暫く見てないうちに、ワケのわからん外人部隊(どこぞの国からの)コメントが書き込まれていた(笑)。
それとは関係ないですが、前の記事(報道被害はいつも急増中だよ)にコメントをいくつか頂いたので、これまでの繰り返しになりますが、書いておきます。
まず架空の貸金市場を考えてみる。貸金業者は1社のみ存在しており、他の競合他社は存在しない。この1社のみが最も効率的に運営できるとする。借り手は十分多く存在しており(故に経費率は一定となるものとする)、この業者は借り手全員に同じ融資額・同じ金利で融資するものとする。ある年の状況を見ると、次のようになっていたとする。
融資総額 M
経費率 C (C>0)
デフォルト率 d (0≦d≦1)
貸出金利 r
ここで、貸出による収入と損失を考える。
収入=M×r×(1-d)
損失=経費+貸倒損失=M×C+M×d
収入≧損失であれば事業は成り立つが、収入と損失が等しくなる場合に最も効率的であるので、その場合を考えることにする。
M×r×(1-d)=M×C+M×d
となるので、整理すると、
r=(C+d)/(1-d)
となる。ここでC=0.1であると仮定すると(1兆円貸出のための経費は1000億円、ということ)、dの値を変化させた時の r を見てみる。
d=0.01 11.1%
=0.1 22.2%
=0.2 37.5%
=0.3 57.1%
=0.4 83.3%
=0.5 120%
年間に借り手の10%がデフォルトであっても、貸出金利は22.2%に過ぎない。Cには企業利益も当然含まれている。10兆円貸出額があれば、1兆円が経費(利益含む)、貸倒損失は1兆円であるが、利息収入も同じ分あるからである(貸倒は全額損失としているが、現実には若干は回収されるであろう―1度も返済しないことは想定しにくいので)。Cの値が相対的に大きいのは、中小・零細の貸金業者であろう。特に小規模・零細業者では、Cの値が大きいのである。仮に一人で営業している業者がいて、融資総額1000万円、C=0.2(200万円の経費―ほとんど自分の給料であろう)、dが0.05(5%の貸倒)であれば、貸出金利は26.3%くらいとなる。融資額が5000万円以下の業者は膨大に存在しており、法改正で5000万円以上でなければ営業できないことで排除されていくであろう。こういうCの値の大きな業者は、ただ単に非効率なだけであり、長期的には排除されるのは仕方がないのである。Cの値が大きいことで、逆に「dの大きな顧客層」に対しては貸せなくなるのだから。見かけ上の金利が同一であっても、デフォルト率の範囲が広い方が、よりリスクの高い借り手に貸せるのであって、Cの値の大きな弱小業者は存在する意味は殆どない。
こういう業者がなぜ生き延びられるかと言えば、借り手側からは「見分けがつけにくい」ことと、金策に窮する者はうっかり借りてしまうことがあるからである。ただ単に市場の成行に任せておいても、淘汰されてこなかったのである。銀行や信組など各種金融機関はあるのだが、「ヤミ銀行」とか「ヤミ信組」とかと区別できない人というのは殆どいないのであろう。それ故、「ヤミ銀行」は「ヤミ金」ほど問題にはならない(笑)。要するに貸金業者というのが、「海賊商品」みたいに似たようなやつが膨大にあって、その中にヤミ金も紛れていて、借り手側にとっては「見分けがつけられない」ということで、ヤミ金に嵌められる人たちが出てきてしまうのである。
更に上記業者を利用する人間が1400万人存在しており、1つの集団であるとみなす。この集団で年間の破綻者が20万人いるならば、デフォルト率dは70分の1、約1.43%である(7年後には1割が破綻するけどね)。ここでC=0.1ならば貸出金利は約11.6%となる。人数ではなく融資額で考えてみると、12兆円融資してデフォルトが6千億円であるなら、5%がデフォルトとなるので、
貸出金利 r =(C+0.05)/0.95
となる。C=0.1ならば、r は15.8%である。当然Cの値の小さな業者(例えば銀行、ノンバンク等々)が存在すれば、もっと低い金利で貸出可能である。1400万人全体でのデフォルト率が一定で、一様に貸し出すならば全員同じ金利(例えば15.8%)が適用されるということである。
想定を変えてみます。
