じ事をやっていないと本当に言えるのでしょうか?