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年金の官民比較は妥当か?

2006年11月17日 20時43分21秒 | 行政制度
人事院の怪しげなご報告があったようです。報道からしか見てないので正確には判らないのですが、一応書いておこうと思います。

asahicom:「公務員の年金に税補填を」 一元化巡り人事院が見解-暮らし

以下に、記事より一部抜粋。


会社員と公務員の公的年金の一元化問題で、人事院は16日、退職金や年金の官民比較の実態調査の結果をまとめ、塩崎官房長官に提出した。公務員は上乗せ年金の「職域加算」と退職金を合わせて平均2960万円で、民間の企業年金と退職金の合計より20万円少なく、10年に予定される職域加算廃止後は民間の優位は242万円に広がるとの内容。人事院は、格差是正のため税金を投入して民間の企業年金に準じた制度を創設すべきだとの見解も提出した。これには新たに年間数十億円の国庫負担が必要で、官のスリム化に逆行するだけに批判の声が出るのは必至だ。

(中略)

これを受けて人事院は従業員50人以上の企業6232社の05年度の実態を調査(回答は3850社)。20年以上勤務した人が生涯に受け取る企業年金額と退職金の合計は、現在の価値に換算すると05年度で1人平均2980万2000円だった。一方、国家公務員の退職金の平均額は2738万6000円。職域加算の国の負担分を加えると計2960万1000円となった。




まず、民間側のポイントは、「退職金」と「企業年金」が約半分ずつということでしょうね。一方、公務員の方は「退職金」が約9割となっていますよね。

どうやら、この辺りにトラップがありそうな気がしますが・・・・どうなんでしょうか(笑)。


パッと直観的に思うことを言いますと、これはある意味「当然なのではないか?」ということです。
数十年に分けて分割で受け取る場合と、初めに一時金として受け取る場合、一般的にどちらの方が受取総額が多くなるでしょうか?それは前者ですよね。


例えば、60歳時点で1000万円全額を受け取る人と、毎年分割にして受け取る人とが存在する時、分割の人の方が多く貰えますよね。それは普通ですね。例えば、80歳までの20年間に毎年60万円ずつ受け取ると合計1200万円貰えます。これを考えてみましょうか。

言い換えると、支払う企業側は、「今すぐ一括で1000万円払う」か、「分割で20年払い」にするかのどちらかになりますから、後者ならその間の「利息相当分」を払わねばなりませんよね。ということは、企業側は「債務を負っている」ということとほぼ同じ意味合いであり、元利金等返済で20年払であると仮定しますと、『利率2%でも総支払額は1214万円』となります。なので、受取総額の単純比較なのであれば、一時金の退職金と企業年金の受取総額を比べるのは不適切であると言えます。

もしも、受取総額ではなく、一時金で受け取った場合の「現在価値」を算出して計算しているのであれば、比較は可能かもしれないが。人事院の計算結果がどうなのかはよく判らないですけどね。


因みに、大企業の企業年金訴訟の記事を以前に書いた(恩給・職域加算の減額は憲法違反か?その2NTTの行政訴訟)のですが、この時の「利率」は「えらく高かった」はず、と思うよ。引下げ前は、松下電器だと5.5~7.5%とかそういう給付利率だったんじゃないかな。これを若干引き下げたはずだけど、それでも一般的な「運用」よりは、随分と高いですから。なので、受取総額はかなり多くなると予想され、民間の受取総額がかなりかさ上げされているかもしれないですよ。そうであれば、利息で増えた分を合わせた額が、公務員の「一時払い」と同等くらいになってしまっているということになり、公務員の方がはるかに高い、という可能性すらあることを指摘しておきますよ。


参考までに言うと、企業の「統計もの」(正確な名称とか知らない)では、大企業には「必ず返答して下さいね」とかお願い攻撃があったりするので(あと、企業の余裕とか?)、大企業ほど「回答率が高く」、零細・中小企業ほど回答率は低いので、割と「偏った」アンケート調査結果が出やすい、という可能性も考慮する必要がある、と付け加えておきます。あのですね、サンプリングする時に、企業の存在割合か就業者数の割合に基づいて修正しているならいいですけどね。割と優良企業ばかりを狙い撃ちとか?なら、これはイケナイよね。因みに、回答してくる企業ほど「真面目で、いい会社」という確率は高いんじゃないのかな、とも思ってるけどね(どん底寸前とか、厚生年金逃れの会社とか、そういう企業は選ばれてもまず回答してこないだろうから、笑)。まあ、公務員の皆様をそういう会社と同じくらいの待遇にしとけ、と思っている訳ではないけれども、「民間」として書かれているデータそのものに「偏りがある」可能性は言っておきます(参考記事:早速ですか、「労働分配率」)。


企業年金は大企業ではあるかもしれんが、中小企業なんかではまず滅多に見ないので(自分の周り半径3メートルの経験則)、これを標準的と考えるのは「間違っている」とも言えますかね。本間先生風に言えば、「99.7%が中小企業なのであれば、大企業が特別なのです」ってことですよ(爆、判る人には判るよね)。中小企業の待遇が普通、ってことで。それと同じがいいかどうかは、また別問題だけど。

3階部分が必要で、それをしないと「公務員になりたいという優秀な人材が集まらない」ということであれば、大半の国民が認めればいいのかもしれないが、きっと多くの国民はそんなの「ウソだ」と考えるかもしれないですね。実際の所、優秀な人が集まらなくなって「困ったな」と考えるようになれば、「給料」そのものが上がるかもしれないけれど。破格の待遇で「急募!」とか?すぐ来るかな?どうなんでしょ。

優遇部分があっても、「これまでの(悲惨な)状況」ということでしたので、どうもね~、と疑りがちかも。それなりに「優秀な人たち」が集まってきていてこの程度というか、多数の失敗・腐敗でしたので、もっとお金をたっぷり使わないと「腐敗はなくならないんだー、今よりも良くできないんだー」というのも俄かには信じられないワケで。それとも、待遇が悪いので、それに見合う「優秀じゃない人たち」が集まってしまった、ということなのでしょうか?違いますよね?


人事院はちょっとお調子に乗ってしまったのでは?
秀さんも「うーん、ちょっといかんな、人事院」と言ってましたよ(笑)。墓穴を掘ったかもしれませんね。