デフォルト率が1%の優良グループと、20%の危険グループがあるとする。この融資割合を優良10に対して危険2とする(優良は危険グループの5倍の融資額)。この2つのグループに対して同じ金利で貸すものとする。上の仮定と同じく、C=0.1であるものとし(どちらのグループに貸し出すにもコストは同じだけかかるので)、デフォルト率が20%だけの単独グループであるならば、d=0.2の時の金利37.5%となるが、優良グループと危険グループが混在している場合の金利はどうなるか考える。2つのグループの収入と損失を前述の通りにそれぞれ計算してみると、貸出金利は約14.8%となります。1000人が1%の優良グループ、200人が20%の危険グループであると、前者が10人破綻、後者が40人破綻となり合計50人の破綻者ということだ(約4.2%)。
これと同様に考えると、借り手を6等分してデフォルト率の最も高い側のグループ(全部で1400万人ならば233万人)が20%のデフォルト率(年間約46.7万人が破綻する)、残り6分の5(同1167万人)がデフォルト率5%(年間約58.4万人が破綻する)であると、貸出金利は18.9%となる(デフォルト率は1400万人の約7.5%)。現実にはこれほど破綻している人は出ていないので、デフォルト率はもっと少ないであろう。ハイリスクグループに全く貸せなくなるというわけでもないかもしれない。存在確率の分布を考えてみると、ハイリスク側に行くに従い数は減少していくはずであろうから、。
結局、これまでの貸金市場というのは、借り手の無知に付け込んできた面が大きいのであり、非効率業者が数多く残存しているのであろうと思われる。これら業者が淘汰されたところで特別な問題があるとも思えず、長期的には貸し手が正常化していくであろう。本来は、貸し手側がハイリスクグループには、「貸出額を減らす」「返済期間が短く済む貸出」などといった対応をとるべきなのであって、これは審査の問題でもある。デフォルトリスクが高まるのであれば、「貸さない」のが貸し手の合理的な選択なのである。貸金市場における「貸出金利」や「貸出基準」などが正常に機能している、とは思えないのである。
その他の点について少し。
>現時点で上限金利引き下げによる効果は何か見られたのでしょうか。例えば、自殺者が減った、ヤミ金被害が減った・・・などのような。
現時点では、金利引下げが行われているわけではありませんね。将来引き下げられることが決まっただけです。一部業者は既に法改正に合わせて引き下げたところもあるようですが。クレジットカード系は、従来の顧客に特別な利用制限などは殆ど行っていないでありましょう。カードを持っている人は、これまで26%だった金利は18%に下がった、というだけですね。アコムは新規貸出について、18%を適用していくとかの報道はあったように思いますが、実態はどうだか判りません。
金利引下げ効果は直ぐには出ないのではないかと思いますが、どうなんでしょうか。「自殺者が減る」「ヤミ金被害が減る」というのは、随分と先の話なのではないでしょうか?個人的予測では、借入総額が大きくならなければそのメリットは出る可能性はあると思っていますし、貸金業者数が大幅に減少すれば被害者は減るであろうと思いますね。問題を抱える借り手に必要なのは、適切な相談ができるということで、プロミスのCMではないですが貸金に「相談できる」とかいうのでは、解決には至らないのではないかと思いますね。
「個人事業主の倒産増」は、貸金業者からの借入が不能になったことが原因である、という根拠があるのでしょうか?これは早晩破綻するべき事業であったかもしれず、その処理を進めることが必ずしもデメリットにはならないでありましょう。「ヤミ金被害増加」というのも、本当に被害が増加しているのでしょうか?例えば、貸金業者への返還訴訟については昨年に相当増加したと思われますが、これは「利息制限法を超過した不当な貸付」が増加したせいでしょうか?そうではありませんよね、恐らく。借り手にそういった情報が伝わったからであろうと思っていますが、これは特別に被害が増えたからということではないでしょう。
貸金業者が得られたであろう利息収入が支払われなくなれば、他の何処かでその分が消費される可能性はあるので、必ずしもある業種が低調となっても、他の部分で良くなる可能性はあるでしょう。借り手は将来キャッシュで借りているのですから、貸金に支払う分は消費が減っていることに変わりなく、その金の行き先が何処になるかの違いでしかないでしょう。勿論、貯蓄に回される可能性はあるので、そうであると消費に回らないかもしれませんが、それは微々たるものではないかと考えています。
法改正の結果、(将来に備えて)貸金業者は審査を厳しくするようになっているであろう、ということですので、これは将来的には貸倒率の低下が期待できますし、自己破産件数の減少に繋がり得るでしょう。劇的効果があるか、というのは何ともいえないでしょうが、貸倒率が減ることは、借り手にとっても、貸し手にとっても良い方に作用するであろうと思います。
それとは関係ないですが、前の記事(報道被害はいつも急増中だよ)にコメントをいくつか頂いたので、これまでの繰り返しになりますが、書いておきます。
まず架空の貸金市場を考えてみる。貸金業者は1社のみ存在しており、他の競合他社は存在しない。この1社のみが最も効率的に運営できるとする。借り手は十分多く存在しており(故に経費率は一定となるものとする)、この業者は借り手全員に同じ融資額・同じ金利で融資するものとする。ある年の状況を見ると、次のようになっていたとする。
融資総額 M
経費率 C (C>0)
デフォルト率 d (0≦d≦1)
貸出金利 r
ここで、貸出による収入と損失を考える。
収入=M×r×(1-d)
損失=経費+貸倒損失=M×C+M×d
収入≧損失であれば事業は成り立つが、収入と損失が等しくなる場合に最も効率的であるので、その場合を考えることにする。
M×r×(1-d)=M×C+M×d
となるので、整理すると、
r=(C+d)/(1-d)
となる。ここでC=0.1であると仮定すると(1兆円貸出のための経費は1000億円、ということ)、dの値を変化させた時の r を見てみる。
d=0.01 11.1%
=0.1 22.2%
=0.2 37.5%
=0.3 57.1%
=0.4 83.3%
=0.5 120%
年間に借り手の10%がデフォルトであっても、貸出金利は22.2%に過ぎない。Cには企業利益も当然含まれている。10兆円貸出額があれば、1兆円が経費(利益含む)、貸倒損失は1兆円であるが、利息収入も同じ分あるからである(貸倒は全額損失としているが、現実には若干は回収されるであろう―1度も返済しないことは想定しにくいので)。Cの値が相対的に大きいのは、中小・零細の貸金業者であろう。特に小規模・零細業者では、Cの値が大きいのである。仮に一人で営業している業者がいて、融資総額1000万円、C=0.2(200万円の経費―ほとんど自分の給料であろう)、dが0.05(5%の貸倒)であれば、貸出金利は26.3%くらいとなる。融資額が5000万円以下の業者は膨大に存在しており、法改正で5000万円以上でなければ営業できないことで排除されていくであろう。こういうCの値の大きな業者は、ただ単に非効率なだけであり、長期的には排除されるのは仕方がないのである。Cの値が大きいことで、逆に「dの大きな顧客層」に対しては貸せなくなるのだから。見かけ上の金利が同一であっても、デフォルト率の範囲が広い方が、よりリスクの高い借り手に貸せるのであって、Cの値の大きな弱小業者は存在する意味は殆どない。
こういう業者がなぜ生き延びられるかと言えば、借り手側からは「見分けがつけにくい」ことと、金策に窮する者はうっかり借りてしまうことがあるからである。ただ単に市場の成行に任せておいても、淘汰されてこなかったのである。銀行や信組など各種金融機関はあるのだが、「ヤミ銀行」とか「ヤミ信組」とかと区別できない人というのは殆どいないのであろう。それ故、「ヤミ銀行」は「ヤミ金」ほど問題にはならない(笑)。要するに貸金業者というのが、「海賊商品」みたいに似たようなやつが膨大にあって、その中にヤミ金も紛れていて、借り手側にとっては「見分けがつけられない」ということで、ヤミ金に嵌められる人たちが出てきてしまうのである。
更に上記業者を利用する人間が1400万人存在しており、1つの集団であるとみなす。この集団で年間の破綻者が20万人いるならば、デフォルト率dは70分の1、約1.43%である(7年後には1割が破綻するけどね)。ここでC=0.1ならば貸出金利は約11.6%となる。人数ではなく融資額で考えてみると、12兆円融資してデフォルトが6千億円であるなら、5%がデフォルトとなるので、
貸出金利 r =(C+0.05)/0.95
となる。C=0.1ならば、r は15.8%である。当然Cの値の小さな業者(例えば銀行、ノンバンク等々)が存在すれば、もっと低い金利で貸出可能である。1400万人全体でのデフォルト率が一定で、一様に貸し出すならば全員同じ金利(例えば15.8%)が適用されるということである。
想定を変えてみます。
デフォルト率が1%の優良グループと、20%の危険グループがあるとする。この融資割合を優良10に対して危険2とする(優良は危険グループの5倍の融資額)。この2つのグループに対して同じ金利で貸すものとする。上の仮定と同じく、C=0.1であるものとし(どちらのグループに貸し出すにもコストは同じだけかかるので)、デフォルト率が20%だけの単独グループであるならば、d=0.2の時の金利37.5%となるが、優良グループと危険グループが混在している場合の金利はどうなるか考える。2つのグループの収入と損失を前述の通りにそれぞれ計算してみると、貸出金利は約14.8%となります。1000人が1%の優良グループ、200人が20%の危険グループであると、前者が10人破綻、後者が40人破綻となり合計50人の破綻者ということだ(約4.2%)。
これと同様に考えると、借り手を6等分してデフォルト率の最も高い側のグループ(全部で1400万人ならば233万人)が20%のデフォルト率(年間約46.7万人が破綻する)、残り6分の5(同1167万人)がデフォルト率5%(年間約58.4万人が破綻する)であると、貸出金利は18.9%となる(デフォルト率は1400万人の約7.5%)。現実にはこれほど破綻している人は出ていないので、デフォルト率はもっと少ないであろう。ハイリスクグループに全く貸せなくなるというわけでもないかもしれない。存在確率の分布を考えてみると、ハイリスク側に行くに従い数は減少していくはずであろうから、。
結局、これまでの貸金市場というのは、借り手の無知に付け込んできた面が大きいのであり、非効率業者が数多く残存しているのであろうと思われる。これら業者が淘汰されたところで特別な問題があるとも思えず、長期的には貸し手が正常化していくであろう。本来は、貸し手側がハイリスクグループには、「貸出額を減らす」「返済期間が短く済む貸出」などといった対応をとるべきなのであって、これは審査の問題でもある。デフォルトリスクが高まるのであれば、「貸さない」のが貸し手の合理的な選択なのである。貸金市場における「貸出金利」や「貸出基準」などが正常に機能している、とは思えないのである。
その他の点について少し。
>現時点で上限金利引き下げによる効果は何か見られたのでしょうか。例えば、自殺者が減った、ヤミ金被害が減った・・・などのような。
現時点では、金利引下げが行われているわけではありませんね。将来引き下げられることが決まっただけです。一部業者は既に法改正に合わせて引き下げたところもあるようですが。クレジットカード系は、従来の顧客に特別な利用制限などは殆ど行っていないでありましょう。カードを持っている人は、これまで26%だった金利は18%に下がった、というだけですね。アコムは新規貸出について、18%を適用していくとかの報道はあったように思いますが、実態はどうだか判りません。
金利引下げ効果は直ぐには出ないのではないかと思いますが、どうなんでしょうか。「自殺者が減る」「ヤミ金被害が減る」というのは、随分と先の話なのではないでしょうか?個人的予測では、借入総額が大きくならなければそのメリットは出る可能性はあると思っていますし、貸金業者数が大幅に減少すれば被害者は減るであろうと思いますね。問題を抱える借り手に必要なのは、適切な相談ができるということで、プロミスのCMではないですが貸金に「相談できる」とかいうのでは、解決には至らないのではないかと思いますね。
「個人事業主の倒産増」は、貸金業者からの借入が不能になったことが原因である、という根拠があるのでしょうか?これは早晩破綻するべき事業であったかもしれず、その処理を進めることが必ずしもデメリットにはならないでありましょう。「ヤミ金被害増加」というのも、本当に被害が増加しているのでしょうか?例えば、貸金業者への返還訴訟については昨年に相当増加したと思われますが、これは「利息制限法を超過した不当な貸付」が増加したせいでしょうか?そうではありませんよね、恐らく。借り手にそういった情報が伝わったからであろうと思っていますが、これは特別に被害が増えたからということではないでしょう。
貸金業者が得られたであろう利息収入が支払われなくなれば、他の何処かでその分が消費される可能性はあるので、必ずしもある業種が低調となっても、他の部分で良くなる可能性はあるでしょう。借り手は将来キャッシュで借りているのですから、貸金に支払う分は消費が減っていることに変わりなく、その金の行き先が何処になるかの違いでしかないでしょう。勿論、貯蓄に回される可能性はあるので、そうであると消費に回らないかもしれませんが、それは微々たるものではないかと考えています。
法改正の結果、(将来に備えて)貸金業者は審査を厳しくするようになっているであろう、ということですので、これは将来的には貸倒率の低下が期待できますし、自己破産件数の減少に繋がり得るでしょう。劇的効果があるか、というのは何ともいえないでしょうが、貸倒率が減ることは、借り手にとっても、貸し手にとっても良い方に作用するであろうと思います。